法律相談
月刊不動産2003年2月号掲載
未成年者や後見開始の審判を受けた成年被後見人などが所有する不動産を売却するときの注意点を教えて下さい。
弁護士 草薙 一郎()
Q
未成年者や後見開始の審判を受けた成年被後見人などが所有する不動産を売却するときの注意点を教えて下さい。
A※記事の内容は、掲載当時の法令・情報に基づいているため、最新法令・情報のご確認をお願いいたします。
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【Q】
未成年者や後見開始の審判を受けた成年被後見人などが所有する不動産を売却するときの注意点を教えて下さい。【A】
まず、未成年者所有の不動産売却について説明します。
未成年者が売買契約などの法律行為をするためには、法定代理人の同意が必要とされています(民法4条)。
また、この場合、法定代理人とは未成年者の親権者あるいは未成年後見人を指します。
これらの法定代理人は、未成年者の法律行為の代理人として不動産の売買契約に関与することができます。
そこで、注意すべきは、誰が親権者等になっているかです。
未成年者の父母が一般的には親権者ですが、両親が離婚しているようなケースでは、どちらかが親権者となりますので、必ず戸籍謄本で誰が親権者であるのかの確認をして下さい。
なお、未成年者でも結婚しているときは成年に達したものとみなされますので(民法753条)、単独の法律行為が可能です。
また、未成年者の不動産を親権者が購入するようなケースでは、双方の利害が対立しますので、特別代理人の選任が必要です(民法826条)。【Q】
次に、補助、保佐、後見のケースを教えて下さい。【A】
補助とは精神上の障害によって物事の判断が不十分にしかできない人を対象とします。
補助開始の審判を受けると、補助人が選任されます。
補助は前述のように物事の判断が不十分にしかできないケースですが、補助人が被補助人の法律行為に当然には関与せず、裁判所の審判で特定の法律行為について補助人に同意権を付与することとなっています(民法16条)。
また、同様に裁判所の審判で補助人に代理権を付与することもあります。
したがって、不動産の取引にあっては、当事者に補助開始の審判がなされているか否か、誰が補助人になっているか、及び、同意権や代理権が補助人に与えられているか否かの確認が大切です。
これらの事項については、戸籍謄本だけではなく、成年後見用と登記簿に記載されることになっていますので、関係者を通じて入手して下さい。
次に保佐は精神上の障害により物事の判断が著しく不十分な人を対象としています。
保佐開始の審判が下されると、保佐人が選任されます。
この保佐人には不動産取引についての同意権限が付与されます(民法12条)。
また、裁判所は保佐人に特定の法律行為についての代理権を付与することもあります。
保佐人の同意が必要なのに、その同意を得ない法律行為は取消の対象となる法律行為となってしまうので、注意してください(補助人に同意権あるときも同様です)。
最後に後見は精神上の障害によって物事の判断ができない常況にある人を対象としています。
この場合、後見人が選任され、後見人が不動産取引の代理人として関与することになります。
被後見人の単独の法律行為は取消の対象となり、ケースによっては意思能力なしとして無効ということも考えられますので注意して下さい。
なお、後見人が被後見人の居住用の建物又はその敷地について売却、賃貸、賃貸の解除、抵当権の設定その他これらに準ずる処分をするには、家庭裁判所の許可が必要とされています(民法859条13)。
この条文は、保佐人、補助人のケースも準用されていますので注意して下さい。