税務相談

月刊不動産2003年9月号掲載

住宅ローン控除の再適用について

0 井出 真(井出真税理士事務所)


Q

住宅ローン控除の再適用について

A※記事の内容は、掲載当時の法令・情報に基づいているため、最新法令・情報のご確認をお願いいたします。

  •  平成15年度の税制改正で、住宅ローン控除の再適用が認められました。これにより、住宅ローン控除の適用を受けていた居住者が、勤務先からの転勤の命令その他これに準ずるやむを得ない事由により居住の用に供しなくなった後、その事由が解消し再入居した場合には、一定の要件の下で、再入居した年以後の各年(再入居年に賃貸の用に供していた場合には、その再入居年の翌年以後の各年)について住宅ローン控除の再適用を受けることができることとなりました。平成15年12月31日までに居住開始した場合10年間の住宅ローン控除が受けられますが、この再適用は、それ以前の住宅ローン控除でも可能です。ただし、控除期間が延びるわけではないので注意してください。

    (図)
     

     なお、この特例は平成15年4月1日以後に居住の用に供しなくなった場合に適用されます。この住宅ローン控除の再適用についての基本的な項目につき、Q&A方式で説明します。

    【Q1】
     将来、住宅ローン控除の再適用を受けるために、転勤命令により転居する際に必要な手続きは何ですか。

    【A1】
     「転任の命令等により居住しないこととなる旨の届出書」を、家屋の所在地を管轄する税務署に提出します。税務署に置いてある様式により、転居する日までに提出してください。この届出書の記載事項は次のとおりです。

     ①届出書を提出する者の氏名及び住所

     ②給与等の支払者の名称及び所在地

     ③居住の用に供しないこととなった事情の詳細

     ④居住の用に供しなくなる日

     ⑤居住の用に供しなくなる日以後に居住する場所並びに給与等の支払者の名称及び所在地

     ⑥当該家屋を最初に居住の用に供した年月日

     ⑦その他参考事項(居住の用に供しない期間の家屋の用途(予定)、再び居住の用に供する日(予定日)など)

     また、従来、年末調整で住宅ローンの控除を受けるため、「年末調整のための住宅借入金等特別控除証明書」及び「給与所得者の住宅借入金等特別控除申告書」の交付を受けている場合には、未使用分の証明書及び申告書を添付する必要があります。

    【Q2】
     税務署に届出書を提出しないまま転居した場合、将来、住宅ローン控除の再適用は受けられませんか。

    【A2】
     なるべく早い時期に、税務署に届出書を提出し、その提出がなかったことにつきやむを得ない事情があると認められるときは、住宅ローン控除の再適用が認められます。ただし、税務署とのトラブルを避けるためにも、届出書は転居する日までに提出してください。

    【Q3】
     再居住し、住宅ローン控除の再適用を受ける際に必要な手続きは何ですか。

    【A3】
     再適用を受ける最初の年分は、確定申告が必要となります。確定申告書は、原則として、翌年の3月15日までに税務署に提出します。その際に、次の書類を添付する必要があります。

     ①「住宅借入金(取得)等特別控除額の計算明細書(再び居住の用に供した人用)」

     ②住民票の写し

     ③金融機関等から交付を受けた「住宅取得資金に係る借入金の年末残高等証明書」

     なお、再居住した年に家屋を賃貸の用に供していた場合には、住宅ローン控除の再適用は、再居住した翌年から認められるので、再居住した翌年分の確定申告での記載が必要となります。

    【Q4】
     再居住年に賃貸の用に供していた場合、住宅ローン控除の再適用は、再居住年の翌年以後になります。次の場合、賃貸の用に供していたことになりますか。

     ①兄弟に無償で貸していたとき

     ②元からある駐車スペースのみを、あるいは、庭の一部を駐車スペースとして貸していたとき

     ③居住用家屋の一部を倉庫として貸していたとき

     ④当初からある貸店舗部分を引き続き貸していたとき

    【A4】
     ①はなりません。これは、賃貸借ではなく使用貸借です。②もなりません。これは、土地部分の賃貸であり、家屋の賃貸ではないからです。③は一部ですが家屋の賃貸であり、賃貸の用に供していたことになります。④はなりません。これは貸店舗併用住宅であり、そもそも貸店舗部分は住宅ローン控除の適用対象ではありません。したがって、貸店舗部分を引き続き貸していたとしても関係ありません。もちろん、転居後に居住部分を貸していたときは、賃貸の用に供していたことになります。

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