税務相談
月刊不動産2007年11月号掲載
不動産賃貸事業に係る所得税の青色申告のポイント
情報企画室長 税理士 山崎 信義(税理士法人 タクトコンサルティング)
Q
個人の不動産賃貸事業に係る所得税の青色申告のポイントについて教えてください。
A※記事の内容は、掲載当時の法令・情報に基づいているため、最新法令・情報のご確認をお願いいたします。
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1. 青色申告とは
所得税の確定申告には、青色申告と白色申告の2種類の方法があります。青色申告は、不動産所得、事業所得、山林所得のある納税者の帳簿作成を促進するため、帳簿作成を条件に各種特典を設けている制度です。
2. 青色申告の特典
青色申告の特典としては次のものがあります。
(1) 青色事業専従者給与の必要経費計上
生計を一にしている配偶者その他の親族が不動産賃貸事業に従事している場合、不動産オーナーからその親族に対して給与を支払うことがあります。この場合の給与は、原則として不動産オーナーの不動産所得の計算上、必要経費にはなりません。
ただし、不動産オーナーと生計を一にしている親族のうち、年齢が15歳以上で、その年を通じて6か月を超える期間(一度の場合には従事可能期間の2分の1を超える期間)その事業に専従する人に支払った給与は、「青色事業専従者給与に関する届出書」に記載した金額の範囲内で専従者の労務の対価として適正額であれば、必要経費として認められます。
なお、青色事業専従者として給与の支払を受ける人は、控除対象配偶者や扶養親族にはなれません。
(2) 青色申告特別控除
不動産オーナーの不動産賃貸事業が事業的規模で行われ、かつすべての取引内容を複式簿記により詳細に記録している等の要件を満たす場合には、65万円を不動産所得から控除できます。
なお、不動産賃貸事業が事業的規模でない場合や、簡単な帳簿しか作成しない場合は、控除額は10万円となります。
(3) 家事関連費の必要経費計上
家賃、水道光熱費などの家事関連費がある場合に、事業に対応する部分を必要経費に計上できます。
(4) 純損失の繰越控除
その年に損失が生じた場合、損失の額を翌年以降3年間にわたり繰り越して、納税額を少なくできます。
(5) 純損失の繰戻還付
その年の損失を前年に繰り戻して、前年に支払った税金を還付することができます。
(6) 事業的規模の判定
前記 (1)~(3) の「事業的規模」については、貸家の場合、おおむね「独立家屋なら5棟」「アパート等なら10室」以上の規模であれば該当します。
3. 青色申告の適用を受けるための要件
(1) 青色申告の適用要件
青色申告の適用を受けるためには、納税地の所轄税務署長に「所得税の青色申告承認申請書」を提出し、さらに法定の帳簿書類を備え付けて取引を記録し、かつ一定期間(原則7年間)保存することが必要です。
(2) 青色申告承認申請書の提出期限
① 原則
上記(1)の青色申告承認申請書は、青色申告書による申告をしようとする年の3月15日までに所轄税務署長に提出する必要があります。
ただし、その年の1月16日以後、新たに不動産の賃貸を開始した場合には、その開始日から2か月以内に提出する必要があります。
② 相続により事業を承継した場合
相続により事業を承継した場合は、青色申告承認申請書の提出期限は、相続開始を知った日(死亡日)から4か月以内とされます。
ただし、その年の9月1日以降に死亡した場合の提出期限は、次のようになります。
イ.死亡日が9月1日から10月31日までの場合
その年の12月31日まで。
ロ.死亡日が11月1日から12月31日までの場合
その年の翌年2月15日まで。
(3) 承認されたものとみなされる場合
上記(1)の青色申告承認申請について、青色申告の承認を受けようとする年の12月31日(その年の11月1日以降に新たに業務を開始した場合には、その年の翌年の2月15日)までに税務署長から処分の通知がなかったときは、承認されたものとみなされます。