税務相談
月刊不動産2005年5月号掲載
借地権の意義と貸主(地主)の課税関係
代表社員 税理士 玉越 賢治(税理士法人 タクトコンサルティング)
Q
借地権について、その税務上の意義と貸主(地主)の課税関係を教えてください。
A※記事の内容は、掲載当時の法令・情報に基づいているため、最新法令・情報のご確認をお願いいたします。
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借地権とは、建物の所有を目的とする地上権又は土地の賃借権をいいます(借地借家法2条1号)。相続税法上の借地権は、借地借家法の借地権のことをいいます(評基通9(5)解説)。いっぽう、所得税法における借地権は、建物若しくは構築物の所有を目的とする地上権若しくは賃借権のことをいい(所得税法施行令79条1項)、法人税法における借地権は、建物又は構築物の所有を目的とする地上権又は土地の賃借権のことをいい(法人税法施行令138条1項)、どちらも構築物の所有目的を含んでいる点で、相続税法上の借地権よりもその範囲が広がっています。
借地権設定時における税務の取扱いは、借地権利金の授受の有無により次のように分類することができます。
(1) 通常の借地権利金の授受があるもの
(2) 借地権利金<通常の借地権利金の授受があるもの
(3) 借地権利金を授受しないもの
(4) 土地の無償返還届出書を提出するものまた、土地の賃貸料(地代)については、税務上は次のような態様に分類することができます。
(1) 通常の地代を支払うもの
(2) 相当の地代を支払うもの
(3) 通常の地代<支払地代<相当の地代を支払うもの
(4) 使用貸借によるもの借地権の設定時における貸主(地主)課税関係を説明しましょう。
個人所有の土地を貸し付けた場合、受領した借地権利金がその土地の時価の10分の5を超えるときは、借地権の譲渡があったとみなされ、受領した借地権利金は、譲渡所得(土地建物等の譲渡所得)の総収入金額に算入されます。
借地権利金が土地の時価の10分の5以下の場合には、不動産所得の収入金額に算入することになります。土地の時価が不明の場合で、借地権利金≦地代年額×20のときは、その借地権利金は不動産所得の収入金額と推定されます。不動産所得とされた借地権利金は臨時所得とされ、臨時所得の金額がその年分の総所得金額の20%以上である場合には、平均課税の適用を受けることができます。法人所有の土地を貸し付けた場合、受領した借地権利金は収益に計上します。この場合、受領した借地権利金がその土地の時価の10分の5以上のときは、次の算式により計算した金額を損金に算入します。
通常の借地権利金の額に満たない借地権利金の授受があった場合でも、次の算式によった相当の地代年額の支払があるときには、課税関係は生じません。
(土地の更地価格-授受した借地権利金)×6%
この場合において、土地の更地価額とは、次のいずれかをいいます。(1) 土地の更地としての通常価額
(2) 近傍類地の公示価格や標準価格から合理的に算定した価額
(3) 相続税評価額
(4) 相続税評価額の過去3年間の平均額通常の借地権利金に満たない借地権利金の授受があった場合で、上記の相当の地代の支払がないときは、次の算式により計算した金額が、法人地主から借地人へ贈与されたものとされます。
この算式の、相当の地代年額とは、土地の更地価額(上記(1)から(4)のいずれか)×6%の水準をいいます。
借地権利金の授受がない場合において、土地の更地価額の6%相当額の地代の授受があるか、又は土地の無償返還届出書を所轄税務署長に提出したときは、借地権の認定課税の問題は生じません。ただし、後者の場合には、相当の地代と実際の地代との差額が借地人に贈与したものとして取り扱われます。