税務相談
月刊不動産2008年7月号掲載
平成20年度税制改正・住宅の省エネ改修促進税制の創設
情報企画室長 税理士 山崎 信義(税理士法人 タクトコンサルティング)
Q
平成20年度の税制改正で創設された住宅の省エネ改修促進税制について教えてください。
A※記事の内容は、掲載当時の法令・情報に基づいているため、最新法令・情報のご確認をお願いいたします。
-
1. 住宅の省エネ改修促進税制の創設の趣旨
平成20年度税制改正により、CO2排出量の増加が著しい民生家庭部門(90年度比+30.4% (2006年度) )の省エネ対策を加速するため、既存住宅の省エネ性能の向上を促進する一定の住宅の省エネ改修工事について、所得税と固定資産税の減税措置が盛り込まれました。
2. 所得税の住宅の省エネ改修促進税制の概要
(1) 特例の概要
居住者が自己の居住の用に供する家屋について省エネ改修工事を含む増改築工事を行った場合に、その工事費用に充てるために借り入れた住宅ローンを有するときは、その住宅ローン残高 (1,000万円を限度) の一定割合を5年間にわたり所得税額から控除します。
(2) 控除率
① 特定の省エネ改修工事 (改修後の住宅全体の省エネ性能が、平成11年基準相当に上がるもの) に係る住宅ローンについては、200万円を限度に年末残高の2.0%を控除 します (住宅ローン減税は1%又は0.5%) 。
② ①以外の増改築工事に係る住宅ローンについては、年末残高の1.0%を控除します。
(3) 対象借入金
適用対象となる借入金は、償還期間が5年以上の住宅ローンです。
(4) 対象となる省エネ改修工事
この税制の適用対象となる改修工事とは、次のいずれかの工事 (①は必須) のうち、改修部位がいずれも平成11 年基準以上の省エネ性能となり、かつ、改修後の住宅全体の省工ネ性能が現状から1段階以上あがるものをいいます。
① 居室のすべての窓の改修工事、 ② ①の工事と併せて行う床の断熱工事、 ③ 天井の断熱工事、 ④ 壁の断熱工事、 ⑤ 省工ネ改修工事の費用の合計額が30万円超。
(5) 適用期限
この税制の適用を受けるためには、対象の住宅を平成20年4月1日から平成20年12月31日までに居住の用に供することが必要です。
(6) 申告要件
この税制の適用を受けるためには、所得税の確定申告書に次の者が作成する増改築等工事証明書の添付が必要です。
① 住宅品質確保法に基づく登録性能評価機関
② 建築基準法に基づく指定確認検査機関
③ 建築士法に基づく建築士事務所所属の建築士(7) 住宅ローン減税との関係
この税制は、住宅ローン減税との選択制とされます。なお、20年度税制改正により住宅ローン減税の対象となる増改築等の範囲に、省エネ改修工事が追加されています。
3. 省エネ改修工事を行った既存住宅に係る固定資産税の減額措置
(1) 固定資産税の減額措置の概要
平成20年1月1日に存していた住宅で、平成20年4月1日から平成22年3月31日までの間に一定の省エネ改修工事を行ったもの(賃貸住宅を除く)については、改修工事が完了した年の翌年度分につき、1戸当たり120㎡相当分を限度として、住宅に係る固定資産税額の3分の1が減額されます。
(2) 対象となる省エネ改修工事
この税制の適用対象となる改修工事とは、次のいずれかの工事 (①は必須) のうち、改修部位がいずれも現行の省エネ基準に新たに適合するものをいいます。
① 窓の改修工事、② ①の工事と併せて行う床の断熱工事、③ 天井の断熱工事、④ 省工ネ改修工事の費用で、その合計額が30万円以上のもの
(3) 申告要件
この税制の適用を受けようとする納税義務者は、改修後のそれぞれの部位が省エネ基準に適合することとなったことについて、住宅の品質確保の促進等に関する法律に基づく登録住宅性能評価機関、建築基準法に基づく指定確認検査機関又は建築士法に基づく建築士事務所に所属する建築士が発行した証明書を添付して、改修後3か月以内に市町村に申告する必要があります。