法律相談
月刊不動産2007年1月号掲載
不動産購入の主体
弁護士 渡辺 晋(山下・渡辺法律事務所)
Q
合同会社が不動産を購入することができるでしょうか。また従来の有限会社が不動産を購入することができるでしょうか。
A※記事の内容は、掲載当時の法令・情報に基づいているため、最新法令・情報のご確認をお願いいたします。
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合同会社も従来の有限会社も、いずれも不動産を購入することができます。
法律上権利義務の主体たりうる資格を権利能力といいます。権利能力を有するのは自然人と法人です。自然人以外であって、法によって権利能力が認められる団体が法人です。これまで日本の法制度の中で、法人は限定的にしか認められませんでした。しかし人々の価値観が変化し、社会における法人の役割が高まってきたことから、法人の多様性を受け入れる社会的基盤が整い、近年、法人に関する重要な法改正が続いています。
まず特定非営利活動促進法(NPO法)が成立して平成10年12月に施行され、NPO(特定非営利活動法人)が法人として認められました。続いて中間法人法ができて平成14年4月に施行され、中間法人が認められました。NPOや中間法人には権利能力が認められますので不動産の権利主体となり得ます。
引き続き平成17年6月には会社法が成立し、平成18年5月に施行されました。会社法制定により会社の種類が変わり、有限会社が廃止され、新たな会社形態として合同会社が創設されています(会社法575条1項)。
合同会社は米国のLLCをモデルにして導入された会社形態です。社員(会社の構成員)の責任が有限であるという点で株式会社と同様でありながら、機関や社員の権利内容の決め方に制約がない会社です。会社法において持分会社の章が設けられ、従来からの合名会社と合資会社に合同会社をあわせて、持分会社という類型を形作るものとされました。すべての社員の責任を限定しながら、機関設計の基本的な枠組や出資者間の関係について規制されず、自由に組み立てることができるというメリットがあり、その利用しやすさから、会社法施行以来すでに多くの合同会社が設立され、活動を開始しています。合同会社も法人である以上、当然に不動産を所有することができます。
有限会社については、会社法制定により廃止されるとはいえ、従前多くの会社がこの形態をとっていたので、従来の有限会社が活動を継続するために2つの選択肢を用意し、その活動の継続に配慮をしています。従来の有限会社が活動を続けるための第1の選択肢は、有限会社を株式会社に組織変更する方法、第2の選択肢は、従前のとおり有限会社として活動する方法です。
まず第1の方法は、株式会社に組織変更する方法です(会社法の施行に伴う関係法律の整備等に関する法律〈整備法〉45条、46条)。有限会社組織を株式会社組織に変えて商号も変更し、その旨の登記をすれば、従前の有限会社も株式会社として活動を続けることができます。
第2の方法は有限会社のままで営業を継続する方法です。有限会社のままで営業を続ける場合は、特例有限会社という名称の会社となり、定款変更や株式会社としての登記をすることなく会社法による株式会社として存続します(整備法2条1項)。現実的に有限会社として営業を行っていた会社の多くは、組織変更を望まず、特段の定款変更や登記申請等の手続をとらず、従来どおりの営業を継続しています。従来の有限会社も、特例有限会社として活動が可能ですから、当然に不動産を取得することもできます。なお特例有限会社の場合には、商号に有限会社の文字を使用する義務があることには留意が必要です(整備法3条1項)。
ところで法人の在り方に関しては、現在進行中の公益法人改革にも注目しておく必要があります。すなわち平成18年5月に公益法人改革の法整備がなされ、民法総則の法人に関する多くの規定が削除されるとともに、中間法人法が廃止されて、一般社団法人・一般財団法人の制度が創設されました。従来の公益法人については、公益性が認定される場合には、公益社団法人・公益財団法人として存続することになっています。
法人の不動産取得や不動産を賃貸借に業者が関与する場合には、売買や賃貸借の主体を確認することは、業務の出発点です。社会の多様化に伴い、新しく制度化された法人は、これからどんどんと利用されていくものと思われます。法人制度については、業務における重要性を再確認し、その動向を正確に把握しておかなければなりません。