法律相談

月刊不動産2017年4月号掲載

個人情報保護法の改正

渡辺 晋(山下・渡辺法律事務所 弁護士)


Q

 個人情報保護法が改正され、施行されると聞きました。どのような点が改正され、いつ施行されるのでしょうか。

A※記事の内容は、掲載当時の法令・情報に基づいているため、最新法令・情報のご確認をお願いいたします。

  • 1. 5月30日より全面施行

     個人情報保護法の主な改正内容は、①5,000件ルールの撤廃、②個人情報の定義の明確化、③個人データ第三者提供のルール拡充、④個人情報保護委員会の新設です。改正法は、平成29年5月30日に全面施行されます。

  • 2. 個人情報保護法の改正

     コンピュータやネットワークを利用して、大量の個人情報が処理される時代が到来しており、デジタル社会が加速度的に進展しています。しかし、デジタル社会では、いったん個人情報が本人の手から離れると、流布拡散されて歯止めがきかなくなるおそれがあります。現に個人情報の漏洩や不正利用は後を絶ちません。

     そのような状況を踏まえ、平成27年9月に、個人情報保護法が改正されました。改正法のうち、個人情報保護委員会に関する部分は、既に平成28年1月1日に施行されており、その他の部分は、平成29年5月30日に施行されます。

  • 3. 改正内容

    ① 5,000件ルールの撤廃

     改正前は、個人情報の取扱い数(オンラインによって利用できる個人情報を含む)が5,000以下の事業者には個人情報保護法が適用されませんでした(5,000件ルール)。改正によって、5,000件ルールが撤廃されます。これまでレインズを利用していない小規模の不動産業者には個人情報保護法は不適用でしたが、個人情報データベース等(特定の個人情報が検索可能な状態になるよう体系的に構成されたもの)を営業に使っていれば、個人情報取扱事業者となり、個人情報保護法の適用を受けます。たとえば、個人情報の安全管理が義務づけられ、紙の顧客台帳はカギのかかる引き出しで保管する、パソコン上の顧客台帳にはパスワードを設定するなどの措置が求められることになります。

    ② 個人情報の定義の明確化

     改正法では、個人情報が細かく定義され、身体的特徴等が個人情報に含まれることが明確にされました。防犯カメラに写される人の外貌も、個人情報に含まれます。

     また、本人の人種、信条、病歴など不当な差別や偏見が生じる可能性のある個人情報について、要配慮個人情報という新たな概念が設けられました。要配慮個人情報については、個人情報を取得するには、原則として本人同意を得なければなりません。

    ③ 個人データの第三者提供のルール拡充

     個人データの第三者提供については、まず、オプトアウトの取扱いが変わります。個人データの第三者提供は原則禁止であるところ、オプトアウトは、個人データを第三者に提供するためにとる手続きであり、(1)本人から求めがあれば個人データの第三者提供を停止すること、(2)あらかじめ所定の事項すべてを本人に通知し、または本人が容易に知り得る状態に置いていること、という2つを満たす場合には第三者提供が可能になるという仕組みです。今回の改正によってオプトアウトを利用するためには、個人情報保護委員会への届け出が必要となり(注)、個人情報保護委員会によってその内容が公表されます。要配慮個人情報については、オプトアウトの手続きによる第三者提供は禁止されます。

     次に、いわゆる名簿屋問題が社会問題となっていることから、これに対する対策が講じられました。事業者が第三者に個人データを提供するには、提供年月日や提供先の氏名等の記録を作成・保存しなければならず、第三者から個人データの提供を受けるにも、提供者の氏名、個人データの取得経緯を確認したうえ、その内容の記録を作成し、一定期間保存することが義務づけられます。

     加えて、個人情報データベース等を不正な利益を図る目的で第三者に提供し、または盗用する行為について、「個人情報データベース提供罪」という犯罪として、処罰の対象とされました。

    ④ 個人情報保護委員会の創設

     個人情報の保護のための独立した機関として、個人情報保護委員会が創設されました。個人情報保護委員会は、特定個人情報保護委員会を改組した内閣府の外局であり、平成28年1月1日に、個人情報保護法の所管が、消費者庁から個人情報保護委員会に移っています。事業者への監督は、これまで各事業を所管していた主務大臣が行っていましたが、一元化され、個人情報保護委員会に移管されました。

  • 4. 不動産業者としての取組み

     不動産業は、消費者の氏名、住所、物件情報、成約情報など、様々な個人情報を取り扱う業務です。なかでも、個人情報を第三者に提供することは、営業活動や業者間の情報交換などの場面で重要な意味をもちますが、他方で個人情報保護法の観点からは、法令遵守のため、細心の注意を払う必要があります。

     平成28年11月30日には個人情報の保護に関する法律についてのガイドライン(通則編および第三者提供時の確認・記録義務編)が公表されています。個人情報保護法の遵守は、不動産業者にとって信用の根幹であり、法改正を十分に理解したうえで、ガイドラインを参考にするなどして、法令遵守のための体制を整え、営業活動を行わなければなりません。

    民間事業者に対する監督体制

     

    (注) 主な対象者は名簿業者となるため、宅建業者がオプトアウトを利用することは望ましくありません。

  • Point

    • 個人情報データベース等を事業に利用していれば、レインズを利用していない小規模の不動産業者であっても、個人情報保護法の規制対象になる。
    • 要配慮個人情報という新たな概念が設けられ、厳格な取扱いが求められる。
    • 個人データの第三者提供を行ったとき、あるいは、第三者提供を受けたとき、確認と記録の作成等が義務づけられる。

     

    ※個人情報保護質問ダイヤル:03-6457-9849(受付時間:土日祝日および年末年始除く 9:30 ~ 17:30)

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