税務相談

月刊不動産2002年11月号掲載

譲渡損失の繰り越し控除について教えて下さい。

0 井出 真(井出真税理士事務所)


Q

譲渡損失の繰り越し控除について教えて下さい。平成5年に5,000万円で購入したマンションを転勤のために売却しようとしたところ、2,800万円でしか売れません。転勤先で自宅を購入しようと考えていますが、所得税の申告をすれば給与の源泉税を還付してもらえるでしょうか。なお、自宅購入に際し親から1,000万円住宅取得資金として贈与を受けており、私の年収は現在800万円です。

A※記事の内容は、掲載当時の法令・情報に基づいているため、最新法令・情報のご確認をお願いいたします。

  •  譲渡損失の繰り越し控除制度は、所得税だけでなく住民税にも適用されます。この制度を使う場合、まず自宅マンションの売却でどれだけ譲渡損失が生じているかを次式で計算します。

     譲渡収入金額-(取得費+譲渡費用)=譲渡損失金額

     このうち、譲渡収入金額は、売却代金で2,800万円です。取得費は、購入代金の5,000万円から建物の減価償却費相当額を控除します。鉄筋コンクリート造で住宅用の建物の耐用年数は47年ですが、ここでは耐用年数を1.5倍(70年、1年未満の端数は切り捨て)とし定額法で計算します。経過年数は9年(6か月以上の端数は1年とし、6か月未満の端数は切捨て)です。建物の取得価額を2,000万円とすると次のように計算します。

     2,000万円 × 90% × 0.015 × 9年 =243万円
                 (償却率)(経過年数)

     したがって、取得費は4,757万円(5,000万円-243万円)になります。

     譲渡費用は、売却に際して支払った仲介手数料、印紙代等です。仮に譲渡費用を93万円とすれば、譲渡損失金額は、△2,050万円{2,800万円-(4,757万円+93万円)}です。

     あなたの場合年収800万円(給与所得600万円、所得控除合計250万円)ですから、所得税・住民税(定率減税後)は次表のようになります。

    (表)
     

     譲渡損失が生じた平成14年の所得に対する所得税・住民税は、損益通算によりゼロになります。この損益通算後の譲渡損失金額△1,450万円(600万円-2,050万円)を翌年以降3年間繰り越すことができます。

     譲渡損失がない場合、毎年の所得税・住民税は50万8,500円です(定率減税後)。したがって、5年間で合計191万1,500円税金を安くすることができます。なお、売却する自宅を購入した際に住宅取得資金贈与の特例を受けていても問題はありません。また、新たなご自宅の購入に際して住宅ローンを利用していますが、ローン控除も受けられます。ただし、平成14年に居住を開始しても、当初3年間はこの制度により所得税はゼロとなり、実質的には7年しか使えません。また、4年目の控除額は8万円が限度となります。

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