税務相談
月刊不動産2004年3月号掲載
消費税の改正
代表社員 税理士 玉越 賢治(税理士法人 タクトコンサルティング)
Q
平成16年4月から消費税の総額表示が義務付けられると聞きましたが、どのようなことに注意すればよいでしょうか。
A※記事の内容は、掲載当時の法令・情報に基づいているため、最新法令・情報のご確認をお願いいたします。
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平成15年度の税制改正により消費税について次の三点の改正が行われました。
1.課税事業者の免税点の引下げ
現在の消費税法では、基準期間(法人は前々事業年度、個人は前々年)の課税売上高が3,000万円以下の事業者については、消費税の納税義務はありませんでした。このような事業者を免税業者といいます。
改正により、この消費税が課税されない課税売上高が1,000万円に引き下げられます。
法人については3月決算の場合平成15年3月期の、個人については平成15年分の課税売上高が1,000万円超の事業者は、法人は平成17年3月期、個人は平成17年度分から消費税の課税事業者となります。2.簡易課税制度の上限引下げ
消費税の計算は、原則として、課税売上(売上、譲渡)に係る消費税から課税仕入れ(仕入れ、経費、取得)に係る消費税を控除して計算します。しかし、一定規模以下の事業者については、課税売上に係る消費税から控除することのできる消費税を課税売上に対する一定割合(みなし仕入率)とすることができます。これを簡易課税制度といいます。
土地の売買・賃貸、有価証券の売買、貸付金利子、住宅の賃貸等の非課税取引や、給与・賞与等の人件費、損害賠償金、寄付金、減価償却費、租税公課等の不課税取引は消費税が課税されません。
したがって、課税売上に対するこれらの割合が高い業種や粗利の高い事業者は、簡易課税制度を利用することで、消費税の納税額が軽減されます。この制度も上記1.と同様に基準期間の課税売上高により制限されており、その上限額が上記1.と同時期より2億円から5,000万円に引き下げられます。(表)
3.総額表示の義務付け
平成16年4月1日以降、課税事業者が、不特定多数の者に対して課税売上を行う場合、あらかじめ課税売上価格を表示するときは、消費税額及び地方消費税額の合計額を含めた価格で表示しなければなりません。免税事業者、専ら他の事業者に課税売上を行う事業者については、総額表示義務の対象外とされます。
総額表示の対象となる価格表示には、次のようなものが挙げられます。①値札、商品陳列棚、店内表示、商品カタログ等への価格表示
②商品のパッケージ等への印字、あるいは貼付した価格表示
③新聞折込広告、ダイレクトメール等により配布するチラシ
④新聞、雑誌、テレビ、インターネットホームページ、電子メール等の媒体を利用した広告
⑤ポスター、看板等
総額表示とは、次のような表示をいい、消費税額や税抜価格が付されていても構いません。
a.××円、b.××円(税込)、c.××円(税抜価格△△円)、d.××円(うち消費税等□□円)、e.××円(税抜価格△△円、消費税等□□円)
次のような表示は、総額表示とはいえません。
イ.税抜△△円+消費税等、ロ.△△円(税抜)ハ.税抜△△円・消費税等□□円
不動産取引に関係するのは③、④、⑤でしょうが、その場合において、商品の単価や手数料率を表示する場合など、最終的な取引価格そのものではありませんが、事実上、その取引価格を表示しているものについても総額表示義務の対象となります。すなわち、不動産仲介手数料等で「取引価額の一定割合(○%)」とされている表示がこれに当たります。
したがって、「売買金額の3.00%」の表示は「売買価格の3.15%」と変更する必要があります。
なお、総額表示義務の対象となるのは、商品、サービス等の価格をあらかじめ表示する場合ですので、取引成立後に作成されるレシート(領収書)や請求書等における表示まで義務付けられているわけではありません。