法律相談

月刊不動産2003年3月号掲載

破産物件の土地の購入の話があります。購入にあたり、どのような点に注意すればいいでしょうか。

弁護士 草薙 一郎()


Q

破産物件の土地の購入の話があります。購入にあたり、どのような点に注意すればいいでしょうか。

A※記事の内容は、掲載当時の法令・情報に基づいているため、最新法令・情報のご確認をお願いいたします。

  •  破産者の物件は破産管財人がいるときには、破産管財人の監督下に入ります。したがって、売買契約の売主は破産者ではなく、破産者の破産管財人ということになります。
     ただし、最近の破産実務では、抵当権者などの協力が得られなかったり、なかなか買い手が見つからない物件については、破産手続上、破産管財人の監督下から解放されてしまうことが多く見られます。これを一般に破産財団放棄と法律家は呼んでいます。
     こういうケースでは破産管財人は関係がなくなり、その物件の処分権限は元の所有者に戻ります。なお、会社などが所有者のときには、会社は破産宣告で消滅していることになりますので、特別代理人を裁判所に選任してもらって、この代理人が会社の代表者として売買に関与していただくことになります。
     したがって、破産管財人がいるからといって安心せず、破産財団放棄があるか否かを管財人に確認して下さい。売買の話が進むと取引になるわけですが、一般の物件とちがうのは、裁判所の手続きが関係する点です。
     まず、破産管財人がその物件を売却するためには、裁判所の許可が必要となります。この許可書がいわゆる原因証書となるわけです。したがって許可を得られるか否かの確認が必要です。
     次に売買契約をし、移転登記に入るわけですが、その手続き自体は通常と同様で、司法書士にお願いすればよろしいでしょう。
     しかし、破産のケースでは、対象物件に破産登記がついています。
     これを抹消するには裁判所からの嘱託が必要です。その手続きですが、通常は以下のようにしています。
     売買契約をして、買主名義に移転登記をする。買主名義の登記簿謄本ができあがると、破産管財人から裁判所に対して、その登記簿謄本を添付して破産財団から除外されたので、破産登記を抹消するよう上申する。
     裁判所はこの上申を受けて法務局に対して破産登記の抹消を嘱託し、法務局はこの嘱託を受けて破産登記を抹消する。という一連の流れになっています。
     このことからすると、買主名義になった時点では破産登記はついたままになっているわけです。
     そして、その後の手続きについては、買主名義の登記簿謄本ができあがってからの処理になるので、多少時間がかかるということになります。
     いずれにしても、以上の手続きの流れを買主によく説明しておかないと、自分の名前になっているのに破産の登記が残っているなどのトラブルになってしまう可能性がありますので、注意が必要と考えます。
     なお、本来あってはいけないのですが、破産管財人が破産登記の抹消の上申を裁判所に対して行なうことを忘れてしまうこともあります。
     もし、管財人がこの上申をしないと、いつまでも破産登記が抹消できないことになります。
     したがって、買主側としては、自分の名義の登記簿謄本ができあがったら、破産管財人に登記ができたので、破産登記の抹消をお願いしたい旨の連絡を入れるなどの予防策を講じておいた方がいいと思います。
     なお、破産物件には必ず抵当権などの登記がついています。これらは破産登記の抹消をしたからといって消えるわけではありません。買主あるいは管財人が担保権者と交渉して、その抹消をお願いすることで消せるわけですので、多数の利害関係者の協力がないと破産物件の取得はできないことになります。

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