賃貸相談
月刊不動産2026年7月号掲載
借家人の相続と賃料不払いを理由とする契約解除
弁護士 江口正夫(江口・海谷・池田法律事務所)
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A※記事の内容は、掲載当時の法令・情報に基づいているため、最新法令・情報のご確認をお願いいたします。
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賃借権は、相続性が認められていますので、賃借人が死亡すれば、その相続人に承継されることになります。承継する相続人は、被相続人と賃貸建物に同居していた相続人に限られません。遺産分割協議が成立しない限り、相続人全員が賃借権を相続します。被相続人が死亡するまでに発生した賃料支払い債務は、単なる金銭債務ですから、相続人が各自の法定相続分割合により当然に分割されます。そのため、賃貸人は、相続人各自に対して、各自が相続した債務額しか請求できません。
解除権には不可分性が認められますので、賃貸人は、相続人全員に対し、各自が相続した賃料債務を催告の上、支払いがなければ相続人全員に対して契約解除の意思表示をすることにより、賃貸借契約を解除することができます。以下で詳しく見ていきましょう。 -
建物賃借人の死亡と賃貸借契約の帰趨(きすう)
建物の賃借人が死亡した場合、賃貸借契約は終了するのではなく、その相続人が相続することになります。その場合、被相続人と賃貸建物に同居していた相続人だけが賃借権を相続するのではありません。被相続人とは別居し、遠方に住んでいる相続人も賃貸借契約の賃借人たる地位を承継することになります。この場合、相続人は各自の法定相続分に応じて、賃借権を承継することになります(民法898条)。したがって、特定の相続人が借家権を取得する旨の遺産分割協議が成立すれば、以後は当該相続人のみが賃借人となりますが、遺産分割協議が未成立の段階では、相続人全員を賃借人として、対応することになります。
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被相続人死亡までに発生していた賃料の帰属
ご質問のケースでは、被相続人死亡までにすでに3カ月分の滞納が発生していたとのことですので、賃貸人は、この3カ月分の賃料滞納を理由として賃貸借解除通知を発することになります。
ところで、被相続人死亡までに発生していた滞納賃料を相続人はどのように承継するのかという点が問題となります。(1)相続開始前に発生した滞納賃料
被相続人死亡までに発生した賃料は、すでに発生した金銭債務ですから、共同相続人に相続分に応じて当然に分割されます。当然に分割というのは、遺産分割協議を行うまでもなく、被相続人死亡の瞬間、各相続人相続分割合で帰属するという意味です。したがって、賃貸人は、各共同相続人に対し、各自が相続した賃料債務額しか請求することができません。(2)相続開始後に発生する賃料債務
これに対し、被相続人死亡後、遺産分割成立までに発生した賃料債務に関しては、共同相続人は、各自、建物の全部を使用収益することができる地位を承継したものとみなされますので、性質上、不可分的な使用収益の対価として不可分債務と解されています。したがって、賃貸人は、共同相続人各自に対し、賃料の全額を請求できることになります。(3)遺産分割協議成立後に発生する賃料債務
遺産分割協議が成立した場合は、同協議により賃借権を承継した賃借人が唯一の賃借人となりますので、賃貸人は、遺産分割協議により賃借権を取得した相続人以外の相続人に対しては賃料の請求はできず、遺産分割協議により賃借権を取得した相続人のみに対し賃料を請求することになります。 -
解除権の行使方法

