税務相談
月刊不動産2003年7月号掲載
サラリーマンですが、中古のアパートを購入し賃貸しようと思っています。青色申告にした方がよいのでしょうか。
0 井出 真(井出真税理士事務所)
Q
サラリーマンですが、中古のアパートを購入し賃貸しようと思っています。青色申告にした方がよいのでしょうか。
A※記事の内容は、掲載当時の法令・情報に基づいているため、最新法令・情報のご確認をお願いいたします。
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青色申告書による申告は、あらかじめ税務署の承認を得て、取引を帳簿に記録し、その帳簿を保管(原則7年間)することを要件に認められます。青色申告の承認申請は、承認を受けようとする年の3月15日までに提出します。ただし、新規の業務を開始したときは、2か月以内に提出します。中古のアパートを購入し、賃貸を開始する場合でも同様です。不動産所得が生じる賃貸業務を開始してから2か月以内に、あなたの住所地を所轄する税務署に青色申告の承認申請書を提出すれば、原則として、その年から青色申告となります。青色申告にすると次のような恩典があります。
1.青色申告特別控除
不動産所得は、総収入金額から必要経費を控除して求めますが、青色申告者は、更に青色申告特別控除を控除することが出来ます。この控除額は、3種類に分かれます。
①55万円・・・不動産所得を生ずべき事業を営む青色申告者で、一切の取引の内容を正規の帳簿の原則に従って、整然・明瞭に記録している場合。
②45万円・・・不動産所得を生ずべき事業を営む青色申告者で、平成17年分まで、簡易方式により記録しており、損益計算書・貸借対照表の添付がある場合。
③10万円・・・不動産所得のある青色申告者で、簡易方式・現金主義により取引を記録している場合。
ただし、他に事業所得・山林所得がない方で、①又は②の控除が受けられるのは、不動産の貸付けが「事業的規模」で行われている場合に限られます。したがって、サラリーマン(給与所得者)のあなたが、①又は②の控除を受けるには、貸家なら5棟、貸室なら10室以上の規模で不動産賃貸をしている場合に限られます。これはあくまで形式規準ですが、実質的に事業規模を判断するのは難しいので、この規準がよく用いられます。なお、事業的規模での貸付けであっても、事業所得ではなく、あくまで不動産所得です。
(図)
また、土地を貸し付けている場合には、上記のいわゆる5棟10室基準を適用する際に、1室の貸付けに相当する土地の貸付件数を「おおむね5」として計算します。つまり、貸室8室と貸地10件の場合には、8室+10件÷5=10室となります。この「事業的規模」での貸付け以外の場合には、③10万円の青色申告特別控除しか受けられません。
2.青色事業専従者給与
生計を一にする親族(例えば妻や子)に賃貸物件の管理をさせ給料を支払った場合、適正額までを青色事業専従者給与として、あなたの不動産収入から必要経費として控除することが出来ます。ただし、次の点に注意が必要です。①「事業的規模」での貸付けに限られる。
②妻に青色専従者給与を支払うと、その金額にかかわらず、所得控除である配偶者控除と配偶者特別控除は受けられない。
③管理業務の内容により適正額が認定され、適正額を超える部分は必要経費とならない。
所得の分散を図ったつもりが、かえって所得税が割高となってしまうことがあるので気をつけましょう。3.不動産所得に係る損益通算の特例
不動産所得が損失の場合、必要経費に算入した土地等(借地権を含む)を取得するための借入金利子の金額は、損益通算の対象から除かれます。このことは、青色申告でもそうでなく(白色申告)ても変わりません。