税務相談

月刊不動産2007年7月号掲載

平成19年度税制改正・「減価償却制度の改正」

情報企画室長 税理士 山崎 信義(税理士法人 タクトコンサルティング)


Q

平成19年度の税制改正で、個人の減価償却制度が改正されたという話を聞きましたが、どのように改正されたのでしょうか。

A※記事の内容は、掲載当時の法令・情報に基づいているため、最新法令・情報のご確認をお願いいたします。

  • 1.改正のあらまし

     平成19年度税制改正において、個人減価償却制度について、抜本的な見直しが行われました。平成19年4月1日以降に取得した減価償却資産と平成19年3月31日以前に取得した減価償却資産について、それぞれ次のとおりに減価償却の方法が改正されています。

    (1) 平成19年4月1日以後に取得した減価償却資産

     (a) 残存価額の廃止減価償却の計算上、残存価額が廃止されました。

     (b) 償却可能限度額の廃止償却可能限度額(取得価額の95%)を廃止し、耐用年数経過時点に1円(備忘価額)まで償却できることになりました。

     (c) 250%定率法の導入定率法の償却率は、定額法の償却率(1/耐用年数)の2.5倍の率となりました。例えば、耐用年数10年の減価償却資産の場合、定額法の償却率は0.1、定率法の償却率は0.25となります。

     (d) 定率法から定額法への切替え定率法を採用している場合において、定率法により計算した減価償却費が償却保証額(減価償却資産の取得価額×その資産の耐用年数に応じた保証率)を下回るときは、償却方法を定率法から定額法に切り替えて減価償却を行います。

    (2) 平成19年3月31日以前に取得をした減価償却資産

     平成19年3月31日以前に取得をした減価償却資産については、改正前の定額法や定率法による償却費計算が維持されます。ただし、償却可能限度額まで償却した後は、5年間で1円まで均等償却ができます。

    2.建物の減価償却方法

     平成10年4月1日以後に取得した建物本体の償却方法は、改正前と同様に定額法のみです。また、減価償却の方法については、改正前と同様に減価償却資産の種類ごとに選定できます。建物については改正前と同様に本体と附属設備に分けて減価償却することが可能です。したがって、建物の附属設備については定率法を選択することができます。

     なお、平成19年3月31日以前に取得した減価償却資産の償却方法を選定している場合、平成19年4月1日以後に取得した減価償却資産で平成19年3月 31日以前に取得した減価償却資産と同一の区分に属するものについて、償却方法の選定をしないときは、平成19年3月31日以前取得資産につき選定していた償却方法を選定したとみなされます。

    3.資本的支出があった場合の取扱い

    (1) 原則

     平成19年4月1日以後に資本的支出があった場合には、原則として、資本的支出に係る減価償却資産と種類及び耐用年数を同じ減価償却資産を取得したものとして、1.(1)の定額法又は定率法により減価償却を行います。

    (2) 特例

     (a) 平成19年3月31日以前に取得した減価償却資産に係る資本的支出については、その減価償却資産に係る取得価額に資本的支出に係る金額を加算することができます。この場合の減価償却費の計算は、加算した資本的支出部分も含めた減価償却資産全体について、1.(2)の定額法又は定率法等により行います。

     (b) 1.(1)の定率法を採用している減価償却資産について資本的支出を行った場合には、支出年の翌年1月1日において、資本的支出に係る減価償却資産の期首未償却残高と資本的支出により取得したものとされた減価償却資産の期首未償却残高との合計額を取得価額とする減価償却資産を新規取得したと取り扱うことができます。

     (c) 同一年中に複数回行った資本的支出について、1.(1)の定率法を採用している場合には、支出年の翌年1月1日において資本的支出により取得したものとされた減価償却資産のうち、種類及び耐用年数が同じものについて、同日における期首未償却残高の合計額を取得価額とする減価償却資産を新規取得したと取り扱うことができます。

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