税務相談
月刊不動産2014年10月号掲載
路線価方式による間口の狭い宅地の評価
情報企画室長 税理士 山崎 信義(税理士法人 タクトコンサルティング)
Q
間口が狭い宅地を相続税の路線価方式で評価する場合のポイントについて教えてください。
A※記事の内容は、掲載当時の法令・情報に基づいているため、最新法令・情報のご確認をお願いいたします。
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1.間口が狭小な宅地の相続税評価
(1)評価の方法
相続税の計算上、路線価方式により間口が狭小な宅地を評価する場合は、次の算式により計算を行います(財産評価基本通達(財基通)20 - 3(1))。
(算式)路線価×奥行価格補正率×間口狭小補正率×地積
(2)相続税の評価上、間口狭小補正率を乗じる理由
宅地の価値は、通風、採光、出入りの便などのいかんによって左右され、それは宅地の路線に接する部分、すなわち間口の広狭によって影響される度合が大きくなります。間口が狭小な宅地は利用効率が低下し、その価格も正常規模の間口を有する標準的な宅地に比べて低下していると考えられます。そこで、間口が狭小な宅地の相続税評価においては、通常規模の間口を有する宅地を前提として定められている路線価に、その利用効率の低下している程度に応じて、間口狭小補正率を掛けて減額することとしています。
(3)間口距離の考え方
上記(1)の間口狭小補正率を適用するときの間口距離は、宅地が道路と接する部分の距離によります。
(4)間口に比べて奥行が長大な宅地の相続税評価
間口が狭小な宅地を評価する場合において、その宅地の間口距離に比べて奥行距離が長大なときは、間口距離と奥行距離のバランスがとれた宅地に比べて利用効率が低下することから、(1)の算式上、路線価に奥行価格補正率と間口狭小補正率を掛けて計算した価額に、更に奥行長大補正率を掛けて計算します(財基通20 - 3(2))。
(5)不整形地・無道路地への間口狭小補正率の不適用
前述(1)や(4)の補正は、不整形地や無道路地には行いません。
(6)地積が大きい宅地の補正率の適用
地積が大きい宅地の評価においては、間口が狭小であることや奥行が長大であることによるマイナス要素が減殺されるので、その評価においては間口狭小補正率や奥行長大補正率を適宜修正して適用します。
2.宅地の評価における間口距離の考え方
宅地の相続税評価の間口狭小補正率、奥行長大補正率の適用においては、その間口距離が重要な要素になります。この間口距離につき、宅地と通路面に高低差がある場合の考え方について争われた国税不服審判所の裁決事例(平成25年12月2日)が最近明らかになり、実務の参考になります。以下、この事例について紹介します。
争点になったのは、T字路の角地300㎡ほどの宅地でした。角には3mほどの隅切りがされ、この幅の部分が道路と段差なく、ここから角を離れるにしたがって宅地が高くなり最大80㎝の段差がついていました。
この宅地を相続した納税者は、「間口距離は道路に接する距離であり、「接する」とは「通じる」、「続いている」などと解すべきであるから、本件士地の地盤面と道路面とに高低差がある部分は間口には当たらない」という理由で、道路と段差なく行き来できる3mほどの幅こそ、「間口である」と考えて、問題の宅地を間口が狭小な宅地として相続税の当初申告をしました。
その申告に対し税務署は、「財産評価基本通達(財基通)20 - 3 を適用する際の間口距離は、(中略)正面路線と接する部分の距離を間口距離とすると解される」として否認しました。このため、納税者は異議申し立てを経て、国税不服審判所に審査請求をしたものです。
国税不服審判所は、財基通20 - 3 において、間口について特段の定義はなく、道路面と高低差があることによる個別事情による補正についても関連通達にその定めはないことを確認しました。その上で審判所は、「道路面との高低差という宅地所有者の自由意思により容易に変更が可能な要素により間口距離が定まるということは、評価通達適用の画一性とも相容れないものであると解されることからしても、財基通20 - 3 の適用においては、宅地の道路面との高低差を考慮に入れることは予定されていないものと解すべき」としました。
以上により審判所は、間口について「宅地の道路面との高低差という要素を加味せず客観的、形式的にみるならば、当該境界の距離をもって間口距離とみるべき」とし、問題の宅地は間口狭小ではないと判断して納税者の主張を退けています。