税務相談

月刊不動産2003年1月号掲載

アパートやその敷地の相続税評価について教えて下さい。

0 井出 真(井出真税理士事務所)


Q

アパートやその敷地の相続税評価について教えて下さい。

A※記事の内容は、掲載当時の法令・情報に基づいているため、最新法令・情報のご確認をお願いいたします。

  •  空地にアパートなどの貸家を建設すると、貸家と貸家建付地の評価となり、更地のままの評価(自用地としての評価)より低くなります。
     相続税や贈与税の評価では、アパート等の賃貸建物の敷地を「貸家建付地」といい、次のように評価します。

     貸家建付地価額=自用地価額×(1-借地権割合×借家権割合×賃貸割合)
      自用地価額:路線価方式または倍率方式により求めた宅地の評価額です。
      借地権割合:90%~30%(借地権の取引慣行がない地域においては20%)です。
      借家権割合:30%または40%です。

    アパート等の賃貸建物は「貸家」といい、次のように評価します。

     貸家価額=家屋の評価額×(1-借家権割合×賃貸割合)

      家屋の評価額:固定資産税評価額です。

    (評価の具体例)

      A氏が所有する5,000万円(相続税評価額)の青空駐車場に、5,000万円(固定資産税評価額3,000万円)でアパートを建築し、満室で賃貸していた場合

    (建築前)

     ・自用地・・・5,000万円

    (建築後)

     ①貸家建付地・・・・・5,000万円×(1-60%×30%×100%)=4,100万円
      ※借地権割合60%、借家権割合30%(路線価図)とした場合

     ②貸家・・・・・・・・3,000万円×(1-30%×100%)=2,100万円

     ③自己資金の減少または借入金の増加・・・5,000万円

      ①+②-③=1,200万円

     もちろん、アパートを建築し、A氏がすぐ亡くなるわけではないので、アパート経営の利益が現預金として増加していきます。また、借入金も減少していきます。したがって、相続税の評価減の効果は、年月が経てば徐々に薄れていきます。このような「貸家建付地」や「貸家」の評価減は、立ち退き料相当額であると説明されています。つまり、相続税の評価では、「貸家建付地」や「貸家」は借家人を立ち退かせたときの価額を評価しているのです。借家人を立ち退かせるには、立ち退き料がいるのでその分低く評価してよいということです。この考え方によれば、空室部分のアパートやその敷地については、この評価減が適用されないことになります。それでは、たまたまA氏が3月になくなり、その際に今まで貸していた6室のうち3室が一時的に空室であり、またすぐ満室になった場合、賃貸割合は50%になるのでしょうか。財産評価基本通達では、「賃貸されている各独立部分」には、継続的に賃貸されていた各独立部分で、課税時期において、一時的に賃貸されていなかったと認められるものを含むこととして差し支えないとされています。したがって、賃貸割合は100%のままでよいことになります。それでは、アパートは完成したが、未入居のときに相続が発生した場合はどうなるのでしょうか。この場合には、「貸家建付地」や「貸家」の評価減は受けられません、というのが税務当局の見解です。借家人がまだいない段階では、立ち退き料は生じないという考え方です。最後に「貸家建付地」の範囲ですが、建物の賃貸借契約と一体として貸し付けられている庭や駐車場部分については、範囲に含まれると考えられます。

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