税務相談

月刊不動産2004年8月号掲載

不動産の現物出資

代表社員 税理士 玉越 賢治(税理士法人 タクトコンサルティング)


Q

不動産を法人に売却するより、現物出資したほうが有利だという話を聞いたことがあります。不動産を単純に法人に売却する場合と現物出資する場合の違いについて教えてください。

A※記事の内容は、掲載当時の法令・情報に基づいているため、最新法令・情報のご確認をお願いいたします。

  •  会社設立の形態としては金銭出資によるのが一般的ですが、出資の全部又は一部を現金以外の資産をもって行うことができます。このような金銭以外の資産による出資を現物出資といいます。現物出資は、会社設立時だけでなく、新株発行(増資)する時でも可能です。
     現物出資に際しては、原則として裁判所が選任した検査役の調査を受けなければなりません。ただし、①現物出資財産価額総額が資本金の1/5以下で、かつ、500万円以下の場合(新株発行時に際しては、現物出資者に対する新株発行総数が新株発行直前の発行済株式総数の1/10以下で、かつ、新株発行数の1/5以下の場合、又は、現物出資財産価額総額が500万円以下の場合)、②取引相場のある有価証券を取引相場以下で現物出資する場合、③弁護士、公認会計士、税理士等の証明を受けた場合(現物出資財産が不動産であるときは、不動産鑑定士の鑑定評価書添付)には、検査役調査を省略することができます。証明をした弁護士等は価格補填責任及び第三者に対する損害賠償責任を負うことになります。
     設立時又は新株発行時には、発行価額の1/2は、必ず資本金に組み入れなければなりません。発行価額のうち資本金に組み入れなかった金額は資本準備金となります。
     現物出資に含まれる資産-負債の純資産価額がマイナスの場合には、現物出資することができませんが、暖簾(営業権)を現物出資すること、現物出資を受け入れる会社が暖簾(営業権)を計上することは認められています。
     譲渡所得が課される資産の譲渡には、売買のほか、交換、競売、公売、収用、物納、代物弁済、法人に対する出資を含みます。
     したがって、個人の法人に対する不動産の現物出資は資産の譲渡であり、譲渡所得として所得税の対象となります。資産の譲渡対価として金銭以外の物等(例えば株式)をもって収入する場合の譲渡所得の収入金額はその物等(株式)の価額とされており、その価額はその物等(株式)の取得等時の価額(時価)です。すなわち、現物出資した不動産の譲渡収入金額は、取得した株式の時価となります。
     ただし、取得株式の時価が出資した不動産の時価の1/2未満である場合には、低額譲渡として不動産の時価が収入金額となります。
     会社に対して時価より著しく低い価額で現物出資があった(現物出資者が取得した株式価額<現物出資不動産の時価)ことにより同族会社の株式価額が増加したときは、株式価額の増加した他の株主はその株式価額増加額相当額を現物出資者から贈与されたものとして取り扱われます。
     一方、現物出資によって他の株主の株式価額が下がった場合(現物出資不動産の時価<現物出資者が取得した株式価額)には、現物出資者はその下落額相当額を他の株主から贈与されたものとして取り扱われます。
     法人による現物出資は、原則として時価により譲渡したものとして取り扱われますが、一定要件をクリアする適格現物出資とされる場合には帳簿価額で譲渡したことになるため譲渡損益は生じません。なお、平成13年4月に施行された会社分割制度を使って新設会社に対しては分社型新設分割により、既存会社に対しては分社型吸収分割により、現物出資と同様の効果を得ることができます。
     最後に、現物出資に伴うその他の税金について触れておきましょう。
     所有権移転登記による登録免許税については、原則20/1,000(H18.3.31までは10/1,000)と同じです。会社分割の場合は4/1,000(H18.3.31までは2/1,000)です。
    不動産取得税については一定要件をクリアする場合には非課税とされます(会社分割の場合も一定要件をクリアする場合には非課税)。
     消費税については、原則の5%です(会社分割は資産の譲渡に当たりません)。

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