税務相談

月刊不動産2005年1月号掲載

譲渡代金が回収不能になった場合

代表社員 税理士 玉越 賢治(税理士法人 タクトコンサルティング)


Q

 一昨年、相続した土地を1億円で譲渡する旨の売買契約書を締結して、3,000万円を受領し、引き渡しました。譲渡所得の申告は昨年3月15日に済ませました。ところが、買主の業績悪化により譲渡残金の支払が遅れがちだったところ、今般、ついに買主が倒産してしまい、譲渡代金のうち4,000万円を回収することができなくなってしまいました。この譲渡代金の回収不能額4,000万円の損失について、税務上の救済措置はないでしょうか。

A※記事の内容は、掲載当時の法令・情報に基づいているため、最新法令・情報のご確認をお願いいたします。

  •  譲渡所得の金額の計算の基礎となる収入金額の全部若しくは一部を回収することができなくなった場合には、その回収することができないこととなった金額は、なかったものとみなされます。
     譲渡がなかったものとみなされる金額は、次のうちいずれか低い金額です。

    ①回収不能額

    ②回収不能が生じなかったとした場合の、総所得金額、譲渡所得の金額等の合計額

    ③回収不能が生じなかったとした場合の譲渡所得の金額

     譲渡代金の全部又は一部を回収することができなくなったかどうかの判定及びその回収不能額については、譲渡先の支払能力等の有無によって判定しますが、譲渡先に次の事実が発生した場合には、原則として譲渡代金の貸倒れが生じたものと取り扱われます。

    ①会社更生法、民事再生法の認可決定により切り捨てられる金額

    ②商法の特別精算、破産法による強制和議の認可決定により切り捨てられる金額

    ③私的整理における債権者集会の合理的な基準による協議決定で切り捨てられる金額

    ④私的整理における行政機関又は金融機関その他の第三者のあっせんによる当事者間の協議により締結された契約で③に準ずるもの

    ⑤譲渡先の債務超過状態が相当期間継続し、賃金等の弁済を受けることができない場合において、譲渡先に対して書面により債務免除した金額

    ⑥譲渡先について事業閉鎖、著しい債務超過の状態が相当長期間にわたって継続し、金融機関や大口債権者の協力が得られないため事業運営が衰退し再興のめどが立たないこと、その他これらに準ずる事情が生じたことにより、譲渡先に対する債権の全額が回収できないことが明らかになった場合、その譲渡先に対して持っている債権の全部

     この回収不能額がなかったものとされる制度は、その回収不能が発生した年分の譲渡所得から控除するものではなく、その原因となった譲渡があった年分の譲渡所得から控除するものです。したがって、確定申告書を提出した後に譲渡代金の回収不能の事実が生じた場合には、譲渡不能の事実が生じた日の翌日から2ヶ月以内に更正の請求をすることにより、所得税の還付を受けることができます。

     具体例で説明しましょう。

    (1)一昨年の所得
     ①総所得の金額 … 1,000万円

     ②長期譲渡所得の金額 … 9,200万円
      収入金額 … 10,000万円
       取得費 … 500万円
      譲渡費用 … 300万円

    (2)譲渡代金の回収不能額 … 4,000万円

    (3)譲渡所得の金額のうち、なかったものとみなされる金額
     次の金額のうち最も低い金額=4,000万円
     ①回収不能額 … 4,000万円
     ②総所得金額、長期譲渡所得の金額の合計額 … 10,200万円
     ③譲渡所得の金額 … 9,200万円

    (4)特例適用後の所得
     ①総所得金額 … 1,000万円
     ②長期譲渡所得の金額 … 5,200万円
      (9,200万円-4,000万円)

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