法律相談
月刊不動産2012年7月号掲載
オプトアウト
弁護士 渡辺 晋(山下・渡辺法律事務所)
Q
個人情報の第三者提供に関し、オプトアウトの措置という言葉を聞くことがあります。どのような意味なのでしょうか。
A※記事の内容は、掲載当時の法令・情報に基づいているため、最新法令・情報のご確認をお願いいたします。
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1.回答
オプトアウトの措置とは、個人情報取扱事業者がその取得した個人データを第三者に提供するためにとる手続であり、(1)本人から求めがあれば個人データの第三者提供を停止すること、(2)あらかじめ、次の①~④の事項すべてを、本人に通知し、または本人が容易に知り得る状態に置いていること、という2つを満たす場合の措置をいいます。
①第三者への提供を利用目的とすること
②第三者に提供される個人データの項目
③第三者への提供の手段又は方法
④本人の求めに応じて当該本人が識別される個人データの第三者への提供を停止すること
2.個人情報保護法の制定
コンピューターやネットワークを利用して、大量の個人情報が処理される時代が到来しています。最近では、スマートフォンの出現などによって、個人がデジタル機器を日常的に身につけるライフスタイルが定着したうえ、ツイッターやフェイスブックといった新しい仕組も一般化しています。デジタル社会が加速度的に進展する様相をみせています。
個人情報保護法は、誰もが安心してデジタル社会の便益を享受するための制度的基盤を形づくるため、平成17年4 月に施行(個人情報取扱事業者の義務などの規定の施行)された法律です。5,000件を超える個人情報を事業活動のために利用している民間事業者を個人情報取扱事業者とし(指定流通機構のレインズに入会し、レインズシステムを利用している不動産業者は個人情報取扱事業者に該当する)、個人情報データベース等を構成する個人情報を個人データとして、個人情報取扱事業者の個人データの扱いの規制を加えています。
3.個人データの第三者提供
個人情報保護法は、個人データを取得した個人情報取扱事業者が個人データを第三者に提供するには、本人の同意を要するという原則を採用し、例外として、本人の同意がなくとも第三者提供が可能となる2類型のルールを定めています。同法23条1項と2項で定める23条1項ルールと23条2項ルールです。
4.23条1項ルール
①法令に基づく場合(1号)、②人の生命、身体または財産の保護のために必要がある場合であって、本人の同意を得ることが困難であるとき(2号)、③公衆衛生の向上または児童の健全な育成の推進のために特に必要がある場合であって、本人の同意を得ることが困難であるとき(3号)、④国の機関若しくは地方公共団体またはその委託を受けた者が法令の定める事務を遂行することに対して協力する必要がある場合であって、本人の同意を得ることにより事務の遂行に支障を及ぼすおそれがあるときには、それぞれ、本人の同意がなくとも第三者提供が可能です5.23条2項ルール
23条2項ルールが、オプトアウトの措置です
オプトアウトの措置をとっていれば、本人の個人的な同意なく個人データを第三者に提供することができます。この場合、本人の申し出があったときは、個人情報取扱事業者は、その後の第三者への個人データの提供を停止しなければなりません。
オプトアウトというのは法文で用いられている用語ではありませんが、個人情報の第三者提供に関する23条2項ルールを指し示す用語として定着しています。自ら選択し(opt)、外に出す(out)という語源をもち、本人が第三者提供可能情報から外すことを申し出た場合には第三者提供はできないが、そのような申し出がなされるまでは、第三者提供が可能であるという仕組を表す用語として用いられています。
本人が容易に知り得る状態に置くための方法としては、店舗での掲示、パンフレット等の配布、ウェブサイトでの記載などの方法があります。
6.個人情報と不動産業
不動産業は、消費者の氏名、住所、さらには物件情報、成約情報など、様々な個人情報を取り扱う業務です。なかでも個人データの第三者提供は、広告や業者間の情報交換などの局面において、中心的な部分を構成しています。
個人情報について法令に則って適切な対応を行うことは、不動産業における個人情報の利用に関する消費者の信頼を高め、不動産業の健全な発達につながります。その重要性を再認識していただきたいと思います。