税務相談
月刊不動産2002年9月号掲載
親の土地を借りてアパートを建築し、賃貸する場合の留意点を教えて下さい。
0 井出 真(井出真税理士事務所)
Q
親の土地を借りてアパートを建築し、賃貸する場合の留意点を教えて下さい。
A※記事の内容は、掲載当時の法令・情報に基づいているため、最新法令・情報のご確認をお願いいたします。
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1.使用貸借
借地をする際に、権利金等の一時金を支払う慣行のある地域において、一時金を支払わずに借地をすると「権利金等相当額の贈与」の問題が生じます。ただし、権利金等を支払わずに個人間で借地をする場合、次のいずれかによれば「権利金等相当額の贈与」の問題は生じません。
①借地人が、相当の地代を支払う。
②借地人が、土地を使用貸借する。
(注)相当の地代は、次のいずれかの金額×6%(年間)の地代をいう。
a.通常の取引価額
b.公示価格・基準地価格から合理的に算定した価額
c.相続税評価額(自用地評価額)
d.相続税評価額の過去3年間の平均額
しかし、相当の地代はかなり高額な地代となるので、親子間では土地の使用貸借が通常となります。使用貸借では、一時金の授受はなく、地代もゼロか土地の固定資産税・都市計画税までとなります。
使用貸借では借地権は生じないので、親が亡くなったときの相続税評価は、貸宅地(底地)ではなく自用地評価額となります。2.家賃収入は子のものとなる
アパートの所有者が子であれば、当然、家賃収入はすべて子のものとなり、不動産所得として申告することになります。不動産所得の必要経費としては、建物の減価償却費、修繕費、建物の固定資産税・都市計画税、火災保険料等があります。それでは、使用貸借とはいえ、子が親に地代を払った場合、必要経費になるのでしょうか。子が「同一生計」の親に支払った地代は、不動産所得の計算上、必要経費になりません。その代わり、親が支払った土地の固定資産税・都市計画税は、子の不動産所得の計算上、必要経費となります。また、親が受け取った地代は申告の対象にはなりません。つまり、地代の授受はなかったものとされ、アパートの敷地に対する固定資産税等は必要経費となるわけです。したがって、固定資産税等と同額を地代として支払っているときは、その金額を必要経費としてかまわないことになります。この様な取り扱いは、所得税額を減少させるため、故意に親族間の地代のやり取りが行われるのを防ぐためにあります。
3.借入金利子の取り扱い
初めてのアパート経営で注意すべき点に、借入金利子があります。税務上、借入金利子を支払った時期に応じて次のように処理します。
(表)
通常、アパートの建築費は、着手金、中間金、残金のように何回かに分けて支払います。着手金や中間金の段階ですでに資金を借り入れている場合には、業務開始前に借入金利子を支払います。この時期に支払った利子は、アパートの取得価額となり、将来、減価償却により必要経費となります。賃貸募集を開始し、借家人が入居するまでの間に支払った利子は、アパートの取得価額または不動産所得の計算での必要経費どちらでもよいことになります。これに対し、2棟目以降のアパート建築資金の借入金利子は、当初から必要経費となります。すでにアパート賃貸業務は開始されているからです。