税務相談

月刊不動産2008年3月号掲載

「贈与税の配偶者控除」について

情報企画室長 税理士 山崎 信義(税理士法人 タクトコンサルティング)


Q

贈与税の配偶者控除について教えてください。

A※記事の内容は、掲載当時の法令・情報に基づいているため、最新法令・情報のご確認をお願いいたします。

  • 1. 贈与税の配偶者控除

     (1) 暦年課税の贈与税とは

     暦年課税の贈与税は、その年の1月1日から12月31日の1年間に個人が受けた贈与について課税されます。暦年単位の贈与税は、「(1年間に贈与により取得した財産の価額の合計額-110万円)×税率-控除額」という算式により計算します。

     (2) 贈与税の配偶者控除

     暦年課税の贈与税の計算上、婚姻期間が20年以上の夫婦の間で、居住用不動産又は居住用不動産を取得するための金銭の贈与が行われた場合、基礎控除110万円のほかに最高2,000万円まで控除することができます。これを贈与税の配偶者控除といいます。

     (3) 特例を受けるための適用要件

     贈与税の配偶者控除の適用を受けるためには、次の要件を満たすことが必要です。

      ①夫婦の婚姻期間が20年を過ぎた後に贈与が行われたこと
       この場合の婚姻期間は「婚姻の届出のあった日から贈与までの期間」により判定することになります。
       このため、入籍していない期間は対象外となります。

      ②配偶者から贈与された財産が、自分が住むための居住用不動産であること又は居住用不動産を取得するための金銭であること

      ③贈与を受けた年の翌年3月15日までに、贈与により取得した国内の居住用不動産又は贈与を受けた金銭で取得した国内の居住用不動産に、贈与を受けた者が現実に住んでおり、その後も引き続き住む見込みであること

    2. 適用を受けるための手続

     この特例の適用を受けるためには、贈与税の申告期限(贈与年の翌年3月15日)までに贈与税の期限内申告書に次の書類を添付して提出することが必要です。

     (1) 財産の贈与を受けた日から10日を経過した日以後に作成された戸籍謄本又は抄本

     (2) 財産の贈与を受けた日から10日を経過した日以後に作成された戸籍の附票の写し

     (3) 居住用不動産の登記事項証明書

     (4) その居住用不動産に住んだ日以後に作成された住民票の写し

    3. 適用対象となる居住用不動産

     (1) 適用条件

     贈与税の配偶者控除の特例の対象となる居住用不動産は、贈与を受けた夫や妻が居住用とする国内の家屋又はその家屋の敷地(借地権を含む)であることが条件です。なお、居住用不動産の価額は相続税評価額とされ、家屋は固定資産税評価額、敷地は路線価等を基に計算した価額により評価されます。

     (2) 店舗併用住宅の取扱い

     店舗兼住宅の持分の贈与を受けた場合は、居住用部分から優先的に贈与を受けたものとして申告できます。また、居住用部分がおおむね90%以上の場合はすべて居住用不動産として取り扱うことができます。

     (3) 敷地のみの贈与

      ①概要

       居住用家屋とその敷地は、一括して贈与を受ける必要はありません。したがって、居住用家屋だけや居住用家屋の敷地だけの贈与を受けて、贈与税の配偶者控除の適用を受けることが可能です。

      ②適用要件

       居住用家屋の敷地だけの贈与を受ける場合には、夫又は妻が居住用家屋を所有しているか、夫又は妻と同居する親族が居住用家屋を所有していることが必要です。具体的には、居住用家屋を所有している妻が夫からその敷地の贈与を受ける場合や、夫婦と子が同居し、居住用家屋の所有者が子で敷地の所有者が夫であるときに、妻が夫からその敷地の贈与を受ける場合が該当します。

    4. 注意点

     贈与税の配偶者控除は、同じ配偶者の間では一生に一度しか適用を受けることができません。また、この特例を利用して不動産の贈与を受ける場合には、不動産の受贈者に対し贈与税とは別に登録免許税と不動産取得税が課税されます。

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