法律相談
月刊不動産2011年7月号掲載
公図
弁護士 渡辺 晋(山下・渡辺法律事務所)
Q
土地を取引するに際し、公図を取り寄せる必要があるのは、なぜでしょうか。
A※記事の内容は、掲載当時の法令・情報に基づいているため、最新法令・情報のご確認をお願いいたします。
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1.回答
公図を用いて、土地についての位置、形状、面積、隣地との関係等を確かめる必要があるからです。
2.14条地図と公図(地図に準ずる図面)
土地の取引を行う場合、取引対象たる土地は、登記記録の表題部の記載によって特定することができます。しかし登記記録だけでは、土地が実際に現地で、どのような位置にどのような形状や広がりをもって存在しているのかは分かりません。
この点、法律上登記所には地図(14条地図)が備え付けられることになっており(不動産登記法14条1項)、14条地図が備え付けられていれば、これを利用して、土地の現地における位置、形状、面積、隣地との関係等を確認することができます。
しかし14条地図には厳密な正確性が求められるため、現実的には14条地図は十分な整備がなされていません(都市部の人口密集地域では20%程度にすぎない)。
そこで14条地図の不十分さを補うため、登記所には、14条地図が備え付けられるまでの間、これに代えて地図に準ずる図面を備え付けることができるとされています(同条4項)。
地図に準ずる図面として多くの登記所に備え付けられているのが、旧土地台帳法よって登記所に保管されていた土地台帳附属地図です。土地台帳はかつて租税徴収の目的をもって制度化されていたものですが、昭和35年に廃止されました。土地台帳附属地図は、それ以前から不動産取引に利用されており、土地台帳制度が廃止された後も、この土地台帳附属地図が現在まで利用されているわけです。
公図という用語は、多くの場合に地図に代えて登記所に備えられている地図に準ずる図面という意味に用いられており、主に土地台帳附属地図を指しています。
3.公図(地図に準ずる図面)の正確性と機能
公図(地図に準ずる図面)の多くは、明治時代初めの地租改正図に起源をもつ図面であり、大変に古い時代に作成されたものです。そのため正確性に問題があり、十分な精度を有していません。
国土交通省は平成20年2月に公図と現況のずれの程度についての調査結果を公表していますが、その調査結果によれば、現況と公図のずれの幅について、ずれが30cm以上1m未満の地域が約3割、ずれが1m以上10m未満の地域が約半数でした。
もっとも正確性には欠けているとはいえ、公図(地図に準ずる図面)は筆ごとに線引きされた図面であって、土地の形状や位置関係を知る上では有用です。実際にこれを手掛かりとして、また現地検分と相俟ま
って、土地の状況を把握するために必要な資料として一般に利用されています。裁判所でも「公図は実測図と異なり、線の長さ、面積について正確を期待できないことはいうまでもないが、各筆の土地のおおよその位置関係、境界線のおおよその形状については、その特徴をかなり忠実に表現しているのが通常である」(東京高裁昭和53年12月26日)、
「公図は土地台張の附属地図で、区割と地番を明らかにするために作成されたものであるから、面積の測定については必ずしも正確に現地の面積を反映しているとはいえないにしても、境界が直線であるか否か、あるいはいかなる線でどの方向に画されるかというような地形的なものは比較的正確なものということができる」(東京地判昭和49年6月24日)
などと判断されています。公図が土地の位置、形状、面積、隣地との関係等を示すものとしては頼りになるというのが裁判所の判断でもあるわけです。なお、国の書類についてはコンピューター化が進んでおり、登記のコンピューター化とともに、地図や公図を電磁的記録に記録する地図情報システムが導入されました(不動産登記法14条6項)。公図も、もともと古い時代に作成されたものではありますが、現在では、電子化されています。
4.まとめ
何人も、登記所にて、手数料を納付して、公図について、交付の請求をすることができます(同法120条1項・2項) 。また、財団法人民事法務協会の登記情報提供サービスによって、インターネットを利用して情報提供を受けることもできます。
宅建業者にとっては、不動産取引において、公図が必ずしも精度の高い図面ではないことを理解した上で、公図を取り寄せた上で、土地の位置、形状、面積、隣地との関係等を確かめることは、基本的であって不可欠の業務です。