売買仲介営業

月刊不動産2020年3月号掲載

業績を伸ばし持続的な成長をするための重点的な取組み

小寺 伸幸(株式会社船井総合研究所 不動産支援部 グループマネージャー シニア経営コンサルタント)


Q

昨年と比べて業績が伸び悩んでいます。昨年は集客にも苦戦気味で、今後どのようなことに重点的に取り組んでいけばいいのか悩んでいます。

A※記事の内容は、掲載当時の法令・情報に基づいているため、最新法令・情報のご確認をお願いいたします。

  • 回答

     集客数は増税の影響もありますが、継続的に続く課題としては、人口・世帯数減少により、集客数や市場も縮小傾向であり、地方の商圏ほど顕著にその影響が出てくるでしょう。持続的な成長戦略の1つとして外せないのは「既存事業における自社商勢圏内の売上高(件数)シェアアップをすること」と「1拠点で多角事業化を図ること」だと思います。

  • 1. マーケット縮小の中、持続的な成長戦略を描くために大切なこと

     住宅不動産業の市況としては人口減少、世帯数の減少などの影響により、既存事業においては自社商勢圏内の売上高(件数)シェアを上げて一番化戦略を図り、高収益化させる必要性が一層重要になってくると思います。加えて、既存事業の多くのマーケットは縮小傾向にあるため、既存事業に絞って成長戦略を進めていくことは多くの企業にとって困難になってくると思われますので、新規業態・新規事業の種まきを同時に行っていく必要が出てくるでしょう。
     新規業態・新規事業のビジネスモデルにおいては、「創る」よりも「選択する」という視点が重要です。自社で創るとなると、時間とコストが多くの場合かかります。ビジネスとして走り出したときには既に他社がやっていたり、マネをされて他社と差別化できず収益化されなかったりなどよく聞く話です。そのため、うまくいっているビジネスを発見し、自社でマネして始めてみるという対応スピードに価値があり、重要です。 また新規業態・新規事業の選択は、自社が行っている事業の狭間にある業態の攻略が狙い目です(図1)。新規業態・新規事業のビジネスをスタートさせるためには既存事業を高収益化させ、その収益の一部を積極的に投資に回していくことが重要だと思います。

  • 2. 今後重点的に取り組むべき重要事項とは

     では何に投資をして、何を重点的に取り組んでいけばいいのでしょうか。具体的に3つの内容をピックアップしました。

    ①採用&育成への積極投資
     人口減少は進み、当然ながら労働者人口も減少していくため「人手不足」の課題は継続します。ただ、住宅不動産業において会社の成長力の源泉は「人財」であることは変わらないため、採用力がある会社がより業績を伸ばしやすくなると思います。一方、人財の流動性はますます高まるため、 育成&定着の重要性が増していきます。社員に定着してもらえる環境づくりをどのようにしていくのか、これまで以上に検討する必要があります。

    ②集客の強化を図る
     業界的に昨年対比で集客数を比較してみると20%ほど減少しているそうです。自社の社有物件が少ない、新築取扱い物件が多い、かつポータル依存している会社では特に集客数が大きく減少している傾向にあります。今後はより一層、不動産の仕入れを強化し、自社サイトなどで集客できる環境づくりを向上させる必要があると思います。

    ③多店舗化よりも多角事業化を図る
     人の採用や出店コスト、物理的な距離が離れていることによるマネジメント難などの理由により、まずは1拠点において既存事業の自社商勢圏内の売上高(件数)シェアアップと、多角事業化により業績の最大化を図ることが重要になります。具体的な内容は上述したとおりですが、既存事業の業績アップのイメージと多角事業化による業績アップのイメージは図2を参考にしてください。2020年は56年ぶりにオリンピックが開催されるなど経済も安定しているこの機に、今後5~10年において持続的に成長するための仕掛けを検討してみてはいかがでしょうか。

今回のポイント

●1拠点当たりにおける既存事業の自社商勢圏内の売上高(件数)シェアアップを図り、高収益化に努めることが重要。売上拡大よりも営業利益を意識する。
●新規業態・新規事業においては「創る」よりも「選択」し、うまくいっている会社の取組み事項をそのままマネることから始める。新規業態・新規事業の選択は、自社が行っている事業の狭間にある業態の攻略を狙う。
●人財の採用&育成&定着に強い会社が今後成長し続けるため、人に投資を行う。
●集客の強化をより一層進める。

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