税務相談

月刊不動産2014年7月号掲載

法人が建物を取得または建設した場合の取得価額の計算方法

情報企画室長 税理士 山崎 信義(税理士法人 タクトコンサルティング)


Q

法人が建物を取得または建設した場合の建物の取得価額の計算方法について教えてください。

A※記事の内容は、掲載当時の法令・情報に基づいているため、最新法令・情報のご確認をお願いいたします。

  • 1.建物の取得価額の計算の原則

    法人税の計算上、法人が取得または建設した建物の取得価額は、原則として次に掲げる場合の区分に応じ、それぞれに定める金額とされます。

    (1)建物を購入した場合

    法人が建物を購入した場合、その建物の取得価額は次の①と②の合計額とされます。

    ①建物の購入の代価( 購入手数料等その資産の購入のために要した費用を含む)

    ②建物を事業の用に供するために直接要した費用の額

    (2)建物を建設した場合

    法人が建物を建設した場合、その建物の取得価額は、次の①と②の合計額とされます。

    ①建設等のために要した原材料費、労務費および経費の額

    ②その建物を事業の用に供するために直接要した費用の額

    2.建物の取得価額に算入する費用の主な例

    (1)立退料

    法人が建物の取得に際し、建物の使用者等に支払った立退料は、前述1.(1)②に該当することから、建物の取得価額に算入されます。

    (2)住民対策費

    工場、ビル、マンション等の建物の建設に伴って支出する住民対策費(無形固定資産または繰延資産の取得価額に算入されるものを除く)の額で、当初からその支出が予定されているものについては、前述1.(2)①の経費の一種と考えられるので、毎年支出することになるものを除き、その支出が建物の建設後に行われるものであっても、その建物の取得価額に算入されます。

    3.建物の取得価額に算入しないことができる費用

    (1)借入金の利子

    建物を取得するために借り入れた借入金の利子の額は、たとえその建物の使用開始前の期間に係るものであっても、これをその建物の取得価額に算入しないことができます。ただし、借入金の利子の額を建設中の建物に係る建設仮勘定に含めた場合は、当該利子の額は建物の取得価額に算入したことになります。このため、建物が完成し、建設仮勘定から建物勘定に振り替える際に、当該借入金利子を抜き出して損金算入することはできないので注意が必要です。

    (2)借入金の利子以外の費用で建物の取得原価に算入せず損金に算入することができるものの例

    次に掲げるような費用の額は、前記1.にかかわらず、たとえ建物の取得に関連して支出するものであっても、法人の選択により、建物の取得価額に算入せず、各事業年度の損金の額に算入することができます。

    ①不動産取得税または登録免許税その他登記に要する費用

    不動産取得税等の租税公課等は、一種の事後費用であり、その性格も流通税的なものや第三者対抗要件を具備するための費用です。このため法人税基本通達では、これら租税公課等を建物の取得価額に算入するか損金として処理するかどうかについて、法人の判断に任せています。

    ②建物の建設等のために行った調査、測量、設計、基礎工事等で、その建設計画を変更したことにより不要となったものに係る費用の額

    建物の建設等のための調査、測量、設計等に要した費用の額は、その建物が当初の建設計画通りに完成した際には取得価額に算入すべきものです。しかし、その建設計画が中止・変更されたため、すでに支出済みのこれらの費用が結果的に無駄になった場合には、その中止した旧計画に係る費用は、その時点で全くのロスになることから、そのロスを新たな計画に基づく建物の取得価額に算入することを強制するのは不適当です。このため法人税基本通達では、上記のような当初の計画の変更のため、やむを得ず生じたロスについては、法人の選択により、その支出の時点における損金として処理することが認められています。

    ③いったん締結した建物の取得に関する契約を解除して他の建物を取得することとした場合に支出する違約金の額

    例えば、当初X建物の取得を予定して手付金を支払ったが、最終的にX建物に替えてY 建物を取得することにし、X建物の取得に係る契約を解除して手付金を没収された場合、X建物の取得に係る契約とY建物の取得に係る契約が別個のものであることから、X建物の契約解除に係る手付金の没収額は強いてY建物の取得価額に算入する必要はなく、法人の選択により、その支出の時点における損金として処理することが認められています。

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