賃貸管理ビジネス

月刊不動産2025年2月号掲載

自社メディアにおけるマーケティングの視点②

代表取締役 今井 基次(みらいず コンサルティング株式会社)


Q

 当社は、5年ほど前から管理受託を強化しています。最近では受託専任の営業を置いて活動を行っており、「ホームページ」や「店頭でのノボリ」などを使って積極的にアピールをしかけています。また、2年ほど前から「オーナー通信」を始めています。しかし、これまで管理に対するオーナーさんからの問い合わせはほぼありません。何か良い方法があれば教えてください。

A※記事の内容は、掲載当時の法令・情報に基づいているため、最新法令・情報のご確認をお願いいたします。

  •  前号同様に「不動産情報発信におけるマーケティングの視点」を意識しましょう。管理受託営業を始めたばかりの時期にオーナーからの反響を得るためには、良質な情報発信が不可欠です。また、ただ「情報発信することが目的」になりがちですが、ライバル他社が行っているような画一的な情報発信ではまったく顧客に届きません。やはり「顧客の目線」を意識した「ターゲットに届く情報」を発信しましょう。

  • はじめに

     前号では、マーケティングにおける情報発信においては「顧客の目線を意識する」ことと、「顧客のベネフィットを明確にする」ことの重要性について書きました。今回も目線はまったく同様ですが、マーケティングで「情報発信する目的を明確にする」ことについて説明していきたいと思います。

  • 発信することが目的ではない

     マーケティングでよくあるミスは、せっかくお金を使っているのに、広告やコンテンツなど内容の精度が乏しいことです。受け取り側がどう捉えるのかということを徹底的に考えなければ、せっかく多額のコストをかけて広告を行っても意味がありません。

     たとえば、管理オーナーや顧客候補となるオーナーへの「オーナー通信」は、ここ10年くらいの間で管理会社の間で浸透しました。低額で利用できるため、多くの管理会社が利用していますが、逆をいえば、どの会社も同じサービスを利用しているからこそ、差別化が図れなくなります。その結果、いくつかの管理会社に管理を任せているオーナーからよく耳にするのは「タイトルだけは違うんだけど、まったく同じ内容のオーナー通信が毎月届くんだよね」というお話です。タイトルだけ違って中身が同じでは金太郎あめ状態ですから、独自性がないと思ってしまう人も多いでしょう。

     オーナー通信で本来やりたいことは、情報発信をすることなのでしょうか。本来やるべきことは、「管理会社の独自の情報を発信すること」ではないでしょうか。ふだん見えにくい管理会社の存在を明確にして、信頼関係を深めることが目的なのではないでしょうか。低額だからと手軽に利用するのは簡単ですが、せっかくのオーナーとの接点を無駄にしてしまうことになってはいませんか。

  • 誰にどんな情報を伝えたいのか

     伝えるべき相手(ターゲット)に対して、本当に伝えたい内容をしっかりと精査しましょう。たとえば「最近来店するお客様の動向」「自社で行った空室対策の成功事例」などの内容は、入居希望者のトレンドをお伝えするとともに、実際の空室対策の事例を知ってもらうことで、オーナーの現状の問題点と、最もコスパの良い空室対策方法に気づいてもらいやすくなります。さらに「成功したオーナー様の声」を入れることによって、リアルな体験を知ることができれば、問い合わせたいと思ってもらいやすくなります。また、今後本格的に始まるであろう金利上昇は、賃貸経営をするオーナーからしてみれば死活問題になります。この辺りの情報には常にアンテナを張っているため「近隣の取引銀行の動き(ファイナンス情報)」なども、知っていただければ、問い合わせをしていただくきっかけになりやすいのではないでしょうか。

  • 顔が見えにくいスタッフの声を届ける

     仲介会社と違って、比較的バックヤードの業務が多い管理会社は、ふだんやりとりをしているオーナーがいたとしても、顔を知らないことがよくあります。せっかく、資産家であるオーナーが近くにいるのに(提案のチャンスは多々あるのに)、これでは自ら機会損失を起こしているようなものです。これらを回避するには、もっとスタッフの情報や会社のことを積極的に情報発信するようにしましょう。たとえば「新入社員の紹介」「管理会社のスタッフからのメッセージや写真」など、毎月日替わりで情報を伝えていくだけでも、他社とは容易に差別化が図れます。ここで考えることをしないと、差別ができないが故に、結果として反響を得ることができなくなってしまうのです。

     当社のクライアントには、この辺りの情報発信を上手に行うことで、毎月安定して、反響から管理受託を得ることに成功している方々がいらっしゃいます。既存オーナーだけでなく、店頭での配布やダイレクトメールなどを活用することも、反響を効率的に受け取る方法ではないでしょうか。

     まずは、せっかくの情報発信の機会なのですから、ラクをせずにしっかりと内容を精査することから始めましょう。

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