税務相談

月刊不動産2012年1月号掲載

親子間で土地の使用貸借があった場合の税務

情報企画室長 税理士 山崎 信義(税理士法人 タクトコンサルティング)


Q

子が自宅の所有を目的として親所有の土地を使用貸借で借りた場合の税務上の取扱いについて教えてください。

A※記事の内容は、掲載当時の法令・情報に基づいているため、最新法令・情報のご確認をお願いいたします。

  • 1.使用貸借とは

    (1)使用貸借に該当する契約

     使用貸借の定義は民法593条に規定されています。具体的には「当事者の一方が無償にて使用および収益をなしたる後返還をなすことを約して相手方よりある物を受け取ることによってその効力を生ずる」契約をいいます。

    (2)地代の授受と使用貸借

    前述(1)より、土地の使用貸借の場合、地主(本問では親)がその土地を無償で借受者(本問では子)に使用収益させることになりますが、この場合であっても、その土地に係る通常の必要経費は借受者負担とされます。
    このため、土地の借受者と地主との間に金銭のやり取りがある場合であっても、その金額が借り受ける土地の固定資産税等相当額以下の額にすぎないときは使用貸借に該当します。これに対し、土地の借受けについて地代のやり取りがない場合であっても、権利金などのやり取りがあるときは、土地を無償で使用収益させたことにはならないので、使用貸借には該当しません。

    2.使用貸借に係る土地の相続税・贈与税

    使用貸借に係る土地の相続税や贈与税の課税については、国税庁の通達(昭和48年11月1日「使用貸借に係る土地についての相続税及び贈与税の取扱いについて」)において、次のように取り扱うこととされています。

    (1)使用貸借に係る使用権の相続税評価額

    ①使用権の相続税評価額

     建物等の所有を目的として使用貸借による土地の借受けがあった場合、借地権の設定に際しその設定の対価として権利金等を支払う取引上の慣行がある地域においても、相続税や贈与税の計算上は、その土地の使用貸借に係る使用権の相続税評価額はゼロとして取り扱われます。

    ②相続税評価額がゼロとされる理由

     建物の所有を目的とする土地の使用貸借は、夫婦や本問のような親子などの親族間で行われる場合がほとんどです。このような場合は、土地に貸主と借主との間に利害関係の対立がないことから、地代はもとより権利金などを支払うことは通常ありえません。したがって、これらの親族間での土地の使用貸借は、通常、他人間における土地の賃貸借のような土地の使用権に対する強い権利意識もないでしょう。

     さらに土地の使用貸借は無償取引であることから、建物の所有を目的とする場合であっても借地借家法の適用がなく、借地権のような強い法的保護が受けられません。また、使用貸借は当事者間の対人関係を重視しており、借主の死亡により終了します(民法599条)。このように、使用貸借による土地の使用権は、その経済的交換価値において借地権に比べて極めて弱いものといえます。

     そこで、建物等の所有を目的として使用貸借による土地の借受けがあった場合、借地権の設定に際してその設定の対価として権利金等を支払う取引上の慣行がある地域においても、相続税評価においては、その土地の使用貸借に係る使用権の価額はゼロとして取り扱うこととしています。

    (2)土地の使用貸借が行われた場合の借主の贈与税課税

    前述2(1)②より、使用貸借による使用権の価額はゼロとされます。したがって、借地権の設定に際して対価として権利金等を支払う取引上の慣行がある地域において行われた使用貸借による土地の借受けであっても、税務上は地主から借受者に借地権の贈与があったとはされず、借受者に対して贈与税が課税されることはありません。

    (3)土地の無償使用と地代相当額に対する贈与税課税

     使用貸借による土地の借受けがあった場合、その借受者はその土地を無償で使用収益することから、将来にわたって地代相当額につき地主より経済的利益を受けることになります。この経済的利益を受けることについて、借受者に対し贈与税が課税されるおそれがあります。しかし税務上は、その利益を受ける金額が少額である場合や課税上弊害がないと認められる場合には、あえて課税しなくてもよいとされています(相続税基本通達9-10参照)。

    (4)使用貸借に係る土地等を相続又は贈与で取得した場合

     使用貸借に係る土地等を相続又は贈与により取得した場合、相続税又は贈与税の計算上、その土地の相続税評価額は、前述2(1)②より土地の使用貸借に係る使用権の価額はゼロとされます。その使用賃借に係わる土地の相続税評価については、その土地上の建物等の利用状況が自用又は貸付けの区分にかかわらず、自用地(更地)として評価されます。

page top
閉じる