労務相談

月刊不動産2023年12月号掲載

テレワークと事業場外みなし労働時間制

野田 好伸(特定社会保険労務士)(社会保険労務士法人 大野事務所代表社員)


Q

 テレワークを導入して数年が経ちますが、明確な運用ルールを設けていないため、中抜けしたり、就業時間の一部をテレワークしたりする者がいます。そのため、テレワーク勤務者には事業場外みなし労働時間制を適用しようと考えています。その際の留意点等をご教示ください。

A※記事の内容は、掲載当時の法令・情報に基づいているため、最新法令・情報のご確認をお願いいたします。

  • 回答

     テレワークにおいても、原則として労働時間の把握が必要ですが、一定の要件を満たした場合には「事業場外みなし労働時間制」を適用することが可能です。なお、事業場外みなし労働時間制の適否にかかわらず、中抜け時間・移動時間の取扱い、深夜・休日勤務申請について明確にしておくことがよいでしょう。

  • テレワークとは

     情報通信技術を活用した、場所や時間にとらわれない柔軟な働き方のことをテレワーク(離れた所で働く)といい、働く場所によって、自宅利用型(在宅勤務)、施設利用型(シェアオフィス勤務)、モバイル勤務(外勤・出張)に分けられます。コロナ禍で中小企業にも導入され、現在も多くの企業で継続していますが、働き方改革や若手人材確保措置として有効な手段とされています。

  • 労働時間把握義務

     テレワークをしている場合、上司は部下の仕事ぶりを目の前で確認することができず、労働時間の把握が困難です。また、使用者の指揮命令下において労務を提供している時間(労働時間)であるか否か判然としない場合がありますが、基本的には内勤者同様、管理監督者およびみなし労働時間制適用者を除くすべての労働者の始業・終業時刻を適正に把握する必要があります。
    労働時間の適正把握についてはこちらをご覧ください

  • 事業場外みなし労働時間制の適用要件

     事業場外みなし労働時間制とは、労働者が業務の全部または一部を事業場外で従事し、使用者の指揮監督が及ばないために、当該業務に係る労働時間を算定することが困難な場合に、使用者の労働時間に係る算定義務を免除し、その事業場外労働については、特定の時間(所定労働時間または労使で定めた時間)労働したものとみなすことのできる制度ですが、テレワークについては、次の①②の要件を満たす場合に適用できます。

    ①情報通信機器が、使用者の指示により常時通信可能な状態におくこととされていないこと
     以下の場合については、いずれも①を満たすものと認められ、情報通信機器を労働者が所持していることのみをもって、制度が適用されないことはありません。
    ・勤務時間中に、労働者が自分の意思で通信回線自体を切断することができる場合
    ・勤務時間中は通信回線自体の切断はできず、使用者の指示は情報通信機器を用いて行われるが、労働者が情報通信機器から自分の意思で離れることができ、応答のタイミングを労働者が判断することができる場合
    ・会社支給の携帯電話等を所持していても、その応答を行うか否か、または折り返しのタイミングについて労働者が判断することができる場合

    ②随時使用者の具体的な指示に基づいて業務を行っていないこと
     以下の場合については、②を満たすものと認められます。
    ・使用者の指示が、業務の目的、目標、期限等の基本的事項にとどまり、一日のスケジュール(作業内容とそれを行う時間等)をあらかじめ決めるなど作業量や作業の時期、方法等を具体的に特定するものではない場合

     なお、みなし時間は、事業場外での勤務について適用されるため、労働時間の一部をテレワーク勤務した日については、事業場外のみなし労働時間と事業場内での実勤務時間を合算した時間が当該日の労働時間となります。よって、終日テレワークする日のみなし時間を8時間とし、半日テレワークする日のみなし時間を4時間とするなど、勤務状況により異なるみなし時間を設定することが実務上のポイントといえます。

  • 中抜け時間の取扱い

     テレワーク時に生じやすい事象として「中抜け」があります。育児・介護を行う場合はもちろんですが、それ以外にも中断して銀行や役所の用事を済ませたいなど、在宅勤務における中抜けの需要は多いと聞きますので、一定の範囲で中抜けを認めるといった柔軟な対応を採ることも一案です。なお、原則として中抜け時間は休憩時間(就業規則の定めが必要)となるものの、時間単位の年次有給休暇取得制度を導入されている企業においては、時間年休として対応することもできます。

  • 移動時間の取扱い

     午前中は自宅で勤務して午後から出社するなど、勤務時間の一部でテレワークを行う場合が想定されますが、この際の移動時間の取扱いは次のとおりとなります。
     労働者が自己の都合により就業場所を移動し、自由利用が保障されている移動時間については、原則として労働時間にはなりません。ただし、自由利用が保障されている移動時間中であっても、情報通信機器を用いて業務を行った場合、当該時間は労働時間となります。一方、外部の勤務場所が指定されており、そこから会社に戻るような移動時間(出張先・営業先から職場に移動する時間など)については労働時間となりますので、これらの取り扱いについては規定化しましょう。

  • 運用上の留意点

     テレワークは、場所に限定されない働き方ができるというメリットがある一方、一定のルールを整備しておかなければ、いつでもどこでも働けてしまうというデメリットもあります。また、相対的に使用者の管理の程度が弱くなることから長時間労働を招く恐れがあるので、健康管理を目的とした労働時間の状況を把握する必要があります。なお、深夜時間帯や休日にテレワーク勤務者が勝手に働くことがないよう、深夜・休日労働に関する事前申請ルールを徹底したうえで、社内システムやメール機能のアクセス制限をかけたり、ログ監視を行ったりするなど、ネットワーク上の規制や牽制を行うことが、長時間・過重労働防止策として有効です。

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