賃貸管理ビジネス
月刊不動産2023年6月号掲載
不得意業務は専門職に任せて、コア業務に専念を
今井 基次(みらいずコンサルティング株式会社 代表取締役)
Q
オーナー向けセミナーの集客のために広告を作る際、事務職のスタッフが、エクセルやワードのテンプレートなどを利用して作成しています。ところが、時間がかかるうえ、デザインもあまり良い出来とはいえません。専門の業者に頼めば高額で、とはいえ社内で特別にデザインなどの知識を持っている人もいないため、どうしたらいいのかわかりません。何かよい方法があれば教えてください。
A※記事の内容は、掲載当時の法令・情報に基づいているため、最新法令・情報のご確認をお願いいたします。
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回答
デザインや広告などの制作物は、ついつい社内の業務として行いがちですが、専門職に任せたほうが確実に成果が上がります。制作にかける「時間」、それに伴う「人件費」、店頭に置いたり配布したときの「見栄え」、それから集客の「成果」を考えたとき、アウトソーシング(外注)をしたほうがコストパフォーマンスは圧倒的に高まります。「自社で作ることができる」ことと「成果を出す」ことはまったく意味が異なります。本来やるべき「コア業務」に集中することをおすすめします。
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情報発信に重要な要素とは
コンテンツマーケティング(価値のある情報発信)を活用し、企業が顧客に有用な情報発信をすることが重要な時代になりました。どんなコンテンツを発信するかも重要ですが、どのように魅せるのかというヴィジュアル面も大変重要な要素になります。「できる、知っている」というだけで、何の知識もないままに、デザイン制作や文章作成のような「クリエイティブ(創造性の高い仕事)」を、専門性がない従業員に頼んでしまいがちですが、本当にそれはよい選択なのでしょうか。
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誰に何を伝え、何をしたいのか「目的意識」を明確にする
ホームページ、DMチラシなど、不動産管理業にとってマーケティング活動は、コア業務と切っても切り離せないぐらい重要です。しかし、デザインや文章など一つひとつに細かなノウハウやルールがあり、それを理解せずに業務的に作ってしまうと、大きな機会損失を起こしてしまうこともあるのです。デザインは解らなくても、とりあえずチラシが出来上がればいい……という発想だと、目的が「チラシを完成させること」に陥りやすいのです。
目的を「集客数を増やす」ことにすれば、顧客が集まるよう、より良いデザインや内容にしようと思うはずです。まったくノウハウがないと、ゼロから学習することから始める必要があります。さらにセンスも重要で、これは学ぶことがさらに難しいのです。よって、未経験者がこのようなクリエイティブ業務を始めたとしても、成果が出るまでに相当な時間がかかってしまうでしょう。 -
広告の成果の方程式
たとえばセミナーの集客チラシの制作で例えると、セミナーの内容はもちろん重要ですが、内容をどのように広告としてヴィジュアル化するのかが重要です。「タイトル」「キャッチコピー」「フォント(書体)」「文章のボリューム」「レイアウト(配置)」「写真やイラスト」と、これらが顧客にとって必要なもの(価値あるもの)という見せ方をしなければ、成果にはつながりません。仮にイラストレーターを使うというだけでは、成果につなげることは難しいのです。私はセミナーの集客広告の成果は、下記のような方程式が成り立つと思っています。
集客成果=コンテンツ(内容)×デザイン力×ノウハウ(経験)
いくら内容がよくても、広告(デザイン)が悪ければ集客にはつながりません。さらにそれらが整っているとしても、どのような媒体を使って、どのタイミングで発信するのか(日時など)を知らなければ、広告の効果がまったく変わってしまうことになるのです。
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内製化or外注
成果が上がる広告を作るときに、結局のところ誰に任せるのかが課題となります。自社でデザイナーを雇うといっても、スキルやセンスはその人に頼らざるを得なくなりますし、退社されてしまえば代替が利きません。また雇用する人件費をかけられない場合も多いでしょう。一方、広告代理店に頼めばまるごと仕事を任せられるのですが、どうしてもコストがかかります。しかし集客の効果は圧倒的に高まるはずです。ポイントは中途半端にコストをケチると良い成果が生まれないということです。
このように、内製化と外注、それぞれにメリットとデメリットが生じます。昨今では安い費用で仕事を依頼できる「クラウドソーシング」などのプラットフォームを活用するのもひとつの方法です。上記のような専門的な仕事をインターネット上で依頼することができるため、慣れてしまえば、クリエイティブな業務を外注しながらも、安い費用で済ませることが可能となります(図表1)。
不動産管理業務は多種多様な仕事の集合体であるため、内製化をすればその分人件費がかさみます。自分たちがやるべきコア業務を念頭に置きつつ、「餅は餅屋」で、クリエイティブのような業務は専門職に任せることをおすすめします。