第53回 全国不動産会議 島根県大会 開催レポート
出雲より 日本の古き良き文化を発信!
~高齢社会、人口減少の中で「不動産業が担う役割」~
(公社)全日本不動産協会と(公社)不動産保証協会は、10月19日(木)、島根県民会館にて第53回全国不動産会議島根県大会を開催。全国から会員ら約1,300人が参加しました。
今大会のテーマは、「高齢社会、人口減少の中で『不動産業が担う役割』」。(公財)しまね文化振興財団理事長の藤岡大拙氏による記念講演や「日本版CCRCのためのスマートタウン」と題したシンポジウムが行われ、地域資源の活用やそれに伴う不動産業界の役割などの意見交換が行われました。
その後の交流会では、安来節などのアトラクションがあり、会員同士が交流を深めました。
【開会式 13:30~14:00】
最初に、木ノ内諭教育研修委員長の開会挨拶により、島根県大会が始まりました。司会は、フリーランスアナウンサーの山﨑瑞穂氏。冒頭の歓迎の挨拶では、木村勇治島根県本部長が「出雲地方では(旧暦の)10月は全国の神々が集まって会議を開く神在月と言っている。神々が集まる前に皆様がこちらに集まって今大会が開催されることは大変意義深い」と述べました。
続いて、原嶋和利理事長が壇上に立ち、「不動産業界は大きな変革期を迎えている。国の住宅政策の重要な課題である空き家問題については、既存住宅市場の活性化と合わせて、不動産業者が中心となって取り組まなければならない。また、不動産の流通を促進する税制改正に向けた要望活動も積極的に続けていく。さらに、10月から賃貸においてIT重説が始まったこともあり、情報通信技術がもたらす不動産市場への変化や民法改正への対応もしっかりと取り組んでいきたい」と語りました。
次に来賓代表として、石井啓一国土交通大臣代理の青木由行建設流通政策審議官、溝口善兵衛島根県知事、松浦正敬松江市長が挨拶した後、司会の山﨑氏が祝電を披露。最後に木村島根県本部長から原嶋理事長を通して、次回開催県である石川県の田井仁本部長に大会旗が引き渡されました。
【記念講演 14:10~15:20】
<テーマ> 出雲への誘い
~神話・古社寺・お城・自然など魅力いっぱいのWonderland~
<講師>藤岡大拙氏[(公財)しまね文化振興財団理事長、元島根女子短期大学学長]
(公財)しまね文化振興財団理事長の藤岡大拙氏が、出雲の神話や古社寺、城などについて講演しました。「宍道湖の夕日は格別である。単に夕日が山に沈む美しさだけでなく、背後に出雲が大和朝廷に敗れて服属せざるを得なかった『滅びの美学』が重なっている。その根底にあるものは、出雲が神々の国、神話の国だからである」と述べ、2017年度に「日が沈む聖地出雲」が日本遺産に認定されたことにも言及。さらに出雲が神々の国である理由や、出雲の地域性・人間性、神話、遺跡・出土品の多さなどについて、歴史の流れに合わせて解説しました。
シンポジウム 15:35~16:45
<テーマ>日本版CCRCのためのスマートタウン
~地域の活性化を育む、既存地域資源の活用~
「日本版CCRCのためのスマートタウン」をテーマに、調査研究発表が行われました。コーディネーターは国士舘大学理工学部教授の南泰裕氏。パネリストは、日本ホスピスホールディングス株式会社代表取締役社長の高橋正氏、株式会社ブルースタジオ専務取締役の大島芳彦氏、東北大学大学院工学研究科・工学部災害科学国際研究所地域・都市再生研究部門准教授の姥浦道生氏の3名。
まず、南氏が日本版CCRCの概要(右)を説明し、主要な3つのタイプを先駆的な事例とともに説明しました。さらに島根県雲南市の取り組みとして、鍛冶屋の町屋をリノベーションによってシェアオフィスにした事例や、佐賀県佐賀市の取り組みとして、コンテナが地域のコミュニティ施設に生まれ変わった事例などを紹介しました。
次に高橋氏が「輪島市における生涯活躍のまち(CCRC)づくり事業」について解説。公費助成等と公費事業を活用し、既存の建物を、サ高住や障害者グループホーム、子育て支援施設などにした「輪島KABULET(カブーレ)」事業を紹介しました。特徴は、社会福祉法人沸子園との連携および海外青年協力協会会員の参加、障害者総合支援事業を活用したこと。それにより「最終的に輪島市の住民が幸せに暮らせなければ、街の活性化はあり得ないという危機感で、持続力のあるプロジェクトを立ち上げられた」と高橋氏は力説しました。
続いて、大島氏が「リノベーションのまちづくりと次世代の地域福祉」をテーマに発表。「不動産の価値の本質は、地域社会の中でその資源をどう活用していくかである。地域の方々が当事者意識や誇りを持ち、『公』主導の大きなまちづくりから『民』主導の小さなまちづくりを積み上げていくことが大切である」と述べ、大島氏が実施しているリノベーションスクールで再生した団地や商店街の事例を紹介しました。
次に姥浦氏が「これからの“街の不動産屋さん”に求められる仮説的役割」(下図)をテーマに発表。「街の魅力を上げていくことが生活の質を上げて、不動産の価値の向上につながるので、街の魅力をどうつくっていくかが重要」と強調しました。
最後に「不動産業者に求められる役割」についてパネリストの意見が交換された後、南氏が「人の集まりは情報のネットワークにつながるので、それぞれの場所で鉱脈を掘り起こして新しい活動を展開していただきたい」とまとめました。
【閉会式 16:55~17:10】
閉会式は、次回の全国不動産会議石川県大会のPRビデオが流された後、田井仁石川県本部長による挨拶が行われました。「交流会の会場にはA(甘エビ)K(かに)B(ぶり)を配置しますので、来年はAKBに会いにぜひお越しください」と会場を沸かせました。
そして松永幸久全日・副理事長による大会宣言案の発表後、採択され、沢田光泰保証・教育研修委員長が閉会の挨拶をして、閉会式を締めくくりました。
≪大会宣言≫
一.良質な住宅ストック市場の形成による居住環境向上の推進
一.既存住宅流通市場の活性化のための諸施策の推進並びに税制の実現
一.所有者不明空き家等の有効活用に必要な法整備を含む環境の改善
【交流会 18:10~19:30】
交流会は、松江しんじ湖温泉駅から徒歩3分の距離にある「ホテル一畑」に会場が移されました。「ホテル一畑」の玄関前では、松江どう太鼓のダイナミックな演奏が披露され、参加者を出迎えました。
18時10分から始まった交流会では、最初に竹内謙二島根県本部実行委員長が「島根県は世界遺産の石見銀山をはじめ、国宝松江城や出雲大社など多くの文化遺産、自然に囲まれた地です。2日間ですが、島根県を大いに満喫して、楽しんでいただきたいと思います」と開会の挨拶をされました。
続いて「バンジマシテ」と、島根県で「こんばんは」と「こんにちは」の中間の挨拶を意味する掛け声で登壇した原嶋和利理事長は「皆様のおかげで記念講演、シンポジウム等が盛会のうちに終了することができました。(交流会は)皆様が主役です! おいしい料理とお酒で大いに楽しんでください」と挨拶をされました。その後、来賓を代表して溝口善兵衛島根県知事と長岡秀人出雲市長の挨拶の後、倉田康也中国地区協議会長が乾杯の音頭をとりました。
会場で最初に行われたアトラクションは、「安来節」。島根県安来発祥の民謡「安来節」に合わせて、ひょうきんな「どじょうすくい踊り」で会場が大いに盛り上がりました。
次に披露されたのは「石見神楽(オロチ)」の演舞。太鼓や笛のお囃子が響き渡るなか、数頭のオロチ(大蛇)がスサノオノミコトと大格闘を繰り広げました。鮮やかな刺繍で飾られた衣装やダイナミックな舞いの様子を、多くの方々がカメラに収め、見る人を魅了しました。
最後に木村勇治島根県本部本部長が閉会の辞を述べ、第53回全国不動産会議島根県大会が盛会のうちに終わりました。
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