売買仲介営業

月刊不動産2021年1月号掲載

空き家再生(リフォーム付き中古戸建て)ビジネスの魅力

小寺 伸幸(株式会社船井総合研究所 不動産支援部)


Q

最近、よく見聞きする空き家ビジネスは実際うまくいくのですか?

A※記事の内容は、掲載当時の法令・情報に基づいているため、最新法令・情報のご確認をお願いいたします。

  • 回答

     弊社にも最近よくお問合せがあります。「うまくいく」の定義は会社ごとに認識が異なるため回答が難しいのですが、質問を受けた際には、「人口30万未満の地方エリアにおいては魅力的なビジネスです」とお伝えしています。

  • 1. 空き家数の推移とビジネスとしての魅力

     空き家数は年々増加しており、2018年度までに空き家ストック数は約849万戸となっています(図表1)。今後も増加傾向であることは変わらず、空き家数が2028年度には1,400万戸を超える可能性が高いと予測されています。これを単純に平均化すると、毎年約55万戸増加する計算になります。また、空き家の特徴としては築30年以上の戸建てが多く、築年数が古いため、中古流通市場においては売却されにくい不動産であり、空き家として市場にストックされている状況です。


     こういった理由から、地方の戸建て中心に空き家のストック数は増加しており、ここにビジネスチャンスが生まれていると思います。具体的に地方の戸建ての状況と、ビジネスとしての魅力をまとめたものが下記の図表2です。

  • 2. 空き家再生(リフォーム済み中古戸建て)ビジネスのポテンシャル

     空き家再生ビジネスのメインターゲットは、借家世帯で世帯年収200万~500万円の持ち家志向の方です。また、これまでは、どうしても新築でないと嫌だといった方が多数でしたが、昨今では新築住宅でないと嫌だという方は年々減少しており、約50%の方は中古住宅でもよい、特にこだわらないとしています。その理由の1つは、可処分所得が上がらず、住宅にかけられる費用を抑えたいというニーズだと思います。一方、空き家再生の戸建てを買った場合、住宅ローンの支払額が、毎月支払っている家賃と同等かそれ以下になる場合が多いため、購入される方が増加しています。新築住宅と比べて割安で、家賃並み以下の値段でリフォーム済み中古戸建てを購入できるのであれば、メインターゲットの客層にとっては魅力的だといえるでしょう。

  • 3. 空き家再生ビジネスを本格的に始める前に押さえておきたいこと

     では、どのような手段で毎月安定的に相続・空き家の案件獲得するのかを検討しましょう。まずは以前、2020年1月号に書きました相続案件の取扱いを増やす方法の記事をご覧ください。
     つぎに販売価格とリフォーム費用を勘案して、逆算して仕入れできる体制を整えましょう。販売価格についてはエリアごとの成約価格を過去3年間ほど確認してもらうと競合他社の価格ラインナップがわかるため、過去の成約事例から販売価格の分析をしてみてください。
     加えて、リフォーム費用については部位別のリフォーム箇所の積算ができる状態にしておく必要があります。築年数が古い物件において、建物の躯体劣化状況や雨漏り、害虫の有無、リフォームの可否等を床下から屋根裏までリフォーム協力会社と確認することで、仕入れミスが軽減されます。また、引渡し後のトラブルを最小化するために、隣地との境界を明確にしたり地盤によって傾きが気になる物件においては地盤調査を実施します。補修が必要な場合は、買取金額から土台、基礎、床束等の補修費を引いた価格で提案することが重要です。以上のような内容は、少なくとも空き家再生ビジネスをスタートさせる前にぜひ押さえてください。
     以上の内容を確認いただいた多くの方は、相続・空き家の反響獲得と買取りまでのリフォーム対応がワンストップで対応できないとお考えでしょう。そのため、地方の空き家ビジネスはまだまだブルーオーシャンで、これから空き家のストック数は年々増加していく市場であるため、魅力的であるということです。

  • ポイント

    ●空き家数は年々増加傾向で、特に築30年以上の戸建ては、古く売却されにくい状態で市場に流通しているため、空き家再生(リフォーム付き中古戸建て)ビジネスは魅力的である。
    ●空き家再生ビジネスのメインターゲットを借家世帯の年収200万~500万円とし、販売額を1,500万円以内に設定して、月々の住宅ローンの支払いを家賃並み以下にする。
    ●リフォーム必要箇所の見落とし、積算ミスで販売利益が少なくならないよう、また引渡し後にトラブルにならないよう、リフォーム必要箇所のチェックと、部位別にリフォームの積算ができる体制を整える。

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