税務相談

月刊不動産2013年10月号掲載

平成25年度税制改正:二世帯住宅の敷地に係る相続税の小規模宅地特例

情報企画室長 税理士 山崎 信義(税理士法人 タクトコンサルティング)


Q

平成25年度税制改正後の被相続人の居住用家屋が二世帯住宅である場合の相続税の小規模宅地特例の取扱いについて教えてください。

A※記事の内容は、掲載当時の法令・情報に基づいているため、最新法令・情報のご確認をお願いいたします。

  • 1.特定居住用宅地等に係る小規模宅地特例の概要

     相続開始直前において、被相続人の居住用の宅地等が、次の(1)または(2)の要件を満たす場合、「特定居住用宅地等」に係る小規模宅地特例の適用があり、相続税の課税価格の計算上、その宅地等のうち240㎡(平成27 年以降の相続または遺贈により取得した宅地等は330㎡)までの評価額の80%相当額が減額されます。

     (1)被相続人の配偶者が取得した宅地等

     (2)その宅地等を取得した被相続人の親族が、原則として相続開始直前にその宅地等の上に存する被相続人の居住用家屋に同居していた者であって、相続税の申告期限(相続開始後10 か月経過日)まで引き続きその宅地等を有し、かつ、その家屋に居住していること。

    2.平成25年度改正前の二世帯住宅の敷地に係る取扱い

     前述1.(2)に規定する「被相続人の居住用家屋に同居していた者」という要件(以下「同居要件」といいます。)は、相続開始直前において被相続人の居住用家屋で被相続人と共に起居していた人をいいます。居住用家屋が複数の独立部分を有し、かつ、その各独立部分が住居その他の用途に供することができる構造の場合、「被相続人の居住用家屋」とは、その居住用家屋のうち、被相続人が居住していた独立部分をいいます。

     例えば1階(父母が居住)と2階(長男夫婦が居住)が住宅内部で行き来ができ、構造上は各独立部分に区分されていない二世帯住宅の場合、父母と長男夫婦は1階と2階を住居として一体で利用していることから、長男は父の居住用家屋で共に起居していた者であると認められます。この場合、被相続人(父)と同居していた親族である長男の取得した二世帯住宅の敷地である宅地は、特例居住用宅地等に該当し、小規模宅地特例の適用を受けられます。

     一方、1階(父母が居住)と2階(長男夫婦が居住)が住宅内部で行き来ができない二世帯住宅の場合、2階に居住する長男は、その住宅のうち被相続人(父)が居住の用に供していた独立部分(1階)では共に起居していません。このため長男は、被相続人(父)と同居していた親族には該当せず、長男の取得した二世帯住宅の敷地については、小規模宅地特例の適用は受けられません。

    3.平成25年度改正後の取扱い

    (1)改正の趣旨

     上記2.のように外見上は同じ二世帯住宅であるのに、内部の構造上の違いにより課税関係が異なることは不合理です。このため平成25 年度税制改正により、二世帯住宅であれば、内部で行き来ができるか否かにかかわらず、全体として二世帯が同居しているものとして、その敷地に係る小規模宅地特例を適用することが可能となりました。

    (2)改正の内容

     特定居住用宅地等の同居要件については、「被相続人の親族が相続開始の直前において、その宅地等の上に存するその被相続人の居住の用に供されていた一棟の建物のうち、被相続人、その被相続人の配偶者またはその親族の居住の用に供されていた『一定の部分』に居住していた者であって、相続開始時から申告期限まで引き続きその宅地等を所有し、かつ、その建物に居住していること。」とされました。この場合、『一定の部分』については、次の部分に対応する宅地等がこの特例の対象となります。

     ①被相続人の居住の用に供されていた一棟の建物が、『建物の区分所有等に関する法律』第1 条の規定に該当する建物である場合には、当該被相続人の居住の用に供されていた部分が該当します。

     この場合の「『建物の区分所有等に関する法律』第1条の規定に該当する建物」とは、建物の独立した部分ごとに所有権の目的とすることができる建物を指します。ただし、構造上、区分所有し得る建物が当然に区分所有建物に該当するわけではなく、区分所有の意思を表示する必要があると解されていることから、通常は区分所有建物である旨の登記がされている建物となります。

     ②①以外の場合には、被相続人または当該被相続人の親族の居住の用に供されていた部分が該当します。

    (3)適用時期

     上記(2)の改正は、平成26年1月1日以降の相続または遺贈に係る相続税について適用されます。

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