賃貸管理ビジネス
月刊不動産2024年5月号掲載
「やる気」の上昇サイクルをもたらす4つの要素
代表取締役 今井 基次(みらいず コンサルティング株式会社)
Q
当社は長年、売買仲介や買取再販を中心に行ってきた会社です。数年前から賃貸管理事業を本格的に進めることになり、現在3名で業務をまわしています。会社のなかでは、まだまだ売上げも人員も少ないため、肩身がせまい思いをすることもあるのですが、皆これまで真面目に業務に取り組んでくれています。
ただ、最近は社員の退職もあり、業務が特定の人に集中してしまい、スタッフの気持ちがあまり前向きになっているとはいえない状態が続いています。何かよい手立てがあれば教えてください。
A※記事の内容は、掲載当時の法令・情報に基づいているため、最新法令・情報のご確認をお願いいたします。
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回答
人員が少ないなかで業務を回していると、業務の幅が広い管理業務の場合、特定の人に仕事が集中しがちです。また他部署に仕事を振れない状況であるがゆえ、その特定の人が仕事を抱え込んでしまい、精神的に追い詰められてしまうことがあります。もちろん人を入れて解決するのも1つの方法ですが、テクノロジーが発展し、アウトソーシングの引受先も増えた現在では、社員にしかできない仕事を特定して、「オーナーへの提案やコンサルティング」などの、アウトソーシングできない仕事に集中させる仕組みづくりや、「やる気」アップの管理が重要です。
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マネジメントの必要性
売買の仕事に比べ、賃貸管理の仕事は特に労働集約的といえます。ただでさえ業務の幅が広く、さらにクセの強い入居者や、細かなことにまで首を突っ込むオーナーが介在すれば、板ばさみになった管理会社の担当者は、それに振り回されて仕事にならないということが日常化します。すると精神的に追い詰められ、会社や自分が今どこに向かっているのかわからなくなり、ただ真面目に仕事をしていることに不安を覚えるようになってしまうのです。年々、働き手が少なくなる傾向にありますから、辞められてしまうと、いくら募集をしてもよい労働力を確保することが難しくなります。
そこで、従業員の「やる気」を引き出し、いかに仕事を「自分ごと」に置き換えられるかをマネジメントする必要があります。 -
「方向性の共有」と「聞く力」
日常的に業務に追われると、徐々に近視眼的な発想になり、周りのことが見えなくなりがちです。いま一度、オーナーが行っている賃貸経営の背景を知ってもらい、それから管理会社の重要性などを伝えて役割の重要性を共有しましょう。近視眼的になると、仲間である会社すら敵に見えてしまうことがあります。そうならないためにも、自社(管理会社)が向いている方向性をしっかり共有し、従業員の重要性を伝えることも大切なマネジメントです。日常的にコミュニケーションをとっているからと、つい業務的な話を聞くことをおろそかにしがちですが、どんなに小さな会社でも、従業員に寄り添う形で意見を聞く時間をマメにとることが重要です。その場合、会社という日常から少し離れた状況、たとえばカフェなど場所を変えて話を聞くと、より本音を伝えてくれやすくなります。
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「目標設定」と「小さな達成感」の繰り返し
近視眼的になると、今やっている仕事と、自分の立ち位置のバランスがわからなくなります。仕事に忙殺されるほど、何のために、誰のためにこんなに頑張っているのか、頑張る必要があるのか、迷子になってしまいます。そうならないためにも、従業員のキャリアプランを考える必要があるのです。キャリアプランまで描くのは少し難易度が高いのであれば、まずはそれぞれの役割に見合った目標設定を一緒にしてはどうでしょうか。
ただし、上司が一方的に与えた目標設定では意味がありません。あくまで、それぞれが描く未来に向かって、それを達成するための手助けをするのがマネジメントです。たとえば「半年で設備トラブルの対処法を学ぶ」でもいいですし、意識が高い人であれば「自分の仕事の枠を超えた新規プロジェクトを任せる」でもよいでしょう。営業のように数字で評価ができない管理業務は、成果が可視化されずに褒められる機会も少ないのです。それではなかなか「やる気」も出ません。よって、まずは「小さな目標設定」と「達成基準」を作り、達成したら評価につながる仕組みを作るのです。 -
最初は小さなハードルから
どんなに仕事に自信がない人でも、目標をクリアできれば誰でも達成感を得ることができます。小さな目標達成であっても、繰り返すことで成功体験から「やる気」の作り方がわかり、自らを高める方法を生み出すことができるようになります。ただし、最初は小さなハードル(目標)にしないと失敗体験になってしまう可能性があります。その結果「仕事以外の無駄な作業を与えられた」というネガティブな考えに陥ってしまいます。
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おわりに