法律・税務・賃貸Q&A

配偶者居住権が消滅した場合の相続税と贈与税の取扱い

税理士 山崎 信義
税理士法人タクトコンサルティング 情報企画室室長

質問

遺産分割または遺贈(以下「遺産分割等」)により設定された配偶者居住権が消滅した場合における、相続税と贈与税の取扱いについて教えてください。

月刊不動産2019年12月号掲載
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回答

回答

 配偶者の死亡または存続期間の満了により配偶者居住権が消滅した場合は、特に課税関係は生じず、居住建物およびその敷地の所有者に対し相続税または贈与税は課税されません。
 一方、配偶者居住権の存続期間の満了前に配偶者居住権が消滅した場合は、配偶者から居住建物およびその敷地の所有者にその建物を使用・収益する権利の贈与があったものとみなされ、贈与税が課税されます。

1. 配偶者居住権(配偶者が無償で居住・賃貸できる権利)の概要

 被相続人の死亡時にその被相続人の財産であった建物に居住していた配偶者は、遺産分割等により、その居住していた建物(以下「居住建物」)の全部につき無償で居住したり賃貸したりする権利(「配偶者居住権」)を取得することができます(改正民法1028条1項、2020年4月1日施行)。配偶者居住権の存続期間は、配偶者が亡くなるまで(遺産分割協議または遺言で別段の定めをした場合には、その期間)です(同法1030条)。

2. 配偶者の死亡または期間の満了により消滅した場合の相続税・贈与税の取扱い

 個人が対価を支払わないで、または著しく低い価額の対価で利益を受けた場合には、相続税法9条により、原則として、その利益を受けたときに、その利益を受けたときにおけるその利益の価額に相当する金額(対価の支払いがあった場合には、その価額を控除した金額)を、その利益を受けさせた者から贈与により取得したものとみなされます。
 1.のとおり、配偶者居住権を取得した配偶者が死亡した場合には、配偶者居住権が消滅します。この場合、居住建物の所有者はその居住建物について使用・収益することが可能となったことを利益と考え、相続税法9条の規定と同様に居住建物の所有者に対してみなし課税をするという考え方もあります。しかしこれは配偶者の死亡に伴い、民法の規定により予定どおり配偶者居住権が消滅するものであり、配偶者から居住建物の所有者が相続により取得する財産がないことから、相続税は課税されません(相続税法基本通達9-13の2の注書き)。
 配偶者居住権の存続期間が終身ではなく、10年などの有期で設定されていた場合に、その存続期間が満了したときも、民法の規定により予定どおり配偶者居住権に基づく建物の使用・収益が終了することから、移転し得る経済的価値は存在しないと考えられ、贈与税は課税されません。
 なお、居住建物の敷地の所有者についても、上記と同様の取扱いがされます。

3. 配偶者居住権がその存続期間の満了前に消滅した場合の贈与税の取扱い

 上記1.のとおり、民法は配偶者居住権の存続期間を「配偶者が亡くなるまで(遺産分割協議または遺言で別段の定めをした場合には、その期間)」と定めており、原則として当初設定した存続期間の中途で変更することはできません。
 ただし、配偶者が用法遵守義務※に違反した場合や、居住建物の所有者の承諾を得ないでその建物の改築や増築または第三者に対する賃貸を行った場合には、居住建物の所有者は配偶者に対して期間を定めて是正の催告を行い、その期間内に是正されないときは配偶者居住権を消滅させることができます(改正民法1032条3項・4項)。また、配偶者が配偶者居住権を放棄もしくは居住建物の所有者と合意することにより、配偶者居住権を解除することが可能とされています[ 堂薗幹一郎・野口宣大「一問一答 新しい相続法」(商事法務)29頁Q20参照]。

※改正民法1032条1項により、配偶者は従前の用法に従い、善良な管理者の注意をもって居住建物を使用することが義務付けられています。

 配偶者居住権の存続期間の満了前に何らかの事由により配偶者居住権が消滅することとなった場合、居住建物の所有者は、その期間満了前に居住建物の使用・収益ができることとなります。その配偶者居住権の消滅により、配偶者から所有者に使用・収益する権利が移転したものと考えられることから、相続税法9条の規定により偶者から贈与があったものとみなされ、居住建物の所有者に対して贈与税が課税されます。具体的には、前述の理由により、その配偶者居住権は消滅したときにおいて、その建物の所有者または建物の敷地の用に供される土地の所有者が、①対価を支払わなかったとき、または②著しく低い価額の対価を支払ったときは、原則、その建物や土地の所有者が、その消滅直前に、その配偶者が有していた配偶者居住権の価額またはその配偶者居住権に基づき土地を使用する権利の価額に相当する利益の額(対価の支払いがあった場合には、その価額を控除した金額)を、その配偶者から贈与によって取得したものとして取り扱われます(相続税法基本通達9-13の2)。
 なお、居住建物の敷地の所有者についても、上記と同様の取扱いがされます。

※記事の内容は、掲載当時の法令・情報に基づいているため、最新法令・情報のご確認をお願いいたします。

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