賃貸相談

月刊不動産2006年5月号掲載

アスベストや耐震診断の重要事項説明

弁護士 江口 正夫(海谷・江口法律事務所)


Q

この度、建物のアスベスト使用や耐震診断について重要事項として説明することが義務付けられたと聞きました。何をどの程度説明しなければならないのでしょうか。

A※記事の内容は、掲載当時の法令・情報に基づいているため、最新法令・情報のご確認をお願いいたします。

  • 1. 宅地建物取引業法施行規則の一部を改正する省令

     最近のアスベスト被害や耐震構造計算偽装問題等を踏まえて、宅地建物取引業法35条1項12号の規定に基づく宅地建物取引業法施行規則16条の4の2についての改正が行われました。同規則の改正は平成18年3月13日に公布され、平成18年4月24日をもって施行されました。
     今回の改正は、重要事項説明の追加として、A:アスベストについては、建物について、石綿の使用の有無の調査の結果が記録されているときはその内容を説明し、B:耐震性については、いわゆる旧耐震基準に基づいて建築された建物について一定の者が行った耐震診断がある場合にはその内容を説明しなければならないというものです。
     いずれの説明も、建物の売買のみならず、賃貸の媒介等の場合にも適用される点に注意が必要です。

    2. アスベスト調査に係る重要事項説明について

    (1) 説明の対象となる建物
     建物の売買又は賃貸借の媒介等を行う場合のすべての建物が対象となります。この点が後述の耐震診断に係る重要事項説明の場合とは異なりますので注意してください。

    (2) アスベスト調査記録に関する調査及び説明事項
     宅地建物取引業者は、売主や貸主に問い合わせた結果、アスベストに関して調査したことがないということであれば、その旨を説明すれば足ります。今回の改正は、石綿の使用の有無の調査を宅地建物取引業者自らが実施することを義務付けるものではないからです。

     調査記録がある場合には、A:調査の実施機関、B:調査の範囲、C:調査方法、D:調査年月日、E:石綿の使用の有無、F:石綿の使用の箇所や状態等について説明することが必要です。結局のところ、宅地建物取引業者の義務としては、A:石綿の使用の有無に関する調査記録の存否の調査・説明義務と、B:調査記録が存する場合のその内容の説明義務の2つがあることになります。

    3. 耐震診断に係る重要事項説明について

    (1) 説明の対象となる建物
     耐震診断に係る重要事項説明の場合にはアスベスト調査に係る重要事項説明の場合とは異なり、すべての建物が対象となっているわけではありません。いわゆる旧耐震基準に基づき建築された建物がその対象となります。具体的には、建築確認済証の交付年月日が昭和56年5月31日以前の建物がこれに該当します。

     建築確認済証等がない場合には、建物の表題登記をもとに判断し、居住用建物で区分所有でないものは表題登記日が昭和56年12月31日以前の建物が対象となります。区分所有建物や事業用建物は表題登記日が昭和58年5月31日以前のものが対象となります。家屋課税台帳に建築年月日の記載がある場合も同様に判断されることになります。

    (2) 耐震診断に関する調査・説明事項
     耐震診断に関する調査も、アスベストに関する調査と同様に、A:耐震診断記録があるか否かの調査・説明義務と、B:耐震診断記録がある場合にはその内容についての調査・説明義務の2つの義務があります。

     ただし、耐震診断の記録の場合には、上記のアスベストの調査結果の記録とは異なり、A:建築基準法77条の21第1項に規定する「指定確認検査機関」、 B:建築士法2条1項に規定する「建築士」、C:住宅の品質確保の促進等に関する法律5条1項に規定する「登録住宅性能評価機関」、D:「地方公共団体」の4者のいずれかが、「建築物の耐震改修の促進に関する法律」4条1項に規定する基本方針のうち同条2項3号の技術上の指針となるべき事項に基づいてなされた耐震診断に限ります。アスベストに関する調査記録はだれが作成した者であるかについて格別の制限は規定されていませんが、耐震診断の場合は上記の4者の行ったものに限定されている点に注意してください。

     この説明義務については、売主及び所有者に耐震診断記録の有無を照会し、必要に応じて管理組合及び管理業者にも問い合わせた上で、存在しないことが確認された場合は、その照会をもって調査義務は果たしたことになります。

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