税務相談
月刊不動産2005年11月号掲載
借地権設定後の土地使用期間中の取扱い
代表社員 税理士 玉越 賢治(税理士法人 タクトコンサルティング)
Q
借地期間中の土地の利用について、その税務上の取扱いを教えてください。
A※記事の内容は、掲載当時の法令・情報に基づいているため、最新法令・情報のご確認をお願いいたします。
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土地の賃貸借について、法人税は、原則として、権利金その他の一時金の収受があることを前提として、課税関係を定めています。しかし、土地の使用方法によっては、それと異なる取引が行われていることもあり、その実態に合わせた取扱いを定めています。
土地の賃貸借期間中の地代の取扱いについては、税務上は次のように分類しています。1. 通常権利金を収受しない土地使用の場合
( 物品置場、仮店舗、プレハブ車庫等の敷地 )土地の使用目的及び使用状況、使用期間に照らし、通常の地代に満たない場合には、
その満たない部分の金額を借地人等に対して贈与したものとします。2. 土地の無償返還届書が提出されている場合
相当の地代額から実際の地代額を差し引いた差額を借地人等に贈与したものとします。
3. 相当の地代の収受がなされている場合
(相当な地代を下回る地代の収受しかなされておらず、借地権設定時に借地権の認定課税
を受けている場合を含む)地代を改定するかしないかによって、次のいずれかの方法を選択して届出書を提出することになり、それに従った税務処理が行われます。届出書を提出しなかった場合、及び相当の地代改定幅が土地の価額の増減にスライドせず中途半端な増減になる場合は次の(2)を選択したものとします。
(1) 土地の価額の増減に応じて順次その収受する地代額を相当の地代額に改定する方法
(おおむね3年以下の期間ごとに見直しを行う場合を含む)
この方法を選択した場合、借地権の価額はゼロ(借地権設定時に権利金等を収受したときは、その権利金相当額)となります。従って、貸主(土地所有者)の貸地価額は更地価額(借地権設定時に権利金等を収受したときは、その権利金相当額を控除した価額)となります。(2) (1)以外の方法(相当の地代額を改定しない方法)
土地価額の上昇によって自然発生借地権が借地人に帰属していきます。逆に土地価額が下落した場合は、借地人に帰属していた自然発生借地権が減少していきます。この自然発生借地権は、借地権の含み益ですから借地人に対する借地権の認定課税は行われません。
借地期間中の地代が相当の地代に満たないこととなった場合に借地人が享受する経済低利益についての取扱いは次のとおりです。A 個人貸主(地主)の取扱い
特段の課税は起こりません。B 個人借地人の取扱い
雑所得又は給与所得として課税されます。C 法人貸主(地主)の取扱い
相当の地代との差額について地代の認定課税が行われ、寄付金又は給与を支払ったものとして取り扱われます。
この場合の土地の評価額は、次のとおりとなります。ア. 無償返還届出書の提出がある場合
貸地価額はゼロ
イ. 無償返還届出書の提出がない場合D 法人借地人の取扱い
地代免除益と支払地代が相殺されるため、事実上課税は生じません。
この場合の土地の評価額は、次のとおりとなります。ア. 無償返還届出書の提出がある場合
借地権価額はゼロ
イ. 無償返還届出書の提出がない場合
4. 相当の地代により借地権等の設定があった後、地代の引下げがあった場合権利金の収受や地価の下落等相当の理由がある場合を除き、引下げ時点で借地人に対する
借地権の贈与課税が行われます。