税務相談

月刊不動産2007年12月号掲載

個人が土地建物を譲渡した場合の譲渡益課税について

情報企画室長 税理士 山崎 信義(税理士法人 タクトコンサルティング)


Q

個人が土地建物を譲渡して利益を得た場合の税金について教えてください。

A※記事の内容は、掲載当時の法令・情報に基づいているため、最新法令・情報のご確認をお願いいたします。

  • 1. 譲渡所得の金額の計算

    (1) 譲渡所得の計算

     個人が土地建物を譲渡して得た利益については、譲渡所得として所得税と住民税が課税されます。

     譲渡所得の金額は、譲渡価額から取得費と譲渡費用の合計額を控除した金額です。一定の条件を満たす場合には、さらに特別控除を差し引くことができます。

    (2) 取得費の考え方

     ① 取得費は、資産の購入代金(取得価額)、仲介手数料、登記費用及び設備費・改良費等の合計額です。

     ② 建物の取得費は、その取得価額から償却費相当額を控除します。建物の償却費相当額の計算上、マンションなど建物と土地を一括で購入している場合には、その取得価額を建物の取得価額と土地の取得価額に区分する必要があります。この場合の土地と建物の取得価額は、次のように区分することができます。

      イ. 購入時の契約書等に建物と土地の価額が記載されている場合には、その価額により区分します。

      ロ. 売買契約書に記載された消費税等の額を基に建物部分の価額を算定します。消費税等は建物の譲渡にのみかかるので、この消費税等の額を5%(平成元年4月1日から9年3月31日までの間に取得した場合は3%)で割り戻した金額が建物の取得価額となります。

      ハ. 建物と土地の価額が区分されていない場合は、建物と土地の購入時の時価の割合で区分します。なお、この場合には「建物の標準的な建築価額表」を基に、建物の取得価額を計算することもできます。

     ③ 建物の取得費の計算上控除される償却費相当額は、建物が業務用か否かにより、次のように区分されます。

      イ. 業務用建物は、その業務に係る不動産所得等の金額の計算上必要経費に算入する償却費の累計額を償却費相当額とします。

      ロ. 非業務用建物は、建物の取得価額に0.9と所定の償却率(建物の耐用年数の1.5倍の年数に応じる定額法の償却率)及び経過年数を乗じて償却費相当額を計算します。

     ④ 一定の相続財産を売却した場合には、相続税額のうち一定額を取得費に加算することができます。

     ⑤ ①から③までの方法により計算した取得費が譲渡価額の5%相当額に満たない場合は、譲渡価額の5%相当額を取得費として計算できます。

     ⑥ 交換や買換等の特例を受けて取得した土地建物を譲渡した場合は、一定の方法により計算した金額が取得費となります。

    (3) 譲渡費用の考え方

     譲渡費用には、仲介手数料、測量費その他譲渡のために直接要した費用、貸家売却時に借家人に支払った立退料及び土地売却時に建物を取り壊した場合の取壊し費用や取壊し損などの金額が含まれます。ただし、修繕費や固定資産税等の資産の維持管理費用は除きます。

    (4) 特別控除

     特別控除には、居住用財産譲渡の3,000万円控除や収用等の5,000万円の特別控除などがあります。特別控除の額は、譲渡価額から取得費及び譲渡費用を差し引いた金額が各特別控除の額に満たない場合には、その満たない金額が限度となります。

    2 損益通算

     土地建物に係る譲渡所得の金額の計算上生じた損失は、居住用不動産の譲渡損失を除き、土地建物に係る譲渡所得以外の所得との損益通算はできません。

    3 税額計算

     土地建物に係る譲渡所得は分離課税とされ、給与所得等の他の所得とは区分して税額計算をします。ただし、確定申告の手続は他の所得と合わせて行います。

     土地建物に係る譲渡所得について適用される税率は、譲渡年1月1日時点で所有期間が5年超の土地建物に係る長期譲渡所得は20%(所得税率15%・住民税率5%)、譲渡年1月1日時点で所有期間が5年以下の土地建物に係る短期譲渡所得は39%(所得税率30%・住民税率9%)となります。

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