法律相談

月刊不動産2006年11月号掲載

宅建業法改正の動向

弁護士 渡辺 晋(山下・渡辺法律事務所)


Q

平成18年6月に宅地建物取引業法が改正されたことをニュースで知りました。どのような改正があったのでしょうか。

A※記事の内容は、掲載当時の法令・情報に基づいているため、最新法令・情報のご確認をお願いいたします。

  • 1.2つの潮流

     現在業界は2つの潮流の中にあります。

     潮流のひとつは、金融と不動産の融合です。不動産が証券化された上、売買されあるいは賃貸されることが、一般化しました。金融に関しては投資家保護のための制度改革が進められており、金融と融合しつつある不動産取引も投資家保護の必要に迫られています。

     もうひとつの潮流は、建築に対する信頼が揺るがされる事態に直面し、建築や宅地建物取引に対する信頼を回復しようという流れです。平成17年11月に発覚した耐震強度偽装問題の中で、業者が購入者に対する重要な事項の説明を怠ったという事件が起こりました。特定の業者だけではなく、業界の社会的責任が問われています。

     平成18年6月、宅建業法について、相次いで2つの改正が行われました。第1の改正は証券取引法改正に伴う改正であり、金融と不動産の融合に関連します。第2の改正は、建築基準法改正に伴う改正であり、業界への信頼回復を目的とします。

    2.平成18年6月の第1の改正

     近時、宅地建物の権利に関する取引が、信託受益権取引の形をとったり、あるいは組合持分取引の形をとったりすることが多くなりました。宅建業法は、「宅地・建物の売買・交換、又は、宅地・建物の売買・交換・貸借の代理・媒介をする行為」(宅建業法2条)を規制する法律であるところから、従来、信託受益権や組合持分の取引は規制対象外であり、重要事項説明の必要もないと考えられてきました。

     しかし信託受益権や組合持分の購入に際しても、購入検討者に情報を提供し、投資家を保護する必要があります。そのため証券取引法の改正(金融商品取引法の成立)に伴い、宅建業法でも、信託受益権や組合持分の購入検討者に対する重要事項の説明義務が定められました(改正後の35条3項、同50条の2の 4)。

    3.平成18年6月の第2の改正

     第2の改正は、業界の信頼を回復するため、(1)説明すべき重要事項を追加し、(2)47条1号の法文を見直し、(3)47条違反の罰則を強化するものです。

     (1)まず説明すべき重要事項に保証保険加入の有無等の説明が加わりました(改正後の35条1項13号)。現在検討されている瑕疵担保責任に関する保証保険の制度に対応する改正です。まだ保証保険の制度はできていませんが、制度ができた後は制度の説明をしなければならなくなります。

     (2)次に事実不告知や不実告知を禁じる47条が改正になりました。改正によって、勧誘のときだけではなく、申込みの撤回・解除の局面や、取引により生じた債権行使の局面でも事実不告知や不実告知が禁じられたことが条文上明らかになりました。また35条や37条に定められた事項についてだけではなく、「宅地若しくは建物の所在、規模、形質、現在若しくは将来の利用の制限、環境、交通等の利便、代金、借賃等の対価の額若しくは支払方法その他の取引条件又は当該宅地建物取引業者若しくは取引の関係者の資力若しくは信用に関する事項であつて、宅地建物取引業者の相手方等の判断に重要な影響を及ぼすこととなるもの」についても事実不告知・不実告知の禁止が明文化されました。環境に関する事項や取引関係者の資力・信用に関する事項の事実不告知や不実告知の禁止が明文化された点には特に注目されます。

     (3)さらに47条違反行為の罰則が強化されました。現行の罰則が懲役1 年・罰金50万円となっているところ、改正後は、懲役2 年・罰金300万円、法人は罰金1億円になります(改正後の84条)。

    4.施行時期

     第1の改正は、改正証券取引法(金融商品取引法)の施行の日から施行されます。改正証券取引法は、公布日(平成18年6月14日)から1 年6 か月以内に施行されることになっていますので、改正宅建業法も、平成19年
    12月14日までに施行になります。

     第2の改正は、公布日(平成18年6月21日)から6 か月以内に施行されることになっていますので、平成18年12月21日までに施行になります。

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