税務相談

月刊不動産2009年3月号掲載

譲渡所得における不動産の譲渡日と取得日の判定法

情報企画室長 税理士 山崎 信義(税理士法人 タクトコンサルティング)


Q

個人が不動産を譲渡した場合の譲渡日と取得日の判定方法について教えてください。

A※記事の内容は、掲載当時の法令・情報に基づいているため、最新法令・情報のご確認をお願いいたします。

  • 1.譲渡日と取得日の判定の重要性

     個人が土地や建物に係る譲渡所得を計算する場合、取得日や所有期間、譲渡日によって税率や各種特例の適用の有無が決まります。したがって、譲渡所得を計算する場合は、土地や建物の譲渡日と取得日の判定が極めて重要になります。

     土地や建物の譲渡日と取得日の判定は、次の2.と3.に記載のとおりに行います。

    2.譲渡日の判定

     土地や建物の譲渡日は、原則として、譲渡した土地や建物の引渡しがあった日となります。ただし、納税者の選択により、農地以外の資産については譲渡に関する契約の効力発生日(通常は契約の締結日)、農地については譲渡に関する契約の締結日とすることもできます。

    3.取得日の判定

    (1) 原則
     売買により他から取得した土地や建物の取得日は、譲渡日の判定基準を準用します。したがって、原則的には土地や建物の引渡しがあった日が、取得日となります。ただし、納税者の選択により売買契約締結日を取得日とすることもできます。

    (2) 自ら建設等した場合

     自ら建設等した資産の取得日は、その建設等が完了した日となります。また、他に請け負わせて建設等した場合は、資産の引渡日が取得日になります。このため、建物を自ら建設等した場合や他に請け負わせて建設等した場合は、契約日をもって取得日とすることができません。

    (3) 相続や個人からの贈与により取得した場合

     相続(限定承認に係るものを除く)や個人からの贈与により取得した土地や建物の取得日は、被相続人や贈与者の取得日を引き継ぐことになります。

     限定承認による相続により取得した土地や建物は、その取得の日が取得日となります。

    (4)  収用交換等や買換え特例の適用を受けて取得した場合

     固定資産の交換や収用等に伴う代替資産の取得、事業用・居住用資産の買換えなど譲渡所得の特例の適用を受ける場合、土地や建物の取得日の判定は次のとおりに行います。

     ① 固定資産の交換の特例や、収用等に伴い代替資産を取得した場合の課税の特例の適用を受けて取得した土地や建物の取得日は、譲渡等をした土地や建物の取得日を引き継ぎます。

     ② ①以外の事業用資産の買換え特例や、居住用財産の買換え特例等の適用を受けて取得した土地や建物の取得日は、これらの資産の実際の取得の日となります。

    (5)  住宅取得資金贈与に係る相続時精算課税の適用と住宅用家屋の取得

     一定の住宅取得資金の贈与を受けた場合には、贈与税について相続時精算課税制度の適用が可能です。

     平成21年12月31日までに20歳以上である子が親から贈与により取得した住宅取得等資金を、贈与年の翌年3月15日までに一定の家屋の取得又は増改築に充てて、その家屋を同日までに居住用に供するか、又は同日後遅滞なく居住用に供した場合には、特別控除額3,500万円の相続時精算課税制度を選択できます。

     この場合における「住宅用家屋の取得」とは、家屋の引渡しを受けたことをいい、売買契約の締結だけでは住宅用家屋の取得には該当しません。

    4.所有期間の判定

     同じ土地や建物であっても、取得日と譲渡日の判定基準は、必ずしも一致させる必要はありません。例えば、取得日は契約日で判定して、譲渡日は引渡日で判定することもできれば、取得日は引渡日で判定して、譲渡日は契約日で判定することも可能です。したがって、契約日を選ぶか引渡日を選ぶかによって、同じ土地や建物であっても所有期間が異なるケースもあります。

     いったん選択した取得日と譲渡日については、選択後に変更することができませんので、慎重に選択する必要があります。

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