賃貸仲介営業

月刊不動産2019年1月号掲載

繁忙期、成果を出すために必ずすべきこと

宮下 一哉(株式会社船井総合研究所)


Q

当社では、こちらのコラムを参考にしていろいろと取組みをしてきた結果、年末くらいから反響数・来店数が増えており、繁忙期への手応えを感じています。この手応えを確実に「成果」につなげていくために、繁忙期の真っただなかでやっておくべきことはありますか?

A※記事の内容は、掲載当時の法令・情報に基づいているため、最新法令・情報のご確認をお願いいたします。

  •  営業担当者の商談時間を最大化するために、「店内の連携体制を整える」こと。そして繁忙期後をにらみ、今しかできない「準備」をしておくこと。繁忙期中は、そのような指示を出すことが重要です。

  • 営業スタッフ1人あたりの新規来店対応数を設定

     私が所属する船井総研が賃貸仲介店舗のコンサルティングをする際、営業スタッフ1人あたり、「通常期は月間25組前後の新規来店対応、繁忙期は月間35組前後の新規来店対応」を目標にすることを伝えています(通常期で50%の新規来店成約率、繁忙期で65%の成約率となるのが平均的指標です)。
     繁忙期は通常期の1.3~1.5倍くらいの新規来店数に対応し、契約数では倍近くの件数をこなすことになります。この際にネックになるのが「(1)契約関連書類作成」です。

  • 営業スタッフの動きを止めない環境づくり

     一般的に、営業スタッフは事務的な仕事が苦手な方が多く、契約関連書類の作成を後回しにしがちです。やらないといけないという意識は常に頭の中にありますが、放っておくとただでさえ苦手な事務仕事がどんどんたまっていき、それが原因で営業スタッフの動きが遅くなります。結果として、成果が上がらず、成約率が落ちてしまいます。解決法は、ためずに毎日少しずつ処理していけばよいだけなのですが、なぜか理屈でなく、なかなかそうはいかないようです。ですから繁忙期中は、以下のいずれかの方法で事務作業をしていくしかありません。

    ①店長が一手に引き受けてこなしていく
    ②専任スタッフを配置してこなしていく
    ③粘り強い行動管理で毎日1つずつ処理させていく

     営業スタッフの自主性に任せていたら売上が落ち、それを個々の責任として指摘しても意味がないため、事前に対処して、「営業スタッフの動きを止めない環境づくり」をするほかありません。
     同様のことは、「(2)反響メール対応」「(3)WEBサイトへの掲載物件情報メンテナンス」にもいえます。この(1)(2)(3)の3つの事務作業はオバケみたいなもので、実際に実施時間を取られているわけでもないのに、いつも意識として恐怖に近いものを与え、営業スタッフの動きを止めるため、早めに取り除いておくことが必要です。

  • 営業に営業をさせるためのWEB戦略室

     WEB戦略室(図表1)の活動は「反響数&来店数の目標達成」を目的としています。物元業者から物件を仕入れて、WEB掲載することが中心の業務ですが、経験値が増していくと「反響メール対応」「空室物件の写真撮影」も業務範囲になっていきます(図表2)。いずれの業務も営業スタッフに任せると“中途半端”になるどころか、その業務の存在が要因となって営業活動自体を弱くしていきますから、WEB戦略室の主力業務にしていかなくてはいけません。要するに、WEB戦略室は反響数&来店数アップのためだけの部署ではなく、営業力&成約件数アップのための部署でもあるわけです。つまり、インターネット時代の賃貸仲介は、「営業スタッフ・事務スタッフ・WEB専任スタッフ」をしっかり配置させて、“勝てる体制で勝ちにいく”ことが不可欠で、今までの「営業担当者数×成約件数」では勝てなくなっています。賃貸仲介が個人戦からチーム戦に変わったインターネット時代では、「勝てる体制」
    を作れないならば賃貸仲介からは撤退して、賃貸管理・売買仲介に集中特化することをおススメいたします。実際、ある不動産会社では、賃貸管理・売買仲介に特化した結果、管理戸数や全体売上は以前の4倍近くまで増やすことができています。

     

     

     

  • 繁忙期中にしかできない2つのこと

     最後に、繁忙期中にしかできない2つのことをお伝えします。1つはごくシンプルなことで、「空室物件のWEB掲載件数を減少させずに繁忙期を終える」ということです。そうすると、周りの多くの会社で掲載数が少なくなるなかで、自社だけが相対的に掲載数が多くなるため、繁忙期以降の戦いを優位に進めることができるようになります。最大のポイントは仕入れを減らさないこと。ここにこだわって進めれば、後日、その効果が表れると思います。
     もう1つは、繁忙期中に見えてくる「問題点」「改善すべきこと」「やるべきと感じたこと」を日々箇条書きにしてまとめることです。繁忙期中に見えてくるそれらの内容は、自社にとっての「根本的課題」が関連していますから、繁忙期が終わった4~5月から、次の繁忙期が始まる11月までの“約半年間”で根本的な解決をしなければなりません。たいていの場合、「喉元過ぎれば熱さを忘れる」といった感じで、繁忙期中に起こった出来事を忘れ、次の繁忙期で思い出して後悔することを繰り返すケースが多いです。そういう会社は、売上・来店数・管理戸数が横ばいか微減するだけで成長できず、5年後も10年後も同じメンバーで同じことを繰り返し、年齢だけ重ねて体力が衰えていくということになってしまいます。ちょっと、ゾッとしますよね。ぜひこの瞬間から変えていきましょう。

今回のポイント

●営業が営業に専念できる環境を作ることが、繁忙期に最大成果を上げるコツ。
●勝てる体制で勝ちにいくのがインターネット時代に適応した「チーム戦」での戦い。
●空室物件のWEB掲載件数を減少させずに繁忙期を終えると、その後の戦いが有利になる。
●繁忙期中に見えてきた課題や問題点は箇条書きにしておいて、閑散期の約半年間で解決する。それができないと成長のできない万年横ばい企業になってしまう。

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