賃貸管理ビジネス

月刊不動産2025年6月号掲載

”選ばれる管理会社“ になるための 受託ツールの作り方 
〜閑散期に見直す、体制の整え方〜

代表取締役 今井 基次(みらいずコンサルティング 株式会社)


Q

 管理事業を始めてから、少しずつ管理物件は増えているのですが、営業によりオーナーに伝える業務内容が異なり、属人的な体制になりすぎています。閑散期を機に管理体制を見直したいのですが、何かよい方法はありますでしょうか。

A※記事の内容は、掲載当時の法令・情報に基づいているため、最新法令・情報のご確認をお願いいたします。

  •  まずは自社の管理体制の見直しと再構築から始めましょう。その後、それらを可視化してデザインや管理委託契約書に落とし込むことで、整理がつきやすくなります。忙しい時期にはできないことなので、閑散期の今だからこそできる内容ではないでしょうか。

  • はじめに

     インフレによって物価が上がり続けるなかで、不動産管理会社が管理料を引き上げることには難しい現実があります。管理会社は、賃料を上げられなければ、コストばかりがかさみ、利益が圧迫されていく一方です。だからこそ、次の繁忙期に向けた準備として、閑散期を活用した「管理体制の見直し」と「受託ツールの整備」が重要になります。
     今回は、管理受託を強化するための管理体制の可視化と、受託ツール作りについてお話しします。

  • 管理体制の可視化

     まず取り組むべきは、「自社の管理体制を可視化する」ことです。まだ多くの管理会社が、業務の幅を曖昧にしたまま管理を引き受けています。その結果、交渉力の高いオーナーから言われるがままに動いてしまい「無料でやってしまっている業務」が増えがちです。これを防ぐために、まずは以下のような項目を文字情報として整理して、さらに「自社の強み」もしっかりと見直すことが必要です。

    1.やるべき業務/やらない業務の明確化
     コストのかかる入居者募集の範囲、緊急性があるような入居対応や設備故障、定期巡回や清掃など、対応可能な業務ほどついつい社員が過剰に動いてしまいがちです。自社でやるべき内容と、専門外として外注すべき業務を線引きしましょう。

    2.無料でやってしまっている内容の是正
     たとえば、夜間対応やオーナーからの個別要望への対応など、「いつの間にか無償対応」が定着しているケースも。これらを洗い出し、フィー化する(料金を発生させる)仕組みを整えることも、これを機に考え直しましょう。

    3.管理料やフィーの取り決め
     管理報酬がいくらで、どこまでが含まれるのかを明文化しましょう。管理委託契約書を見直すよい機会にもなります。また追加業務に対する別途フィーの存在も明確にします。

    4.自社の強みの洗い出し(3つ程度)
     他社との差別化要素を明確にすることは、管理受託の営業時に強力な武器になります。たとえば、「客付け力がどこよりも強い(ポータルや仲介会社との連携力)」「管理スタッフの対応品質が高い(入居者満足度が高い)」「地域密着で現場対応が早い(物件が近い)」など、どの会社にも強みは明確に存在しているのです。自社の良いところを社員全員で話し合うのもよいでしょう。

    5.管理メニューの取り決め
     オーナーのニーズは一様ではありません。「松・竹・梅」など段階的なメニューを設定し、必要に応じてステップアップしてもらうことで、顧客との関係性を深化させることができます。
     これらの情報を文字ベースで整理し、社内共有するだけでも、業務の効率性と収益性が改善されます。

  • デザインへの落とし込み (受託ツール)

     管理体制の可視化ができたら、それを「見える形」に落とし込むフェーズに入ります。いくら良い内容(管理体制)でも、顧客であるオーナーに伝わ
    らなければ意味がありません。だからこそ、「デザインの力」が重要です。ここで注意すべきポイントは、受託ツールの制作にあたり、しっかりと予算をとってプロに任せてデザインをしてもらうことです。「デザインのよさ=伝達能力」だと考えてください。ここで予算を削ると、これまでの内容構築が水の泡になります。
     制作に関しては、まずは「管理受託パンフレット」の作成をおすすめします。A4サイズ4~8ページ程度のボリュームが、営業時に使いやすく、必要な情報を的確に伝えるのに適しています。内容は、先に整理した業務範囲や管理メニュー、自社の強みなどを軸に構成し、視覚的にわかりやすいデザインを意識しましょう。
     次に、ホームページの管理ページを再構築することも検討してください。多くの管理会社のWebサイトでは「管理」に関する情報が薄く、信頼性を伝えるには不十分です。管理受託パンフレットと同様に、業務内容やフィー、管理メニュー、自社の強みをしっかりと掲載しましょう。
     また、ダイレクトメール(DM)も有効です。一度きりではなく、オーナーの課題に触れる内容を定期的に送ることで、継続的なアプローチが可能になります。
     閑散期こそ、体制を見直すチャンスです。業務の可視化とツールのビジュアル化を進めることで、次の管理受託に向けた武器を整えましょう。

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