賃貸仲介営業

月刊不動産2018年11月号掲載

繁忙期前に向けて仲介売上を増やすためにすべきこと

宮下 一哉(株式会社船井総合研究所 不動産支援部 チーフ経営コンサルタント)


Q

 今年の賃貸仲介売上は、3・4月を最大値として右肩下がりで、売上目標を達成できた月がありません。広告宣伝費を増やしても思うような集客が得られず、売上につながりません。このまま年明けの繁忙期に入ったら、最悪の事態になりそうですが、何か解決の方法はないでしょうか?

A※記事の内容は、掲載当時の法令・情報に基づいているため、最新法令・情報のご確認をお願いいたします。

  • Answer

     解決方法は「仕入れ」強化の一択であり、そのために、「仕入れができる体制」をつくってください。広告宣伝ではなく、そこに「先行投資」をすることが根本的な問題の解決につながり、成長軌道への打開策になります。

  • 業績が伸びている会社には、どんな秘密があるのか?

     結論からお伝えします。今、最も強化すべきは「仕入れ」です。インターネット対策でもなく、歩合給制度でもなく、圧倒的に「仕入れ」です。それを証拠に、今、賃貸仲介ビジネスで業績を伸ばしている会社は2種類あって、①「管理物件」が市内・区内などで最も多い会社、②「専任物件」が市内・区内などで最も多い会社です。仲介会社向け・エンドユーザー向けの物件ポータルサイトに掲載されている物件から情報を引っ張ってきて客付けをしている会社は、業績を落としているケースが多いと思います。ご質問をいただいた会社では、おそらくはそのような物件情報の取扱いが主体かと思われますが、いかがでしょうか?

     管理物件・専任物件は、要するに「ユニーク物件(=自社独自の取扱い物件)」ですから集客につながります。ユニーク物件という言葉は、このコラムでは当たり前になってきていますが、物件ポータルサイトで最も効率的に問合せを獲得するために必須となる物件であり、ここが弱い会社では物件掲載費用ばかりがかさんで、肝心の反響⇒来店⇒成約が得られずに、「経費>売上」で赤字になってしまいます。ですから、今後も賃貸仲介ビジネスをやっていくのであれば、ユニーク物件の品揃え強化が必須であり、そのための「仕入れ」を強化できる体制をつくることが必須となります。このコラムでは毎回のように「仕入れ、仕入れ!」とお伝えしていますが、何回でもお伝えしたいです。本当に大事なのです。

  • 店長・営業担当者が“本来の仕事”に没頭できているのか?

     このコラムは今回が10回目の連載となりましたが、仕入れ強化と並んで一貫してお伝えしてきたことは「インターネット時代の分業体制づくり」です。情報があふれる時代のなかで「やり方」に着目する経営者の方は少なくないですが、それよりも大事なことは「やる体制」をいかにつくるかであり、これは経営者の方にしかできない仕事です。「WEB戦略室」と呼ばれるインターネット集客に特化した部門を設置し、仲介店舗の営業担当者が“本来の営業の仕事”に没頭することができているかどうかが、勝負の分かれ目になります。仲介業務の8割方がインターネット上で行われる時代ですから、当然といえば当然で、業績を伸ばしている不動産会社の「常識」になっています。

     では、店長・営業担当者の“本来の仕事”とは何でしょうか。店長の仕事は「物件調達(仕入れ)」「マネジメント」であり、営業担当者の仕事は「電話物調(仕入れ)」「接客・追客」です。これをできなくしているのが、インターネット時代の大きな業務である「インターネットでの物件広告」「メール対応」業務です。これらに加えて「元付け業者への電話物件確認」を加えた3大業務を任せることができる部門(=WEB戦略室)を設置することが重要です。経営戦略は「事業戦略×人財戦略」の両輪で回っており、両方を同時に兼ね備えなければ「成果」につながりません。人財戦略の柱の1つは「組織づくり」であり、最も強化したい施策に「専任」を置いてはじめて「実行力」が備わります。退職者が出やすく、残った社員に業務が集中しがちで“ブラック化”しやすくなっている昨今において、「現体制・現人員で新しいことをやろう!」と言っても、現場は疲弊するだけで動きません。本来やるべきことをわかっているが、目の前の業務に追われて実行できないのです。

  • 勝てる体制で勝負する

     仕入れを強化するために配置すべき専任部門は2つ。前述の「W E B 戦略室」と「仕入れ兼空室対策チーム」です(チームといっても最初は1名から始まります)。自社と付き合いのないオーナーにアプローチし、仕入れに続いて空室対策を提案できる専任者を配置することが大事です。“他社管理”の物件が多くなっているなかで、今、仕入れることができるのは、長く空いている物件であることが多いです。ですから、「空室対策」を提案する必要がありますが、仲介会社・仲介部門の方にとって、空室対策は重い業務ですよね。いわば、“右から左”で商売をするのが仲介ビジネスですから、そんな手離れの悪い業務を嫌う方が多いかもしれません。しかし、今までのやり方・仕組みが通用しなくなっているから成果が出なくなっているのであって、何か対策を取って実行しなくてはいけません。

     空室対策の第一歩としては、2018年7月号の本コラムでお伝えした「ゼロ賃貸ソリューション」を使っていただければ成果が出ると思います。弊社では、全国各地の不動産会社さんで、経営者・幹部、現場リーダー、個々のスタッフの方々と一緒に考えて一緒に成果を出しており、このコーナーでも実際に多くの会社で成果が出ていることしかお伝えしていません。自己流でない方法で丸ごと取り入れて実施していただければ、これまでなかった成果につながると思います。繁忙期まであと2か月。そしてその先もにらんで、ぜひ実行していただければ幸いです。

  • Point

    • ユニーク物件がなければ集客すらできない現在の仲介ビジネスでは「仕入れ」が最も大事。
    • 最も強化したい取組みを実行するには、「専任者」を配置した体制づくりである。
    • 体制づくりができるのは経営者だけであり、体制づくりが経営者の仕事。
    • 初期費用にお得感があるゼロ賃貸物件は、お客のニーズが高いうえに、簡単につくりやすい。
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