税務相談
月刊不動産2006年8月号掲載
相続・贈与時の借地権等の評価
代表社員 税理士 玉越 賢治(税理士法人 タクトコンサルティング)
Q
借地権等が設定されている土地について、相続又は贈与があった場合の相続税又は贈与税を算定するときの財産評価について教えてください。
A※記事の内容は、掲載当時の法令・情報に基づいているため、最新法令・情報のご確認をお願いいたします。
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土地に関する借地権等の権利(以下、「借地権等」)については、相続税法と財産評価基本通達に、その評価が定められています。
ただ、相続税法で定められている地上権の評価からは「借地借家法に規定する借地権又は地上権」は除かれていますから、結果として、一般の借地権等の相続時又は贈与時の評価は財産評価基本通達に従って行う
ことになります。<借地権等の評価>
(1) 借地権の評価
借地権の価額は、その借地権の目的となっている宅地の自用地価額に、国税局長の定める割合(東京国税局の場合30~90%)を乗じて計算した金額で評価します。
ただし、借地権の取引慣行の認められない地域にある借地権の価額は評価しません。しかし、この場合であっても、地主の所有する貸宅地の評価にあたっては、借地権割合を20%として更地価額から控除します。(2) 区分地上権の評価
区分地上権とは、鉄道や道路のためのトンネルの所有を目的とするものが多く、「損失補償基準細則」に定める「土地利用制限率算定要領」に基づいて補償金が支払われています。
区分地上権の価額は、更地価額に設定契約の内容に応じた土地利用制限率に基づいて評定した区分地上権割合を乗じて評価します。
なお、設定事例の最も多い地下鉄等のトンネル(ずい道)の所有を目的とする場合の区分地上権割合は、過去の土地利用制限率の計算例等から、簡便法として30%とすることができることになっています。(3) 区分地上権に準ずる地役権の評価
特別高圧架空電線の架設等を目的として地下又は空間について上下の範囲を定めて設定されるもので、建造物の設置を制限するものです。
このような地役権設定にあたり支払われる補償金は、承役地の価額に土地利用制限率に基づいて計算した割合を乗じて算定されています。
したがって、区分地上権に準ずる地役権の価額は、承役地の価額に土地利用制限率に基づいて計算した割合を乗じて評価します。
ただし、家屋に対する建築制限の強弱に着目し、簡便法として、承役地に係る制限内容の区分に従い、次の割合とすることができます。この簡便法の考え方は、実務では、市街化調整区域の土地を評価する場合に準用。(a) 家屋の建築が全くできない場合:50/100又はその区分地上権に準ずる地役権が借地権であるとした場合にその承役地に適用される借地権割合のいずれか高い割合
(b) 家屋の構造、用途等に制限を受ける場合:30/100
(4) 土地の上に存する権利が競合する場合の借地権等の評価
借地権の目的となっている宅地の下を地下鉄トンネルが通っている場合などのケースです。
区分地上権又は区分地上権に準ずる地役権は、土地の一定層を排他的に利用する権利であり、その割合は土地の更地価額に対して固定的と考えられます。
区分地上権は、他の使用収益を目的とする権利者の承諾を得れば重ねて設定することができ、この場合、当該他の権利者は区分地上権の行使を妨げてはなりません。「損失補償基準細則」では、借地権が設定されて
いる土地に区分地上権を設定する場合の補償金は、地主と借地権者の両者で配分することを想定しています。
土地の上に存する権利が競合する場合の借地権、定期借地権等又は地上権の価額は、次の算式により計算した金額で評価します。(a) 借地権、定期借地権等又は地上権及び区分地上権が設定されている場合の借地権、定期借地権等又は地上権の価額
(借地権、定期借地権等、地上権又は永小作権の価額)×(1-区分地上権の割合)(b) 区分地上権に準ずる地役権が設定されている承役権に借地権、定期借地権等又は地上権が設定されている場合の借地権、定期借地権等又は地上権の価額
(借地権、定期借地権等、地上権又は永小作権の価額)×(1-区分地上権に準ずる地役権の割合)