税務相談

月刊不動産2013年12月号掲載

マンションの管理組合に支払う修繕積立金等の所得税計算上の取扱いについて

情報企画室長 税理士 山崎 信義(税理士法人 タクトコンサルティング)


Q

個人が賃貸するマンションの管理組合に修繕積立金等を支払う場合の所得税計算上の取扱いについて教えてください。

A※記事の内容は、掲載当時の法令・情報に基づいているため、最新法令・情報のご確認をお願いいたします。

  • 1.不動産所得の計算上控除する必要経費

    (1)不動産所得の金額の計算

     個人が所有する賃貸不動産の家賃に係る所得は不動産所得とされ、所得税が課税されます。不動産所得の金額は、不動産賃貸に係る家賃収入などの総収入金額から、その収入を得るための必要経費を控除して計算します。

    (2)必要経費の範囲

     不動産所得の金額の計算上、不動産賃貸の業務について生じた費用の額は必要経費に算入されます。ただし、減価償却費以外の費用は、その年12 月31 日現在で債務の確定しているものに限られます。

    (3)債務の確定要件

     上記(2)の債務として確定しているかどうかは、次の①~③の要件を満たしているかどうかで判定します。

     ①その年12 月31 日までに費用に係る債務が成立していること。

     ②その年12 月31日までにその債務に基づいて具体的な給付をすべき原因となる事実が発生していること。なお、この場合における「事実の発生」とは、役務提供や給付などの原因が現に生じていることをいいます。

     ③その年12 月31 日までに、その金額を合理的に算定することができるものであること。

    2.マンションの管理組合に支払う修繕積立金の取扱い

    (1)原則的な取扱い

     修繕積立金は、マンションの共用部分に対して将来の大規模繕等の費用の額に充てるため、管理組合において長期間にわたって計画的に積み立てられるものです。

     修繕積立金として管理組合に支払った金額は、実際に修繕等が行われていない限り、前述1.(3)②の具体的な給付をすべき原因となる事実が発生していないため、管理組合への支払期日の属する年分の必要経費には算入されません。管理組合への支払後、実際に修繕等が行われたときに、その費用の額に充てられた部分の金額について、その修繕等が完了した年分の必要経費に算入されることになります。

    (2)支払年分の必要経費に算入できる場合

     修繕積立金はマンションの区分所有者となった時点で、管理組合へ義務的に納付しなければならないものであり、管理規約において納入した修繕積立金は、管理組合が解散しない限り、区分所有者へ返還しないこととしているのが一般的です(マンション標準管理規約(単棟型)(国土交通省60 条5 項)。このため、返還されない修繕積立金を支払ったにもかかわらず支払った年の必要経費に算入できず、実際に修繕を行った年まで必要経費への算入を待たないといけないというのは、実情に合わないといえます。

     そこで、国税庁では「質疑応答」において、修繕積立金の支払がマンション標準管理規約に沿った適正な管理規約に従い、次の事実関係の下で行われている場合には、前述(1)にもかかわらず、その修繕積立金について、その支払期日の属する年分の必要経費に算入しても差し支えないとしています。

     ①区分所有者となった者は、管理組合に対して修繕積立金の支払義務を負うことになること。

     ②管理組合は、支払を受けた修繕積立金について、区分所有者への返還義務を有しないこと。

     ③修繕積立金は、将来の修繕等のためにのみ使用され、他へ流用されるものでないこと。

     ④修繕積立金の額は、長期修繕計画に基づき、各区分所有者の共有持分に応じて、合理的な方法により算出されていること。

    3.新築マンション購入時に支払う修繕積立基金の取扱い

     個人が賃貸目的のため新築マンションを購入し、その購入時に管理組合に修繕積立基金を支払った場合には、前述1.(3)②の具体的な給付をすべき原因となる事実が発生していないため、原則、その支払額は支払年分の必要経費に算入されず、実際に修繕が行われたときに、その費用の額に充てられた部分の金額が、その修繕等が完了した年分の修繕費として必要経費に算入されることになります。

     ただし、修繕積立基金の支払が前述2.(2)の修繕積立金と同様の事実関係の下で行われている場合は、継続適用を要件として、修繕積立基金の額の計算の基礎となった長期修繕計画の対象期間の経過に応じて、期間按分計算により必要経費に算入することも認められます。

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