賃貸仲介営業

月刊不動産2018年5月号掲載

自社ホームページのリニューアルと導線づくりで成果を上げる

宮下 一哉(株式会社船井総合研究所 不動産支援部 チーフ経営コンサルタント)


Q

 集客コストが売上に見合わなくなっています。当社では物件ポータルサイトに月間30万円をかけていますが、そこからの反響で成約になるのは月2件程度で、1成約当たり広告宣伝費が15万円となっている状況です。何か他の集客方法はないでしょうか?

A※記事の内容は、掲載当時の法令・情報に基づいているため、最新法令・情報のご確認をお願いいたします。

  • Answer

     賃貸物件の客付けでは、オーナー直の専任物件や管理物件を数多く品ぞろえし、自社ホームページを「地域密着型物件ポータルサイト」として開設・運営している会社が、費用対効果の合う商売ができています。

  • 繁忙期明けスグに「緊急ではない重要な課題」に着手

     このコラムを執筆させていただいてから、ちょうど1年が経ちました。しかし、わずか1年でも世の中の変化は速く、賃貸仲介ビジネスもどんどん進化していると感じます。IT重説などは急速に広まってきました。VRでの内見、AIでの物件問合せ対応などを本格導入する会社が増えており、導入期から「浸透期」に入ったように感じます。さらに今後は、電子署名や電子キーの活用が増えていくでしょうから、「賃貸仲介ビジネスのデジタル化」はますます加速していくことでしょう。また、10年前とは異なり、いろいろな業務をアウトソーシングできる会社が増えています。自社にとっての「本業」を見極めて注力し、周辺業務を外注してスリム化、高収益化していく会社も増えてくるかと思います。

     まさに今、過渡期にある賃貸仲介ビジネスでは、大きな改革が求められています。そして、繁忙期が終わってひと段落したこの時期は、変革すべき「緊急ではないけれど重要な課題」に着手するベストタイミングです。そういう課題がある中で大きなテーマの1つが売上・コスト・利益に直結する「集客」の見直しであり、現状で求められるのは「自社ホームページのリニューアル」だと思います。

  • 自社ホームページの反響成約率は、物件ポータルサイトの2倍

     冒頭の質問にもあるとおり、事実として、賃貸仲介での集客は以前と比較して簡単ではなくなっているのです。物件ポータルサイトに費用をかけてたくさんの物件を掲載するだけで反響がくる時代ではなくなっています。しかし、だからといって物件ポータルサイトでの集客が全然できないわけではありません。その「使い方」をしっかり考えることが重要になっています。自社ホームページへの導線づくりを「軸」としながら、物件ポータルサイトに掲載する自社独自物件への問合せでキッカケをつかみ、そこから来店・成約につなげていくことを心掛けましょう。

     たとえば、自社ホームページを「○○賃貸ナビ」という名称で運営し、自社商圏内でトップシェアとなる多くの物件をWeb掲載し、大きな成果を出している会社があります。インターネット反響からの成約の4~5割は自社ホームページのものとなっており、反響成約率はポータルサイトの倍以上となっています。

     そのホームページの大きな特徴は3つあります。「①商圏内最大の物件情報取扱数」「②(地域名+賃貸ナビ)というわかりやすい名称」「③トップページでのイメージ地図上検索」で、わかりやすく使いやすいのが特徴です。さらに自社管理の物件看板、営業店舗・営業車・名刺などにも「自社ホームページ名(○○賃貸ナビ)」をメインで記載することで認知度アップを図り、“自社ホームページへの導線づくり”をしっかり行っています。

     同様のホームページおよび「3つの特徴」をもっている会社は他地域にもあります。このような賃貸仲介会社が全国各地に増えており、物件ポータルサイトと組み合わせて活用することで、競合他社と差別化され、大きな成果を上げています。

  • スマホ画面対応がメイン、PC画面対応はサブ

     当然ながら、上記の事例ではスマートフォンでも検索対応をしっかり行っています。スマートフォンの画面で見やすく使いやすいサイトになっていないと、せっかくアクセスしても物件検索・閲覧してもらえません。今や検索の6~7割はスマートフォンからであるため、この対応ができていないと物件の問合せ数が少なくなってしまいます。また、スマートフォン対応を行っているホームページでないと、Googleでの検索の際に上位に表示されません。この視点を絶対に忘れずに、自社ホームページのリニューアルを行ってみてください。

  • Point

    • 繁忙期明けてスグ(4~5月)が、「緊急ではないけれど重要な課題」に着手するベストタイミング。
    • 自社ホームページへの導線づくりを「軸」としてインターネット集客導線を組み立てる。
    • 物件ポータルサイトには「自社独自物件」を掲載して、他社との競争なしに問合せを獲得する。
    • 自社ホームページの反響成約率は、物件ポータルサイトの2倍以上が目安。
    • スマートフォンでの検索がメインであり、見やすい画面となるように開設する。
page top
閉じる