法律相談

月刊不動産2010年03月号掲載

マンション非居住者からの協力金

弁護士 渡辺 晋(山下・渡辺法律事務所)


Q

マンションの管理規約において、マンションに居住していない組合員だけから協力金を徴収することを定めることができるでしょうか。

A※記事の内容は、掲載当時の法令・情報に基づいているため、最新法令・情報のご確認をお願いいたします。

  • 1.マンションに居住していない区分所有者(不在組合員)だけに金銭的な負担を課することは、その必要性があり、かつ、合理的な範囲内であれば可能です。

    2.さて、マンション管理の基本法である区分所有法には、「規約の設定、変更又は廃止が一部の区分所有者の権利に特別の影響を及ぼすべきときは、その承諾を得なければならない」と定められています(31条1項後段)。

     昭和40年頃に分譲された大阪市内の大規模マンションで、区分所有権を有しながらマンションに居住しない区分所有者が年々増加して居住者から不満が出るようになり、平成16年3月に、総会で管理規約を変更し、不在組合員だけに住民活動協力金という名目で、金銭負担を課することを決めた事例があります。管理経費は月額1万7,500円(一般管理費8,500円、修繕積立金9,000円)であり、住民活動協力金は、これに月額2,500円を上乗せするものでした。 不在組合員の一部が、この規約変更は一部の区分所有者の権利に「特別の影響」を及ぼすから、不在組合員全員の承諾がなければ無効だとして住民活動協力金の支払を拒み、訴訟となりましたが、最高裁は次のとおり述べて、住民活動協力金の負担が「特別の影響」に当たらないと判断しました(最高裁平成22年1月26日判決)。

     「本件マンションは、規模が大きく、その保守管理や良好な住環境の維持には管理組合及びその業務を分掌する各種団体の活動やそれに対する組合員の協力が必要不可欠であるにもかかわらず、本件マンションでは、不在組合員が増加し、総戸数868戸中約170戸ないし180戸が不在組合員の所有する専有部分となり、それらの不在組合員は、管理組合の選挙規程上、その役員になることができず、役員になる義務を免れているだけでなく、実際にも、管理組合の活動について日常的な労務の提供をするなどの貢献をしない一方で、居住組合員だけが管理組合の役員に就任し、上記の各種団体の活動に参加する等の貢献をして、不在組合員を含む組合員全員のために本件マンションの保守管理に努め、良好な住環境の維持を図っており、不在組合員は、その利益のみを享受している状況にあったということができる。

     いわゆるマンションの管理組合を運営するに当たって必要となる業務及びその費用は、本来、その構成員である組合員全員が平等にこれを負担すべきものであって、上記のような状況の下で、管理組合が、その業務を分担することが一般的に困難な不在組合員に対し、本件規約変更により一定の金銭的負担を求め、本件マンションにおいて生じている不在組合員と居住組合員との間の上記の不公平を是正しようとしたことには、その必要性と合理性が認められないものではないというべきである。

     そして、本件規約変更により不在組合員が受ける不利益は、月額2,500円の住民活動協力金の支払義務の負担であるところ、住民活動協力金は、全組合員から一律に徴収されている組合費と共に管理組合の一般会計に組み入れられており、組合費と住民活動協力金とを合計した不在組合員の金銭的負担は、居住組合員が負担する組合費が月額1万7,500円であるのに対し、その約15%増しの月額2万円にすぎない。

     上記のような本件規約変更の必要性及び合理性と不在組合員が受ける不利益の程度を比較衡量し、加えて、上記不利益を受ける多数の不在組合員のうち、現在、住民活動協力金の趣旨に反対してその支払を拒んでいるのは、不在組合員が所有する専有部分約180戸のうち12戸を所有する5名の不在組合員にすぎないことも考慮すれば、本件規約変更は、住民活動協力金の額も含め、不在組合員において受忍すべき限度を超えるとまではいうことができず、本件規約変更は、法66条、31条1項後段にいう『一部の団地建物所有者の権利に特別の影響を及ぼすべきとき』に該当しないというべきである。」

    3.マンションは、わが国における居住形式として定着し、かつ、多くの人にとって、重要な資産としての役割も果たしています。マンション管理は、質の高い居住環境を実現し、かつ、資産価値を保全するための要です。今般の最高裁判決は、多くのマンションの管理実務に影響を及ぼす可能性があり、不動産の専門家としての宅建業者には、マンション管理の問題についても、理解が求められます。

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