法律相談
月刊不動産2024年2月号掲載
IT重説のためのIT環境
弁護士 渡辺 晋(山下・渡辺法律事務所)
Q
テレビ会議などの仕組みを使ってIT重説をすることを検討しています。IT環境を整えるために、どのような機器が必要になるのでしょうか。
A※記事の内容は、掲載当時の法令・情報に基づいているため、最新法令・情報のご確認をお願いいたします。
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回答
IT重説で用いられるテレビ会議等の仕組みについては、事業所等に設置されたテレビ会議システム、パソコン、タブレット端末を利用したテレビ会議等、さまざまな方法によることが想定されますが、機器としては、端末、画面、カメラ、マイク、音響機器が必要であり、また求められる機能を満たすための最低条件が決められています。
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IT重説
IT重説は、テレビ会議等のITを活用して行う重要事項説明です。「宅地建物取引業法の解釈・運用の考え方」(平成13年1月6日国総動発第3号 令和3年3月改定、不動産業課長通達)では、IT重説を、対面による宅建業法35条の重要事項説明と同様に取り扱うものとされています。
ただし、不動産業課長通達には、対面の重要事項説明と同様とみなすために次の4つの要件が定められています。①IT環境の整備
宅地建物取引士および重要事項の説明を受けようとする者が、図面等の書類および説明の内容について十分に理解できる程度に映像を視認でき、かつ、双方が発する音声を十分に聞き取ることができるとともに、双方向でやりとりできる環境(IT環境)において実施していること。
②重要事項説明書および添付書類の送付
宅地建物取引士により記名された重要事項説明書および添付書類を、重要事項の説明を受けようとする者にあらかじめ送付していること。
③説明開始前の確認
重要事項の説明を受けようとする者が、重要事項説明書および添付書類を確認しながら説明を受けることができる状態にあること。並びに、映像および音声の状況について、宅地建物取引士が重要事項の説明を開始する前に確認していること。
④宅地建物取引士証の提示
宅地建物取引士が、宅地建物取引士証を提示し、重要事項の説明を受けようとする者が、宅地建物取引士証を画面上で視認できたことを確認していること(図表)。 -
IT環境
IT重説には、パソコンやテレビ、タブレット等の端末の画像を利用して、対面と同様の説明や質問を行うことができるための環境(IT環境)が必要です。IT環境としての機器については、一定の機能を有していることが求められており、「重要事項説明書等の電磁的方法による提供及びITを活用した重要事項説明 実施マニュアル」(国土交通省不動産・建設経済局不動産業課令和4年4月)において、大要が次のとおり説明されています。
(1)端末
IT重説を実施する端末(パソコン、タブレット端末、スマートフォン 等)や使用するOSの種類については、特定のものである必要はない。自社がすでに利用しているものでもよい。
(2)画面
IT重説において使用するディスプレイ等の画面については、大きさや機能、解像度等について一定の性能を備えていなければならない。 説明の相手方の画面についてみると、宅建士証に記載されている文字が確認できる程度の大きさや、拡大機
能、解像度等が必要である。
(3)カメラ
カメラが重要となるのは、宅建士側で宅建士証や説明に要する図面等を表示するためである。特に宅建士側のカメラについては、十分な性能(解像度等)を有する必要がある。説明の相手方が宅建士証を視認し、説明を行うのが宅建士本人であることが確認できなければならない。
(4)マイク等の音響機器
マイクについては、宅建士および説明の相手方の音声の内容を判別するのに十分な性能を有する必要がある。音響機器については、スピーカーやマイクとヘッドホンが一体化しているヘッドセット等の利用も想定される。端末に内蔵・付属しているものや市販されているもので通常は問題ないが、説明や質問等の内容が判別できる十分な性能を有する必要がある。 -
まとめ
IT重説は、徐々に普及し始めており、買主や賃借人から求められることもあります。まだ利用していない宅建業者のみなさまも、準備をはじめる時期がきているようです。