賃貸管理ビジネス
月刊不動産2022年2月号掲載
4つの質問でオーナーの課題解決を行う
今井 基次(株式会社ideaman 代表取締役)
Q
社員の管理受託営業のスキルが以前より上がってきたのですが、オーナーに対して一方的に話をしてしまうことが多く、もう一歩先の課題解決まで至りません。もう少し「聞く」ことを意識するようにと言っても、あまり結果が変わりません。何かアドバイスをいただけますでしょうか。
A※記事の内容は、掲載当時の法令・情報に基づいているため、最新法令・情報のご確認をお願いいたします。
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回答
一般的に価格が安いものを販売するときには、商品の説明をして「話して伝える」ことが重要とされていますが、より大きな価格などの販売や提案の場合は「聞いて理解する」ことが大切です。「管理受託」や「大型リフォーム提案」の場合、積極的に聞く姿勢を取り入れて、物事の本質を捉えた提案ができるように心がけましょう。
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1. 一方的な営業トークは、正しいのか
管理受託戦略の中でも、営業マンの育成には時間を要します。なんといっても、相手は地主や投資家などのいわゆる「資産家」であり「経営者」です。知識や経験に長けている年長者に対して経験値の低い営業マンが一方的に話をしても、なかなか話を聞いてもらえません。しかしながら、真正面から自社のサービスを一方的に説明に終始する営業マンが非常に多いのです。たとえば、数万円程度の羽毛布団を販売するのであれば、上手なプレゼンテーションと商品の魅力を伝えれば大量に販売をすることができます。しかし、アパートの管理受託を、同様に説明だけで伝えるには限界がありますし、何よりもオーナーによって課題はケースバイケースなので、響くポイントが人により大きく異なるのです。
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2. 人は自分の言葉に納得したい
人に説得されて購入するよりも、人は自分が納得したものを買いたいものです。実際に車を買うときに、営業マンにゴリ押しされて買いたいと思うでしょうか。誰もがみな、利用シーンを想定して自分にあった車を欲しいと思うのです。営業マンとしても、課題解決を提案しながら、顧客に対しての質問を通じて、必要と思わせる技術が必要なのです。
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3. 売りたいときほど聞く
質問事項を考えるにあたり、下記の4つの種類に区切ると頭が整理されます。
ここでは、自動車販売をモデルに質問例を記載してみますので、顧客のゴールに合った質問を考えてみましょう。ポイントは、皆さんが解決策を伝えるのではなく、顧客からその答えを引き出すための質問をつなぎ合わせていくことです。ゴールから逆算して導き出すのも良い方法です。<状況質問> Situation
現在の顧客の状況を確認する質問です。通常の営業のシーンでも、よく使われます。
(例)
■現在どのような車に乗っていますか?
■どのような車をご希望ですか?
■主にどんな用途に使う予定ですか?
■通常、お車に乗る人数は何人ですか?<問題質問> Problem
顧客が保有している問題点を浮き彫りにするための質問です。ここでは顧客のなかに漠然と眠っている問題点を徐々に膨らませる効果があります。
(例)
■今お使いの車で何か問題はありましたか?
■今お使いの車は故障が多かったのではありませんか?
■今まで車はあまり使われていなかったとのことですが、どうしてですか?
■お使いの車はハンドリングが重くありませんでしたか?<示唆質問> Implication
顧客が持っている問題点に焦点を当て、さらに深堀りしていきます。下記の例のように、問題点をもとに、顧客がどれだけの不利益を被っているのかをオープンにし、徐々に顕在化させていきます。できるだけ連想ゲームのようにゴールに導くのが理想です。
(例)
■車が小さいと遠方へのご旅行のとき、疲れませんでしたか?
■車が小さいとご趣味のキャンプに不都合ではありませんか?
■赤ちゃんを車に乗せるのに、車高が低いと大変ではありませんでしたか?
■お子様が大きくなると、車内が窮屈に感じませんか?<解決質問> Need-payoff
その問題を解決することで、どれだけのメリットが得られるのかを質問に変えます。ここでニーズ( 問題点)が明確に顕在化されます。
(例)
■小型車からワンボックス車に変更することで、どんなメリットがありますか?
■ワンボックス車であれば、レジャーやイベントにも活躍できるのではないですか?
■ワンボックス車になると、赤ちゃんをシートに座らせるのが楽になるのではないですか?今回の事例は、車を売るというケースをもとに質問を作っていますが、管理受託営業にこれらの質問を当てはめてみましょう。それにより、質問を体系化し、段階に応じた質問を定型化することにより、トップ営業マンの手法を横展開することも可能となるのです。