法律相談
月刊不動産2002年10月号掲載
共有地の売買の話があります。注意すべき点はどういうことでしょうか。
弁護士 草薙 一郎()
Q
共有地の売買の話があります。注意すべき点はどういうことでしょうか。
A※記事の内容は、掲載当時の法令・情報に基づいているため、最新法令・情報のご確認をお願いいたします。
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【A】
共有物を処分するためには、共有者全員の同意が必要となりますので、売主は共有者全員となります。【Q】
今回、売買の対象となる予定の共有地ですが、共有者は4人で相続した土地です。ところが、その共有地の境界が確定できていないようです。
この場合、隣地との境界を確定するにはどうするのでしょうか。【A】
境界が確定していない隣地の所有者に対して、話し合い解決ができないときは、境界確定の訴えを提起することになります。【Q】
共有者全員で訴えることになるのでしょうか。【A】
このことについて最高裁判所は平成11年11月9日に類似の事例で判決を出しています。
最高裁判所によると以下のとおりです。
「境界の確定を求める訴えは、隣接する土地の一方又は双方が数名の共有に属する場合には、共有者全員が共同してのみ訴え、又は訴えられることを要する固有必要的共同訴訟と解される」
として、全員で訴えることが必要としています。
しかし、共有者の中に提訴に同調しない人がいたときにどうするかについては、以下のように述べて、その解決を図っています。
「しかし、共有者のうちに右の訴えを提起することに同調しない者がいるときには、その余の共有者は、隣接する土地の所有者と共に右の訴えを提起することに同調しない者を被告にして訴えを提起することができるものと解するのが相当である。」
としています。
つまり、共有者全員で隣接所有者を訴えることが原則でも、訴えに同調しない共有者がいるときは、隣接所有者と共に、同調しない共有者を被告として、境界確定の訴えを提起すればよいことになります。【Q】
常に共有者全員で訴えなくてもよいということになると、他の共有者も大変助かることになりますね。【A】
そのとおりです。
しかし、共有者が他の共有者を訴えるわけですので、境界の確定後の共有物の処分については、全員の同意による処分は、かえって困難になるかも知れません。
したがって、このような共有地の取引は時間がかかったり、場合によっては取引の成立ができなかったりすることを予想すべきことになります。
ところで、少し難しいかもしれませんが、共有者の中に提訴に同調しない者がいるケースで、判決が下され、隣接所有者は判決を不服として控訴しても、訴えられた共有者が控訴しないとき、その裁判がどうなるかについて、前述の最高裁判所の判決は以下のように述べています。
「共有者が原告と被告とに分かれることになった場合には、この共有者間には公簿上特定の地番により表示されている共有地の範囲に関する対立があるとうべきであるとともに、隣地の所有者は、相隣接する土地の境界をめぐって、右共有者全員と対立関係にあるから、隣地の所有者が共有者のうちの原告となっている者のみを相手方として上訴した場合には、(中略)、この上訴の提起は、共有者のうちの被告となっている者に対しても効力を生じ、右の者は被上訴人としての地位に立つ」
としています。
つまり、隣地所有地のみが控訴したときには、第1審被告の共有者は被控訴人として扱われるとしたわけです。
これにより、統一的な判断が下せるようになったわけです。