税務相談

月刊不動産2011年12月号掲載

平成23年度改正・個人が等価交換方式により建物を建てる場合の所得税の特例

情報企画室長 税理士 山崎 信義(税理士法人 タクトコンサルティング)


Q

個人が等価交換方式により建物を建築する場合の所得税の特例について教えてください。

A※記事の内容は、掲載当時の法令・情報に基づいているため、最新法令・情報のご確認をお願いいたします。

  • 1.中高層耐火建築物等の建築のための買換え特例

    (1)特例の概要

     土地所有者である個人が次の①又は②の買換え等をした場合において、その譲渡資産の譲渡日の属する年の12月31日までに買換資産を取得し、かつ、取得日から1年以内に事業用もしくは居住用として使用したとき又は供する見込みであるときは、その譲渡資産の収入金額が買換資産の取得価額以下である場合には、その譲渡資産の譲渡がなかったものとし、その譲渡資産の収入金額が買換資産の取得価額を超える場合には、その超える部分に相当する部分の譲渡資産のみ譲渡があったものとして、所得税の譲渡所得の金額の計算上、課税の繰延べが認められます(措法37条の5)。この特例は、いわゆる等価交換方式により建物を建築する場合に利用されている税制です。

    ①特定民間再開発事業が施行される土地の区域内にある土地等又は建物等から、その特定民間再開発事業の施行により建築された中高層耐火建築物、又はその特定民間再開発事業の施行される地区内で行われる他の民間再開発事業等の施行により建築された中高層耐火建築物等への買換え等

    ②既成市街地等又はこれに準ずる地域若しくは中心市街地共同住宅事業の区域内で行われる、地上階数3以上の中高層の耐火共同住宅の建築をする事業の施行される土地の区域内にある土地等又は建物等から、その事業の施行により建築された耐火共同住宅等への買換え

    (2)買換資産の取得時期

     この特例は、原則として譲渡資産を譲渡した日の属する年中に買換資産を取得する場合に適用されます。

     ただし、譲渡資産の譲渡をした個人が、その譲渡をした日の属する年の翌年中に買換資産の取得をする見込みである場合は、確定申告書にこの特例を適用する旨の記載をし、買換資産の取得予定年月日及び取得価額の見積額に関する明細書等の添付をすることにより、この特例の適用を受けることができます。

    2.平成23年度改正の内容

    (1)改正の概要

     平成23年度税制改正により、上記1.(1)①の特定民間再開発事業の施行による中高層耐火建築物への買換えについて、譲渡資産が土地所有者である個人の事業用資産である場合は、特例の適用対象から除外されました。さらに、取得した買換資産は、その個人又はその親族の居住用として使用されることが、この特例の適用を受けるための要件とされました。

     なお、前述1.(1)②に規定する買換えについては、改正が行われていません。

    (2)改正が行なわれた理由

     この特例は、既成市街地等内での都市の再開発や土地所有者が自ら行う立体化・高度化による土地の有効利用を推進するために土地等を譲渡し、その土地等の上に建築される中高層の事業用建物及びその敷地を取得する場合に課税の繰延べを認める税制です。土地所有者が個人である場合、自己の居住用など事業に使用されていない土地等についても課税の繰延べを認めるため、「事業用資産の買換え特例(措法37条)」とは別に、この特例が設けられています。

     これに対し法人が土地所有者の場合、居住用や事業用という区別がないので、個人の事業用資産の買換え特例に対応する法人税の特例である「特定資産の買換え特例(措法65条の7)」の中に、同様の規定が設けられていました。

     平成23年度税制改正において、法人の特定資産の買換え特例の見直しが行われ、特定民間再開発事業の施行による中高層耐火建築物への買換えが、この特例の適用対象から除外されました。

     個人の土地所有者についても、法人の特定資産の買換え特例とのバランスから、前述1.(1)①の特定民間再開発事業の施行による中高層耐火建築物への買換えについて、適用対象となる譲渡資産から土地所有者である個人の事業用資産を除外し、さらに取得した買換資産をその個人の居住用として使用する場合にのみ特例の適用対象とすることとし、買換資産をその個人の事業用に使用する場合には、この特例の対象外とするように改正が行われました。

    3.適用関係

     前述2.(1)の改正は、個人が平成23年6月30日以後に行う資産の譲渡より適用されています。

page top
閉じる