法律・税務・賃貸Q&A

書類の保存の状況の説明

弁護士 渡辺 晋
山下・渡辺法律事務所

質問

宅建業法上、建物の建築および維持保全の状況に関する書類の保存の状況が重要事項として説明すべき事項とされています。どのような書類のことなのでしょうか。

月刊不動産2019年02月号掲載
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回答

1.保存状況の説明義務がある書類

 宅建業者が、重要事項説明において、保存の状況の説明対象となるのは、(1)建築基準法令に適合していることを証明する書類、(2)新耐震基準への適合性を確認できる書類、(3)新築時および増改築時に作成された設計図書類、(4)新築時以降に行われた調査点検に関する実施報告書類に該当する書類です。これらの書類は、住宅の購入者において、住宅ローンの借入れ、既存住宅売買瑕疵保険の付保、居住開始後のリフォームやメンテナンスの実施等のために必要となることから、宅建業者が、保存の状況についての説明義務を負うものとされています。

2.宅建業法改正による書類保存の状況の説明義務

 さて、わが国では中古住宅の取引量が諸外国と比べて少なく、中古住宅の流通促進が重要な政策課題となっています。中古住宅が流通しないのは、専門家による建物の状況の調査確認と、適切なリフォームやメンテナンスが十分ではないことに起因するのであり、宅建業者も建物状況の調査確認と、適切なリフォームやメンテナンスの実現に向けてその役割を担うべきだという考え方のもと、平成30
年4月施行の改正宅建業法では、(A)媒介契約書面、(B)重要事項説明、(C)37条書面交付の3つの場面のそれぞれにおいて、宅建業者に対して、従前と比較してより多くの業務が義務付けられました。
 そのうち、(B)の重要事項説明の場面では、説明事項について、建物状況調査を実施している場合の結果の概要を加えるとともに(同法35条1項6号の2イ)、「設計図書、点検記録その他の建物の建築及び維持保全の状況に関する書類の保存の状況」が追加されました(同号の2ロ)。
 前記1.の保存状況の説明対象とされる書類については、宅建業法施行規則(以下、「規則」という)では、

(1)建築基準法令に適合していることを証明
する書類(①確認の申請書、計画通知書、確認済証、②検査済証。規則第16条の2の3第1号・2号)
(2)新耐震基準への適合性を確認できる書類(旧耐震基準による建物に関しては、新耐震基準に適合していることを確認できる書類。同条6号)
(3)新築時および増改築時に作成された設計図書類(建設住宅性能評価書、同条4号)
(4)新築時以降に行われた調査点検に関する実施報告書類に該当する書類(①建物状況調査の結果についての報告書、②建築物の定期調査報告に関する書類、同条3号・5号)とされています(図表参照)。
 マンションも戸建て住宅も、説明対象となる書類は同じです。竣工図は保存
の状況を説明すべき書類とはされていません。

3.書類保存の状況を説明するにあたっての留意事項

 宅建業者は、書類保存の有無の確認を売主に照会し、必要に応じて管理組合、管理会社等にも問い合わせることをもって、調査義務を果たしたことになります。書類の実物を見るまでの必要はありません。
 次に、書類保存の状況の説明は、設計図書等の保存の有無について説明を行うものです。保存有りなのか、保存無しなのかを説明すれば足ります。
 もっとも、マンションではマンション管理組合など売主以外の者が書類を保有している場合が多いと思われます。その場合は、重要事項説明書の備考欄に、書類を実際に保有している者(たとえば「マンション管理組合」)について記載したうえで、保存有りという説明を行うこととなります。
 また、確認済証または検査済証が保存されていない住宅に関しては、住宅が建築確認または完了検査を受けたことを証明できるものとして、役所からの台帳記載事項証明書が交付、保存されている場合には、その旨を重要事項説明書に記載し、説明することが適切です。
 建築確認に関する書類(確認の申請書、確認済証、検査済証等)や定期調査報告書等については、住宅履歴情報サービス機関が保存・管理している場合があります。必要に応じて住宅履歴情報サービス機関に問い合わせ、書類の保存の有無を調査し、重要事項説明書の備考欄に、住宅履歴情報サービス機関が書類を保存している旨(機関名称や共通ID など)を記載し、説明を行います。

 また、紛失等で書類がない場合や、そもそも書類の作成義務がない場合、書類が交付されていない場合などは、その旨がわかるように、保存無しと記載します。
 なお、賃貸借では、書類の保存の状況は宅建業法上の重要事項の説明の対象とはされていません。しかし、賃貸借の場合であっても、リフォームが可能な場合等においては、賃借人の取引目的を考慮し、設計図書等の保存の状況を説明することが望ましいと思われます。

今回のポイント

●平成30年4月施行の改正宅建業法では、(A)媒介契約書面、(B)重要事項説明、(C)37条書面交付の3つの場面のそれぞれにおいて、宅建業者に対して義務が加重された。
●平成30年4月施行の改正宅建業法による宅建業者の義務の加重は、中古住宅が流通するようになるには、専門家によって建物の状況が確認され、リフォームやメンテナンスが適切になされることが必要であって、宅建業者も仲介業務において、その役割を担うべきだという考え方に基づいている。
●重要事項説明の場面では、建物状況調査を実施している場合におけるその結果の概要の説明をすることとされ、加えて、「設計図書、点検記録その他の建物の建築及び維持保全の状況に関する書類の保存の状況」が説明事項となった。

※記事の内容は、掲載当時の法令・情報に基づいているため、最新法令・情報のご確認をお願いいたします。

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