賃貸相談

月刊不動産2025年1月号掲載

相続財産である土地に土壌汚染があった場合の相続税の評価について

税理士 飯田 隆一(税理士法人チェスター 東京本店審査部)


Q

 父が他界し、その昔、工場があった土地を相続したところ、その土地に土壌汚染があることがわかりました。今後、業者に頼んで浄化・改善を行う予定ですが、相続税の計算に影響はありますでしょうか。

A※記事の内容は、掲載当時の法令・情報に基づいているため、最新法令・情報のご確認をお願いいたします。

  •  相続などによって取得した土地が土壌汚染地であったときの評価方法については、国税庁において基本的な考え方を示していますので、この考え方に基づき評価します。

  • 相続等で取得した土地の 評価方法

     相続税とは、わかりやすくいえば、被相続人(亡くなった人)から相続によって取得した財産の価額を合計し、その合計額から債務等の金額を控除した額が、相続税の基礎控除額を超える場合に、その超える部分に対して課税される税金です。
     そのため、相続税を計算するには、相続により取得した財産を評価する必要があり、たとえば、土地は、次の2つの方式により評価します。

    路線価方式
     路線価が定められている地域の評価方法。路線価とは、国税庁が定めた路線価図に表示された路線(道路)に面する標準的な宅地の1㎡当たりの価額をいい、路線価を各種補正率で補正した後に、その土地の面積を乗じて計算する。

    倍率方式
     路線価が定められていない地域の評価方法。国税庁が定めた一定の倍率に、その土地の固定資産税評価額を乗じて計算する。

  • 土壌汚染とは

     土壌汚染とは、土地が、人にとって有害な物質によって汚染されている状態のことをいいます。その原因はさまざまですが、たとえば、工場の操業に伴い、原料として用いる有害な物質を不適切に取り扱ってしまったり、有害な物質を含む液体を地下に浸み込ませてしまったりしたことなどが考えられます。また、人の活動に伴って生じた汚染だけでなく、自然界に存在する重金属など、自然由来で汚染されているものも含まれます。

     都道府県等が把握した土壌汚染の調査の件数は年々増えており、土壌汚染が見つかる件数も増えています。土壌汚染対策法は、土地の土壌汚染を見つけるための調査や、汚染が見つかったときに、その汚染によって健康に悪い影響が生じないように、土壌汚染のある土地の適切な管理の仕方について定めています(2024.5『土壌汚染対策法のしくみ』〈環境省・(公財)日本環境協会〉参考)。

  • 土壌汚染地の評価

     相続財産である土地に土壌汚染があった場合、前記の評価方法には、土壌汚染の評価が加味されていないので注意が必要です。国税庁は、土壌汚染の場合の評価方法についての基本的な考え方を示しています

    令和6年6月21日付資産評価企画官情報第3号「土壌汚染地等の評価の考え方について(情報)」

     国税庁は、まず、土壌汚染地として評価する土地を、「課税時期において、特定有害物質による汚染状態が環境省令で定める基準に適合しないと認められる土地」と定義するとともに、以下の留意事項を示しています(条文資料参考)。

    ①土壌汚染の可能性があるなどの潜在的な段階では、土壌汚染地として評価することはできない。

    ②土壌汚染地は、土壌汚染の調査・対策が義務付けられているか否かにかかわらず、特定有害物質による汚染状態が環境省令で定める基準に適合しないと認められる土地をいう。

     
    ③土壌汚染対策法に規定する要措置区域の指定がされている場合、または、同法に規定する形質変更時要届出区域の指定がされている場合には、特定有害物質による汚染状態が環境省令で定める基準に適合しないことが明らかであるため、いずれの場合も「土壌汚染地」に該当する。

     

    •  
        条文資料:土壌汚染対策法第6条第1項(要措置区域の指定等)
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         都道府県知事は、土地が次の各号のいずれにも該当すると認める場合には、当該土地の区域を、その土地が特定有害物質によって汚染されており、当該汚染による人の健康に係る被害を防止するため当該汚染の除去、当該汚染の拡散の防止その他の措置を講ずることが必要な区域として指定するものとする。
    •   
        一 土壌汚染状況調査の結果、当該土地の土壌の特定有害物質による汚染状態が環境省令で定める基準に適合しないこと。
        二 土壌の特定有害物質による汚染により、人の健康に係る被害が生じ、又は生ずるおそれがあるものとして政令で定める基準に該当すること。

     

     なお、ダイオキシン類対策特別措置法(平成11年法律第105号)、地方公共団体の条例等に定める有害物質による汚染状態が、所定の基準に適合しないと認められる土地についても、土壌汚染対策法と同様の制約に服することから、土壌汚染地の評価に準じて評価して差し支えないとされています。

     そして、土壌汚染地の評価額は、図表の算式に示すとおり、汚染がないものとした場合の価額から、浄化・改善費用に相当する金額、使用収益制限による減価に相当する金額および心理的要因による減価に相当する金額を控除した金額によって評価することが示されています。

  • その他の留意点

     なお、今回のご相談には該当しないためここでは割愛しますが、国税庁ホームページでは、「相続開始日において、浄化・改善費用の額が確定している場合」や、「汚染の除去等の措置の費用を、汚染原因者に求償できる場合」の取扱いについても解説しています。
    https://www.nta.go.jp/law/johozeikaishaku/hyoka/240705/01.htm

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